ホメオスタシスとは「生物が環境の変化を受けても、身体を一定の状態に保ち続けようとすること」という意味です。
看護の勉強をされていたら、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
例としてダイエットが挙げられることが多いですが、生理学用語なのか心理学用語なのか気になりますよね。
この記事では、ホメオスタシスの意味を簡単にわかりやすく解説します。
☆「ホメオスタシス」をざっくり言うと……
読み方 | ホメオスタシス |
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意味 | 生物が環境の変化を受けても、身体を一定の状態に保ち続けようとすること |
提唱者 | アメリカの生理学者・ウォルター・B・キャノン |
対義語 | トランジスタシス ブレイクスルー パラダイムシフト など |
このページの目次
「ホメオスタシス」の意味
生物が環境の変化を受けても、身体を一定の状態に保ち続けようとすること
例:体温が上がったら汗をかいて体温が下がる
ホメオスタシスは、生物が外部的または内部的な環境の変化に置かれても、体内環境を一定に保つようにする仕組みのことです。
これが正常に機能していることで、生物は生命を維持することができます。
英語では下記のギリシャ語を組み合わせて、 “homeostasis” と表記されます。
- homeo:似た、類似の
- stasis:状態
日本語では下記のように訳されます。
- 恒常性(こうじょうせい)
- 生体の恒常性
- 生態恒常性
「ホメオスタシス」の仕組み
ホメオスタシスは、下記の3つの機能が正常に働くことで起こります。
- 自律神経
血圧や呼吸数などを調整する神経系 - 内分泌
ホルモンがつくられる腺 - 免疫
体を異物から防御する状態
環境の変化に応じて、上記の3つの機能が「フィードバック」を行います。
- プラスのフィードバック
(正のフィードバック/ポジティブフィードバック)
機能の働きを強める
例:体温が上昇すると汗をかく→体温を一定に保つ - マイナスのフィードバック
(負のフィードバック/ネガティブフィードバック)
機能の働きを抑える
例:血中の甲状腺ホルモン濃度が高くなるとTSH(※)の分泌が抑えられる→濃度を一定に保つ
上記の3つの機能が正常に働き、体内環境が一定に保たれる仕組みのことを、ホメオスタシスと呼びます。
TSHとは、脳から分泌される甲状腺刺激ホルモンです。
これが分泌されることで、全身の代謝に関係するホルモンが分泌されます。
「ホメオスタシス」の具体例
ホメオスタシスの具体例には以下のようなものがあります。
- 体温の恒常性
- 血糖の恒常性
- 免疫の恒常性
- 血中カルシウム平衡
それぞれ見ていきましょう。
具体例①体温の恒常性
ホメオスタシスの具体例に、体温の恒常性があります。
哺乳類や鳥類は、体温が上昇すると汗をかき、低下すると震えることで元の体温に戻そうとします。
具体例②血糖の恒常性
ホメオスタシスの具体例に、血糖の恒常性があります。
血糖値が上昇すると、インスリンを分泌することで元の血糖値に戻そうとします。
具体例③免疫の恒常性
ホメオスタシスの具体例に、免疫の恒常性があります。
外部から侵入してきた異物に対して、リンパ球などの免疫細胞が働くことで異物を排除しようとします。
ただし、ハウスダストや花粉など、通常は無害な物質に対しても免疫細胞が働くことで、アレルギーを引き起こすこともあります。
具体例④血中カルシウム平衡
ホメオスタシスの具体例に、血中カルシウム平衡があります。
血中のカルシウムが高いと排出が促進され、低いと吸収が促進されます。
「ホメオスタシス」の提唱者
ホメオスタシスの提唱者は、アメリカの生理学者・ウォルター・B・キャノンです。
1859年頃、フランスの生理学者・クロード・ベルナールは「内部環境の固定性」を提唱しました。
そして、1920年代後半から30年代前半頃にかけ、この説をウォルター・B・キャノンが発展させ、ホメオスタシスと名付けました。
「ホメオスタシス」が機能しない時の症状
ホメオスタシスが正常に機能しないと、下記のような症状が起こりやすくなります。
- すぐ疲れてしまう
- 首や肩が凝りやすくなる
- 体がだるくなる
- 睡眠の質が悪くなる
- 食欲がなくなる
- 便の調子が悪くなる
結果として、様々な病気にかかりやすくなります。
「ホメオスタシス」を機能させるためには
ホメオスタシスを正常に機能させるためには、健康的な生活を送ることが重要です。
- ストレスを溜めない
- 質の良い睡眠をとる
- お酒やタバコは程々にする
「ホメオスタシス」の心理学的な意味
ホメオスタシスは本来、生物について使われる用語です。
しかし、最近では心理学的な意味でも使われています。
(心理学で)現在の生活様式を保ち続けようとすること
心理学的な意味のホメオスタシスは、「現在の生活様式や自分自身などを変えようとした時に、なるべく変えないようにする心理」を表します。
本来の意味と区別するために、「心理学的ホメオスタシス」「心理学的恒常性」と呼ばれることもあります。
- メリット
生活が安定する - デメリット
新しく始めたことが続かない
ホメオスタシスが働くと、現状を維持しようとするため、「貯金を全部使って旅に出よう」という行動はしにくくなります。
一方で、現状を維持しようとするため、新しく「毎朝早起きしてランニングする」という行動を始めても、継続が難しくなります。
コンフォートゾーンとは
心理学的な意味のホメオスタシスが働くと、コンフォートゾーンが生まれます。
コンフォートゾーンとは、「快適な空間」のことで、ストレスや不安がなく、安定した精神状態でいられる場所を指します。
具体的な例は以下の通りです。
つまり、Aさんにとっては「たくさん食べること」が当たり前であり、コンフォートゾーンです。
そのため、もしAさんがダイエットのために「食事制限すること」を始めても、Aさんにとってコンフォートゾーン外の行動であるため、精神が安定しなくなります。
すると、現状を維持するためにホメオスタシスが働き、「食事制限すること」の継続が難しくなります。
つまり、「食事制限すること」をコンフォートゾーンにできれば、当たり前のように「食事制限すること」を継続できます。
今とは違うコンフォートゾーンに変更するためには、ホメオスタシスを機能させないことが必要です。
ホメオスタシスを機能させないための方法には以下のようなものがあります。
- 目標となる人と積極的に関わる
- 目標を達成した自分を明確にイメージする
- 自分自身にポジティブな言葉を言い聞かせる
上記の方法に共通することは、目標を達成している自分が当たり前になるように、自分自身に思い込ませていることです。
「ホメオスタシス」の対義語
ホメオスタシスの対義語には以下のようなものがあります。
「ホメオスタシス」のまとめ
以上、この記事ではホメオスタシスについて解説しました。
読み方 | ホメオスタシス |
---|---|
意味 | 生物が環境の変化を受けても、身体を一定の状態に保ち続けようとすること |
提唱者 | アメリカの生理学者・ウォルター・B・キャノン |
対義語 | トランジスタシス ブレイクスルー パラダイムシフト など |
ホメオスタシスは元々は生理学者が提唱した説でしたが、今では心理学用語としても使われています。
新しいことを始めたい時には、ホメオスタシスに負けないように頑張りたいですね。