今回ご紹介する言葉は、熟語の「抽象的(ちゅうしょうてき)」です。
言葉の意味、「抽象的思考」の意味、使い方、メリット、語源、類義語、対義語、英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「抽象的」をざっくり言うと……
読み方 | 抽象的(ちゅうしょうてき) |
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意味 | 概念的で一般的なさま、現実から離れて具体性を欠いているさま |
類義語 | 漠然、曖昧、形而上的、など |
対義語 | 具体的、具象的、演繹 |
英語訳 | abstract、nonfigurativeなど |
このページの目次
「抽象的」の意味をスッキリ理解!
「抽象的」の意味を詳しく
「抽象的」には以下の2つの意味があります。
- 概念的で一般的なさま
- 現実から離れて具体性を欠いているさま
それぞれの意味について詳しく見ていきましょう。
意味①:「概念的で一般的なさま」
「抽象的」の1つ目の意味は「概念的で一般的なさま」です。
広い範囲のものごとに当てはまるような言葉のことを指します。
たとえば、「チワワ」「犬」「動物」の中では、「動物」が一番「抽象的」な言葉です。
「動物」の中にはチワワ以外の犬種も含まれていますし、「犬」以外の動物も含まれているからです。
意味②:現実から離れて具体性を欠いているさま
「抽象的」は「現実から離れて具体性を欠いているさま」という否定的なニュアンスで用いられることもあります。
たとえば、今月の売り上げを2倍にしたいと思っている上司が部下に向けて「今月の売り上げを増やすために、気合を入れて頑張ろう」と指示を出します。
この指示はどのように仕事をするかについて言及していないため、具体性を欠いている「抽象的」な指示となります。
「抽象的思考」とは?
「抽象的思考」とは「実体がないものなど抽象的なものについて考えること」という意味です。
「抽象的」は否定的な意味で使われがちですが、「抽象的思考」をすると視野が広くなり、より大局的な視点から物事を判断できるようになります。
たとえば、新規事業の企画を立てる時に、「そもそもその新規事業にはどのような意味があるのか」という抽象的な視点から考えると、方向性を間違えにくくなります。
「抽象的」の使い方
- 細かい事例にとらわれないで、もっと抽象的に考えるべきフェーズに入ったよ。
- ファンタジーは抽象的な表現が多すぎて、あまり好きな小説のジャンルとは言えないな。
- ピカソの絵は人間の表情を抽象的に表している。
- 君の質問はいつも抽象的で的を得ないな。
①の「抽象的」は、「概念的で一般的なさま」を指しています。
②は「現実から離れて具体性を欠いている表現」という意味で「抽象的な表現」が使用されています。
③の「抽象的」は、表情について「概念的で一般的なさま」だと表現しています。
④は「質問が現実から離れて具体性を欠いている」というネガティブな意味で「抽象的」が用いられています。
「抽象的」であることのメリット
「抽象的」であることはネガティブなニュアンスで捉えられがちですが、以下のようなメリットがあります。
- 視野が広くなる
- 物事を整理できる
- 他分野に応用できる
それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。
メリット①:視野が広くなる
「抽象的」に考えると視野が広くなります。
広い視野で考えることにより、本質を見抜くことができるようになります。
メリット②:物事を整理できる
「抽象的」に考えると物事を整理できます。
物事を整理できると思い出しやすくなるので、記憶力を上げることができます。
メリット③:他分野に応用できる
「抽象的」な物事は他分野に応用することができます。
そのため、事業のアイデアを考えたりすることに役立ちます。
たとえば、動画配信サービス、音楽配信サービスでは毎月定額のお金を払えばサービスが利用し放題になるサブスクリプションが主流です。
これを自分の事業に応用してサブスクリプションを始めれば、利益が向上するかもしれません。
「抽象的」の語源
「抽象的」を構成する漢字には以下のような意味があります。
- 抽:抜き出す
- 象:姿・形
- 的:そのようなようすの
「抽象的」は漢字を3つ組み合わせて「姿や形を抜き出す様子」という意味になるのです。
具体的なものの姿や形を抜き出すと「抽象的」なものになります。
「抽象的」の類義語
「抽象的」には以下のような類義語があります。
- 漠然(ばくぜん):ぼんやりとしてはっきりしないさま
- 曖昧(あいまい):内容がしっかり捉えにくく、はっきりしないこと
- 形而上(けいじじょう)的:形をもっていないもの
- ぼんやり:はっきりしないこと
- 取り留めのない:話の結論やまとまりがはっきりしないこと
- 概念的(がいねんてき):見方が具体的ではないこと
- 一般化(いっぱんか):個別的の違いを捨てて共通するものを残すことにより広く通じる概念・法則を作ること
- 普遍化(ふへんか):特殊なものから普遍的な概念を作り出すこと
- 帰納(きのう):個別の具体的な事柄から一般的な命題や法則を導き出すこと
- アブストラクト:抽象的な
「抽象的」と「曖昧」の違い
「曖昧」とは、内容がしっかり捉えにくく、はっきりしないことを表します。
「抽象的」と「曖昧」には以下のような違いがあります。
- 抽象的:概念的で一般的なこと
- 曖昧:内容があやふやなこと
「曖昧」はあやふやなだけで、「抽象的」な場合もあれば「具体的」な場合もあります。
「抽象的」なことは多く場合「曖昧」と言えるので、「曖昧」は「抽象的」より広い範囲を表していると言えます。
ただ、「抽象的」と「曖昧」は「はっきりと表してない」という意味は共通しています。
「抽象的」と「大雑把」の違い
「大雑把」とは、「細かいところにこだわらないこと」という意味です。
「抽象的」と「大雑把」には以下のような違いがあります。
- 抽象的:一般的で具体性がないこと
- 大雑把:細かいところまで注意が行き届いてないこと
「抽象的」も「大雑把」も「細かいところに行き届いてない」という意味は共通していますが、「大雑把」には「雑」というニュアンスが加わります。
また、「抽象的」が説明や概念などに用いられるのに対して、「大雑把」は人の性質を指すことが多いです。
「抽象的」の対義語
「抽象的」には以下のような対義語があります。
- 具体的(ぐたいてき):はっきりした実体を持ってないこと
- 具象的(ぐしょうてき):それとわかるようなはっきりした形を持っていること
- 演繹(えんえき):一般的な前提からより個別的な法則を導き出すこと
「具体的」の意味
「具体的」は「はっきりとした形や内容を備えている様子」を指します。
言い換えると、物事が直接的に認識できる形を備えている状態を指します。
物事がはっきり事実だとわかっている場合に使うことができます。
曖昧な情報などは「具体的」と表現しません。
「抽象的」の英語訳
「抽象的」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- abstract
(抽象的な) - nonfigurative
(具体的でない) - general
(一般的な)
ちなみに、 “abstract” はラテン語で「抜き出された」という意味を持つ “abstractus” が由来の言葉です。
まとめ
以上、この記事では「抽象的」について解説しました。
読み方 | 抽象的(ちゅうしょうてき) |
---|---|
意味 | 概念的で一般的なさま、現実から離れて具体性を欠いているさま |
類義語 | 漠然、曖昧、形而上的、など |
対義語 | 具体的、具象的、演繹 |
英語訳 | abstract、nonfigurativeなど |
「抽象的」な考え方は学問や課題解決に必須である一方、説明や指示が「抽象的」になってしまっては相手との意思疎通ができません。
うまく「抽象的」と「具体的」を使いこなしましょう。