「身をやつす」とは?意味や使い方をわかりやすく解説!

言葉

「身をやつす」とは「みすぼらしい格好になるほど何かに熱中する」という意味です。

「身をやつす」という日本語を聞いたことがある人はいるでしょうか。

古文や歴史などに詳しい人は聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。

今回は、そんな「身をやつす」の意味や使い方について解説します。

「身をやつす」の意味

をやつす

①みすぼらしい格好になるほど何かに熱中する
例:彼は受験のために身をやつして勉強した
②みすぼらしい格好になる
例:人目を避けるため、私は身をやつした。
②みすぼらしい格好になるほど思い悩む
例:好きな人ができたため、身をやつしてしまった。

「身をやつす」とは、みすぼらしい格好をすること、またそんな格好になるほど物事に熱中することを指す言葉です。

「やつす」は漢字だと「窶す」と表記します。
元々の意味は「みすぼらしい格好をする」でしたが、近年ではそこから派生して、「みすぼらしい格好になるほど熱中する」という意味で使われることが多くなっています。

ここからは、それぞれの意味について一つずつ解説します。

意味①:みすぼらしい格好になるほど何かに熱中する

この意味の場合は、ほかのことを忘れて一つのものにとにかくのめりこんでいる際に使います。

また、のめりこんでいる対象が良いこと・悪いことに関わらず、「身をやつす」という表現は使うことができます。

しかし、「身をやつす」には「体調が悪くなるほど物事にのめりこむ」というニュアンスがあるため、スポーツなどのめりこむことで健康になるイメージがあるものに対しては使うことはできません。

意味②:みすぼらしい格好になる

この意味の場合は、目的があってわざと目立たない格好をしている際に使います。

みすぼらしい格好をしていても、単に貧しくなったからみすぼらしい格好をしているという場合には使うことはできません。

普段は普通の格好をしている人が、注目を集めたくないなどの理由から、あえて格好を変えている場合にのみ使うことができます。

意味③:みすぼらしい格好になるほど思い悩む

この意味の場合は、非常に深刻な悩みを抱えている際に使います。

主に恋愛に関する悩みに使われ、体がどうにかなってしまうくらい思い悩んでいる様子を表します。

「身をやつす」の使い方

「身をやつす」には大きく分けて3つの意味があるため、意味ごとに使うことができるシチュエーションが異なります。

しかし近年では、主に「みすぼらしい格好になるほど熱中する」という意味で使われることが多いため、物事に対し打ち込んでいるシチュエーションで使われることが多いです。

「身をやつす」という言葉を使った例文は、以下のようなものがあります。

  1. 試験が来月に迫っているため、身をやつして勉強する。
  2. 人目を避けるため、身をやつす
  3. 好きな人との関係を考えると、身をやつしてしまう。

上記の例文の中で、一つめは「みすぼらしい格好になるほど物事に熱中する」という意味で「身をやつす」が使われています。

また、二つめの例文では、「みすぼらしい格好をする」という意味で「身をやつす」が使われています。

最後の例文では、「みすぼらしい格好になるほど思い悩む」という意味で「身をやつす」が使われています。

「憂き身をやつす」とは

上記に加え、「身をやつす」の派生語として「憂き身をやつす」という表現があり、これも非常によく使われます。

「憂き身をやつす」は、「学問や趣味に夢中になり、身の周りのことができないほど打ち込んでしまう」という意味の言葉です。

そのため、「身をやつす」の「みすぼらしい格好になるほど物事に熱中する」という意味と同じように使うことができます。

「憂き身をやつす」の例文は、以下の通りです。

  1. インターネットゲームにはまり、憂き身をやつすほどのめりこむ。
  2. 税理士試験に合格するため、憂き身をやつす思いで勉強する。
  3. あの人のことが好きすぎて、憂き身をやつすことになってしまう。

「身をやつす」の由来

「身をやつす」は元々古語として、日本で使われていました。

古語「身をやつす」の意味は以下の通りです。

  • 身をおちぶれさす
  • 出家する

また、派生語である「憂き身をやつす」も、元々は古語でした。

古語「憂き身をやつす」の意味は以下の通りです。

  • 身がやせ細るほど物事にのめり込む
  • 価値のないものに夢中になる

「身をやつす」の類義語

「身をやつす」には以下のような類義語があります。

それぞれの類義語について、以下で解説します。

一意専心とは

一意専心は、ひたすら一つのことに意識を集中させるさまを表す言葉です。

「身をやつす」の「みすぼらしい格好になるほど物事に熱中する」という意味における類義語であると考えることができます。

「身をやつす」と一意専心の違いは以下の通りです。

  • 身をやつす
    「不健康になる」というネガティブなニュアンスがこめられている
  • 一意専心
    特にネガティブなニュアンスはこめられていない
「身をやつす」と一意専心では、ネガティブなニュアンスがこめられているか否かという点に違いがあります。

また、「身をやつす」には「みすぼらしい格好になるほど物事に熱中する」以外にも意味があるため、その点でも異なっていると考えることができます。

無我夢中とは

無我夢中は、心を奪われ、無意識的にひたすら行動するさまを表す言葉です。

「身をやつす」の「みすぼらしい格好になるほど物事に熱中する」という意味における類義語であると考えることができます。

「身をやつす」と無我夢中の違いは以下の通りです。

  • 身をやつす
    「不健康になる」というネガティブなニュアンスがこめられている
  • 無我夢中
    特にネガティブなニュアンスはこめられていない
無我夢中も一意専心と同じく、ネガティブな意味がこめられていないという点が「身をやつす」と異なっています。

「堕ちる」とは

「堕ちる」は、好ましくない状態に至ることを表す言葉です。

「身をやつす」の「みすぼらしい格好になる」という意味における類義語であると考えることができます。

「身をやつす」と「堕ちる」の違いは以下の通りです。

  • 身をやつす
    目的があってみすぼらしい格好をしている場合にのみ使われる
  • 堕ちる
    ただ貧しくなった場合にも使うことができる
「堕ちる」は「身をやつす」と違い、ただ理由なく貧しくなった場合にも使うことができるという点が異なっています。

また、「身をやつす」には「みすぼらしい格好になる」以外にも意味があるため、その点でも異なっていると考えることができます。

「落ちこぼれる」とは

「落ちこぼれる」は、組織や体制についていけなくなることを指す言葉です。

また、学校の授業についていけず、勉強意欲を失うことを指して使われることもあります。

「身をやつす」と「落ちこぼれる」の違いは以下の通りです。

  • 身をやつす
    目的があってみすぼらしい格好をしている場合にのみ使われる
  • 落ちこぼれる
    ただ順位や立場が下の方になった場合にも使うことができる
「落ちこぼれる」も「堕ちる」と同様、目的なしに下の方の順位になった場合でも使うことができるという点が異なっています。

「身をやつす」の英語訳

「身をやつす」を英語に訳すと、次のような表現になります。

  • to be enthralled by
    (~に熱中させられる)
  • disguise oneself
    (変装する)
  • be dead in love with
    (恋に溺れる)

「身をやつす」の英語訳は、「身をやつす」をどのような意味で使うかによって異なっています。

「みすぼらしい格好になるほど熱中する」という意味で使う場合には “to be enthralled by” を使います。

また、「みすぼらしい格好になる」と使う場合には “disguise oneself” が似た意味の表現です。

そして、「みすぼらしい格好になるほど思い悩む」という意味は、恋の悩みに対して使われることが多いことから、 “be dead in love with” が良い訳となっています。

「身をやつす」のまとめ

以上、この記事では「身をやつす」について解説しました。

読み方身をやつす(みをやつす)
意味①みすぼらしい格好になるほど熱中する
②みすぼらしい格好になる
③みすぼらしい格好になるほど思い悩む
由来古語「身をやつす」
類義語一意専心
無我夢中
堕ちるなど
英語訳“to be enthralled by”(~に熱中させられる)
“disguise oneself”(変装する)
“be dead in love with”(恋に溺れる)

「身をやつす」は、あまり日常では使わない表現ですが、熱中してることを表す言葉として使うことができます。

意味や使い方をしっかりと覚えておきましょう。

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つつつ
この道10年以上の読書家。 短い言葉で人を惹き付けるコピーが大好きです。 本の帯に書かれたコピーを見て買ってしまうこともしばしば。 読書で得た文章力を活かして、日常生活でよく使う言葉を中心に執筆しています。