月下氷人とは「結婚の仲立ちをする人」「縁結びの神様」という意味です。
なぜ、「月の下の氷の人」が、結婚の仲立ちをする人という意味になるのか疑問に思いますよね。
実は、月下老人と氷上人の2語を組み合わせた語なのです。
この記事では、月下氷人の意味や使い方を詳しく解説します。
☆「月下氷人」をざっくり言うと……
読み方 | 月下氷人(げっかひょうじん) |
---|---|
意味 | ①結婚の仲立ちをする人 ②縁結びの神様 |
由来 | 月下老人:『続幽怪録』 氷上人:『晋書』「索紞伝」 |
類義語 | 月下老人 氷上人 橋渡し役 など |
対義語 | 縁切り 別れさせ屋 |
英語訳 | go between(~の間の仲立ちになる) go-between(仲立人) matchmaker(結婚の仲人) など |
「月下」がつく語 | 月下美人 月下氷姫 |
結婚にまつわる語 | 偕老同穴 比翼連理 比翼の烏 など |
このページの目次
「月下氷人」の意味
- 結婚の仲立ちをする人
- 縁結びの神様
月下氷人は、細かく分けると2つの意味があります。
それぞれの意味を見ていきましょう。
意味①結婚の仲立ちをする人
月下氷人は、「男女が結婚するために仲立ちをする人」という意味です。
具体的には、以下のような人のことです。
- 仲人(なこうど)
2人の出会いから結婚後まで、両家を取り持つ人 - 媒酌人(ばいしゃくにん)
結婚式当日のみ、2人のサポートをする人 - 立会人(たちあいにん)
挙式に立ち会う人 - 介添人(かいぞえにん)/ブライダルアテンダー
結婚式当日に、花嫁のサポートをする人
つまり、男女が結婚するにあたって、2人の仲を取り持つ人のことを表します。
意味②縁結びの神様
月下氷人は、元々は、「縁結びの神様」という意味です。
転じて、恋のキューピッドのように男女の仲を取り持つ人を表します。
月下氷人は、省略して氷人ともいいます。
「月下氷人」の使い方
月下氷人は、結婚に関する話題で使います。
ビジネスシーンや日常会話で使うことはほとんどありません。
月下氷人には2つの意味があります。
- 「結婚の仲立ちをする人」という意味
- 「縁結びの神様」という意味
それぞれの意味での使い方を、例文と一緒に見ていきましょう。
使い方①「結婚の仲立ちをする人」という意味で使う
「結婚の仲立ちをする人」という意味の例文は以下のようなものがあります。
- 私の両親の月下氷人は、共通の上司であると聞いている。
- 結婚しない若者が増える世の中で、月下氷人と呼ばれる存在は珍しい。
- この度結婚することになりましたので、ぜひ月下氷人をお願いしたくご連絡いたしました。
- 時雄は芳子の師として、この恋の証人として一面月下氷人の役目を余儀なくさせられたのであった。
[出典:田山花袋『蒲団』] - この説を肯定するために先づ知つて置かなければならないのは、井伏は太宰夫妻の月下氷人だといふ一事である。
[出典:佐藤春夫『井伏鱒二は悪人なるの説] - 「人生は面白いね。この俺が今日は二組の恋人の月下氷人を勤めた訳だからね」
[出典:江戸川乱歩『黒手組』] - 「――しかし、つまるところはですナ、ご両人でよろしくやってもらうよりないんだよ。わしはその、月下氷人でネ、これからさきは知らんですよ――」
[出典:徳永直『白い道』]
使い方②「縁結びの神様」という意味で使う
「縁結びの神様」という意味の例文は以下のようなものがあります。
- 妻を紹介してくれた友人は、まさに私たちの月下氷人だ。
- 誰かの月下氷人になりたいと思い、結婚相談所を開設した。
「月下氷人」の由来
月下氷人は、「結婚の仲立ちをする人」という意味の以下の2語を組み合わせた語です。
- 月下老人(げっかろうじん)
※省略して「月下」「月老」ともいう - 氷上人(ひょうじょうじん)
※省略して「氷人」ともいう
それぞれの由来を見ていきましょう。
「月下老人」の由来
月下老人の由来は、中国の伝奇小説集『続幽怪録(ぞくげんかいろく)』です。
以下のようなエピソードがあります。
ある夜、宋城(そうじょう)という街を歩いていると、月光の下で、老人がそばにおいた袋にもたれかかりながら、座って本を読んでいるのを見かけました。
この赤い縄で結ばれた男女は、たとえ遠く離れていても、境遇が違っても、永遠に連れ添うことになるのですよ。
韋固はこの時、なかなか婚姻の話がまとまっていなかったため、こう聞いてみました。
韋固は、老人にからかわれているのだと思い、老人の元を去りました。
それから、誰との婚姻もまとまらないまま、14年が経ちました。
韋固は、相州(そうしゅう)で役人になり、手柄を立てたため、相州の長官である王泰(おうそう)の娘を妻に迎えることになました。
妻となった女性は15歳から17歳頃の年齢で、若く美しく、韋固はとても幸せでした。
ある時、韋固が妻に生い立ちを聞くと、妻は「私は王泰の養女なのです。昔は宋城の北側に住んでいました。野菜を売りながら私を育ててくれた陳ばあやのことをよく思い出します。」と言ったのです。
老人の話が冗談ではなかったとわかってから、韋固は妻との縁をより一層大切にして、夫婦仲良く暮らしたといいます。
この話から、「結婚の仲立ちをする人」を月下老人というようになったのです。
老人が教えたのは、「隣町にいる盲目の女性が育てている赤ん坊」という説もあります。
このパターンの場合、韋固は自分が侮辱されたのだと怒り、赤ん坊を殺すように家来に命じます。
後に妻となった女性は、若く美しいのですが眉間に傷があり、傷のことを女性の父に聞くと、「幼い頃突然男に刺されてできた傷」だと言われます。
そして、「その時世話をしていた女性は盲目ではなかったか」と聞くと、その通りだったのです。
つまり、韋固が妻にした女性は、やはりあの時老人に教えられた赤ん坊だったのでした。
「氷上人」の由来
氷上人の由来は、中国の歴史書『晋書(しんじょ)』「索紞伝(さくたんでん)」です。
以下のようなエピソードがあります。
この夢を策耽(さくたん)という名前の有名な占い師に話したところ、次のように言われます。
つまり、あなたは氷が溶けた頃に、結婚の仲立ちをするでしょう。
その後、策耽の言葉通り、令狐策は長官の息子の仲人を依頼されました。
めでたく結婚式が行われた時には、春になって氷は溶けていました。
この話から、「結婚の仲立ちをする人」を氷上人というようになったのです。
「月下氷人」の類義語
月下氷人には以下のような類義語があります。
- 月下老人
結婚の仲立ちをする人
※省略して「月下」「月老」ともいう - 氷上人
結婚の仲立ちをする人
※省略して「氷人」ともいう - 橋渡し役
人間関係や、人と組織の関係を取り持つ人 - 介添え(かいぞえ)
①そばに付き添って世話をすること
②結婚式当日に、花嫁のサポートをする人 - 縁結び
①男女の縁を結ぶこと
②恋する相手の名前を書いた紙を寺社の木などに結び、恋が叶うことを願う願かけ
「月下氷人」の対義語
月下氷人には以下のような対義語があります。
- 縁切り(えんきり)
夫婦や親子の関係を切って他人になること - 別れさせ屋
恋人同士を別れさせるために工作する人
「月下氷人」の英語訳
月下氷人を英語に訳すと、次のような表現になります。
- go between
(~の間の仲立ちになる) - go-between
(仲立人) - matchmaker
(結婚の仲人) - cupid
(恋愛の神)
「月下」がつく語
月下氷人と同じく、月下がつく語には以下のようなものがあります。
- 月下美人(げっかびじん)
- 月下氷姫(げっかひょうき)
それぞれ見ていきましょう。
「月下美人」を詳しく
月下美人は、以下のようなサボテンの一種です。
名前 | 月下美人 |
---|---|
画像 | [出典:HORTI 〜ホルティ〜 by GreenSnap] |
分類 | サボテン科クジャクサボテン属 |
花言葉 | あでやかな美人 はかない美 秘めた情熱 強い意志 危険な快楽 |
開花時期 | 6月〜11月頃 |
誕生花 | 7月19日の誕生花 |
俗説 |
|
月下美人には以下のような種類があります。
- 姫月下美人(ヒメゲッカビジン)
小ぶりな花を多数つける。長持ちする傾向がある - 満月美人(マンゲツビジン)
月下美人と姫月下美人をかけ合わせた種類
「月下氷姫」を詳しく
月下氷姫は、ゲーム『アイドルマスターシンデレラガールズ』に登場するアイドルのユニット名です。
以下の2人の女の子が組んだユニット名です。
- 鷺沢文香(さぎさわ ふみか)
- 藤原肇(ふじわら はじめ)
公式では、ユニット名・月下氷姫の読み方と由来は明らかになっていません。
しかし、一部のファンの間では、「げっかひょうき」と読み、月下氷人が由来になっているのではないかと言われています。
関連:結婚にまつわる語
月下氷人と同じく、結婚にまつわる語には以下のようなものがあります。
- 偕老同穴(かいろうどうけつ)
①夫婦の仲が良いこと
②深海に生息する海綿動物 - 比翼連理(ひよくれんり)
夫婦の仲が良いこと - 比翼の烏(ひよくのとり)
①夫婦の仲が良いこと
②極楽鳥(ごくらくちょう)の別名 - 連理の枝(れんりのえだ)
夫婦の仲が良いこと
それぞれ詳しく見ていきましょう。
「偕老同穴」を詳しく
偕老同穴は、「夫婦の仲が良いこと」という意味です。
偕老同穴は以下のように成り立っています。
- 偕:一緒に
- 老:年を重ねる
- 同:おなじである
- 穴:墓の穴
つまり、夫婦が一緒に年を重ねて、同じ墓に入ることを表します。
また、偕老同穴は、海底約200mに生息する海綿動物の名前でもあります。
[出典:美ら海生き物図鑑]
「比翼連理」を詳しく
比翼連理は、「夫婦の仲が良いこと」という意味です。
比翼連理は以下のように成り立っています。
- 比翼(ひよく)
2羽の鳥が翼を互いに並べること - 連理(れんり)
1本の木の枝が他の木の枝とくっついていること
つまり、夫婦が、翼を互いに並べている鳥や、木の枝がくっついている鳥のように、寄り添いあっていることを表します。
「月下氷人」のまとめ
以上、この記事では月下氷人について解説しました。
読み方 | 月下氷人(げっかひょうじん) |
---|---|
意味 | ①結婚の仲立ちをする人 ②縁結びの神様 |
由来 | 月下老人:『続幽怪録』 氷上人:『晋書』「索紞伝」 |
類義語 | 月下老人 氷上人 橋渡し役 など |
対義語 | 縁切り 別れさせ屋 |
英語訳 | go between(~の間の仲立ちになる) go-between(仲立人) matchmaker(結婚の仲人) など |
「月下」がつく語 | 月下美人 月下氷姫 |
結婚にまつわる語 | 偕老同穴 比翼連理 比翼の烏 など |
現代では、月下氷人の役割を務める人は少なくなっていますが、とても名誉あることです。
結婚の話題で月下氷人を使うと、「難しい語を知っているね」と感心されるでしょう。