今回ご紹介する言葉は、ことわざの「犬猿の仲(けんえんのなか)」です。
言葉の意味・使い方・由来・類義語・対義語・英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「犬猿の仲」をざっくり言うと……
読み方 | 犬猿の仲(けんえんのなか) |
---|---|
意味 | 非常に仲が悪いこと |
由来 | 干支の伝説や性質・習性の違いなど |
類義語 | 犬と猫、水と油、不俱戴天など |
対義語 | 管鮑の交わり、刎頸の交わり、金蘭之契など |
英語訳 | like cats and dogs(犬猿の仲)、on bad terms(仲が悪い) |
このページの目次
「犬猿の仲」の意味をスッキリ理解!
「犬猿の仲」の意味を詳しく
「犬猿の仲」は、「互いの中が非常に悪いこと」を意味します。単に仲が悪いのではなく、かなり強い敵対心を抱いていたり、決して理解し合わないというニュアンスが含まれています。
仲が悪いことのたとえには「ハブとマングース」などがありますが、「犬猿の仲」が一番オーソドックスです。
犬と猿は『桃太郎』で協力して鬼退治をしているため、「なぜ犬と猿が仲が悪いことのたとえになるのか?」と疑問に思った人もいると思います。「犬猿の仲」の由来については、以下で詳しく触れます。
「犬猿の仲」の使い方
- あの2人は犬猿の仲だから、同じチームにしない方がいい。
- 彼と私はあの一件以来犬猿の仲だ。
- いつの間にか、犬猿の仲は解消されていた。
顔を合わせるとケンカが始まってしまうほどの、険悪な仲のことを指すため、中途半端に仲が悪い場合には使いません。「仲が悪い」の最上級と捉えて良いでしょう。
「犬猿の仲」の由来
「犬猿の仲」の由来には4つ説があります。1つ目は干支(えと)の順番、2つ目は『西遊記』のワンシーン、3つ目は犬と猿の守る対象の違い、4つ目は猿の特徴です。
1つ目の干支の順番に関しては、次のような言い伝えがあります。十二支の順番は、元旦に神様のところにあいさつに来た順とされています。
出発したときは猿と犬は仲良しでしたが、途中でケンカしたことによって猿は9番目、犬は11番目に神様の所に着きました。それから、猿と犬は非常に仲が悪くなったと言われています。
2つ目の『西遊記』のワンシーンに関しては、次のような言い伝えがあります。孫悟空が激しく暴れたり盗みを働いたとき、神様は犬と猿を戦わせました。このエピソードから、犬と猿は宿敵だというイメージが生まれました。
3つ目の「犬と猿の守る対象の違い」に関しては、次のように言われています。犬は忠誠心が強く、信頼している主人を守る意識がある動物です。
一方で、猿は所属している群れ全体を守ろうとする習性があります。このように犬と猿は守る対象が異なっているため、それが「犬と猿は仲が悪い」というイメージに結びつきました。
4つ目の猿の特徴に関しては、次のように言われています。猿は縄張り意識が強い動物です。
人間が、山に狩りに来た犬を激しく威嚇した猿を見て、「犬と猿は仲が悪い」と感じて「犬猿の仲」という言葉が生まれました。
「犬猿の仲」の類義語
「犬猿の仲」には以下のような類義語があります。
- 犬と猫:理解し合うことがない関係
- 水と油:互いに気が合わず、反発し合っていること
- 反り(そり)が合わない:気が合わないこと
- 不俱戴天(ふぐたいてん):恨みや憎しみが深いこと
「水と油」は、水と油が異質なもので決して混ざり合わないことから、「調和がとれない」という意味になります。「反りが合わない」の「反り」は、刀の峰(みね)の反っている部分のことです。
この反りが鞘(さや)の曲がり具合に合わないと、刀を鞘に収めることができません。これを人間関係に当てはめ、「反りが合わない=気が合わない」という意味で使われるようになりました。
「不俱戴天」は「同じ天の下には生かしておかない」という意味で、かつては父の仇(かたき)を指しました。そこから派生して、現在は「最悪な間柄」という意味で使われています。
「犬猿の仲」の対義語
「犬猿の仲」には以下のような対義語があります。
- 管鮑(かんぽう)の交わり:互いによく理解し合っていて、信頼の厚い友情。
- 刎頸(ふんけい)の交わり:心を許し合った親密な関係。
- 金蘭之契(きんらんのけい):非常に親密で、固く結ばれた友人関係
- 莫逆之友(ばくぎゃくのとも):気持ちがぴったり合った親密な友
- 雷陳膠漆(らいちんこうしつ):固い友情で結ばれていること
- 水魚の交わり:親密な間柄のこと
「管鮑の交わり」の「管」と「鮑」は、それぞれ人名です。春秋時代の管仲(かんちゅう)と鮑叔牙(ほうしゅくが)という人物の仲のよさが由来です。「刎頸の交わり」の「刎頸」は首を斬ることで、「首を斬られても悔いがないほど、固い友情で結ばれた仲」という意味です。
「金蘭之契」の「契」は、約束や結びつきを意味します。「金を切断するほどに固く、蘭のように香り高い結びつき」という意味です。「莫逆の友」の「逆」は逆らうこと、「莫」は否定を意味します。
「雷陳膠漆」の「雷陳」は、中国・後漢の仲が良いことで有名だった「雷義」と「陳重」の頭文字です。「膠漆」は膠(にかわ)と漆のことで、これらは接着剤として使われていたため、仲が良いことの比喩で用いられています。
「水魚の交わり」は、水と魚が切っても切れない関係であることが由来となっています。
「犬猿の仲」の英語訳
「犬猿の仲」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- like cats and dogs
(犬猿の仲。猫と犬は何かと比較されるため) - on bad terms
(仲が悪い)
「犬猿の仲」は日本特有の言い方であるため、 “dogs and monkey” と言っても通じません。 “on bad terms” を使うのが無難です。
まとめ
以上、この記事では「犬猿の仲」について解説しました。
読み方 | 犬猿の仲(けんえんのなか) |
---|---|
意味 | 非常に仲が悪いこと |
由来 | 干支の伝説や性質・習性の違いなど |
類義語 | 犬と猫、水と油、不俱戴天など |
対義語 | 管鮑の交わり、刎頸の交わり、金蘭之契など |
英語訳 | like cats and dogs(犬猿の仲)、on bad terms(仲が悪い) |
「犬猿の仲」は単に仲が悪いのではなく、共演NGと言えるくらいの険悪な仲のことを言います。普段なかなか使わない言葉かもしれませんが、これを機に類義語や対義語も含めてインプットしましょう。