「陰徳あれば陽報あり」とは「ひそかに良い行いをすれば後で必ず報われる」という意味です。
普段あまり使わない漢字が使われているため、意味が想像しづらいですよね。
そこで、この記事では「陰徳あれば陽報あり」の意味や使い方、類義語、対義語などについて詳しく解説します。
☆「陰徳あれば陽報あり」をざっくり言うと……
読み方 | 陰徳(いんとく)あれば陽報(ようほう)あり |
---|---|
意味 | ひそかに良い行いをすれば後で必ず報われるということ |
由来 | 『淮南子(えなんじ)』の「人間訓(じんかんくん)」 |
類義語 | 陰徳は果報の来る門口 隠れたる信あらば顕れたる験 積善の家には必ず余慶あり など |
対義語 | 悪因悪果 |
英語訳 | He who lend to the poor, gets his interest from God. (貧しい人に貸す人は、神からの利益を得る) He that sows good seed shall reap good corn. (良い種をまく者は、良い麦を収穫する) A good turn deserves another. (1つの良い行いをすれば、別の良いことが返ってくる) |
このページの目次
「陰徳あれば陽報あり」の意味
ひそかに良い行いをすれば後で必ず報われるということ
「陰徳あれば陽報あり」とは、「人の目に触れないところで良い行いをすれば、後で必ず良い報いがある」という意味のことわざです。
「陰徳あれば必ず陽報あり」ともいいます。
陰徳と陽報には、それぞれ以下のような意味があります。
- 陰徳
陰で善い行いを積み重ねていく - 陽報
はっきりと表れる良い報い
したがって、「陰徳あれば陽報あり」は「陰で善い行いを積み重ねていくことは、はっきりと表れる良い報いになる」ということを表しているのです。
このことわざのポイントは、「“陰で” 善い行いを積み重ねる」という部分にあります。
人が見ていないところで善い行いをしても、誰かに褒められたり、感謝されたりすることはありませんね。
しかし、この「陰徳あれば陽報あり」ということわざでは、「誰も見ていなくても、善い行いをすれば、必ず報われる」という真理を説いているのです。
「陰徳あれば陽報あり」の「陽報」を、「陽徳」と書くのは誤りですから気をつけましょう。
× 陰徳あれば陽徳あり
× 陰徳あれば必ず陽徳あり
なぜなら、「陰徳あれば陽徳あり」としてしまうと、「陰で徳を積めば、はっきりと徳が積む」という不自然な意味になってしまい、「後で必ず良い報いがある」という本来の意味が表せなくなるからです。
「陰徳あれば陽報あり」の使い方
「陰徳あれば陽報あり」は、おもに以下のような言い回しで使います。
- 陰徳あれば陽報ありだ。
- 陰徳あれば陽報ありで、〜。
- 陰徳あれば陽報ありというから、〜。
上記をふまえて、例文を見てみましょう。
- 早朝に、1人で街のゴミ拾いをした。すると、なんと今日宝くじが当たった。まさに陰徳あれば陽報ありだ。
- 陰徳あれば陽報ありで、たとえ自分の行動を他人にアピールしなくても、ひっそりとコツコツと良いことをすれば必ず良いことが起きるよ。
- リモートワークの日々だが、陰徳あれば陽報ありというから、誰も見ていなくても、さぼらずにしっかり働いてください。
このように、「陰徳あれば陽報あり」は、日常生活でもビジネスシーンでも用いることができます。
「陰徳あれば陽報あり」の由来
「陰徳あれば陽報あり」は、古代中国の思想書『淮南子(えなんじ)』(※)の「人間訓(じんかんくん)」に由来します。
この書物のなかに、以下のような文が登場します。
原文
夫有二陰徳一者、必有二陽報一。有二陰行一者、必有二昭名一書き下し文
陰徳有る者は、必ず陽報有り。陰行有る者は、必ず昭名(しょうめい)有り。意味
人知れず徳を積む者には、必ず明らかな善い報いがある。隠れて善い行いをしている者には必ず明らかな名誉がある
この文章のなかの「陰徳有る者は、必ず陽報有り」が元となって、のちに日本でも「陰徳あれば陽報あり」のことわざが定着しました。
『淮南子』は、中国の前漢時代に劉安(りゅうあん)という人物によって編まれた書物です。
全部で21巻から成り立っています。
『淮南子』では、道家をはじめ、儒家や陰陽家など様々な宗教に関する思想が収録されています。
「陰徳あれば陽報あり」の類義語
陰徳あれば陽報ありには以下のような類義語があります。
- 陰徳は果報(かほう)の来る門口(かどぐち)
ひけらかさない善行によって良い結果が訪れる - 隠れたる信あらば顕(あらわ)れたる験(しるし)
①ひそかに信仰したとしても必ずご利益がある
②良い行いがひそかなものであっても、後で必ず報われるということ
※「隠れての信は顕れての徳」ともいう - 積善(せきぜん)の家には必ず余慶(よけい)あり
良い行いを積み重ねた家には、子孫にまで良いことが起こって幸福になる - 陰徳陽報(いんとくようほう)
ひそかに良い行いをすれば後で必ず報われる - 善因善果(ぜんいんぜんか)
良い行いをすれば、必ず良いことが起きる - 福因福果(ふくいんふっか)
幸福をもたらすような行いをすれば、幸福がやってくる
因果応報は、「陰徳あれば陽報あり」の類義語ではありません。
因果応報は「行いの良し悪しに関わらず、行いのすべが報いとなって返ってくる」ということを表します。
そのため、「ひそかに良い行いをすれば報われる」ということだけを表す「陰徳あれば陽報あり」とは、意味の範囲が異なるのです。
「陰徳あれば陽報あり」の対義語
陰徳あれば陽報ありには以下のような対義語があります。
- 悪因悪果(あくいんあっか)
悪い行いをすれば必ず不幸が身に降りかかる
「陰徳あれば陽報あり」の英語訳
陰徳あれば陽報ありを英語に訳すと、次のような表現になります。
- He who lend to the poor, gets his interest from God.
(貧しい人に貸す人は、神からの利益を得る) - He that sows good seed shall reap good corn.
(良い種をまく者は、良い麦を収穫する) - A good turn deserves another.
(1つの良い行いをすれば、別の良いことが返ってくる)
「陰徳あれば陽報あり」のまとめ
以上、この記事では「陰徳あれば陽報あり」について解説しました。
読み方 | 陰徳(いんとく)あれば陽報(ようほう)あり |
---|---|
意味 | ひそかに良い行いをすれば後で必ず報われるということ |
由来 | 『淮南子(えなんじ)』の「人間訓(じんかんくん)」 |
類義語 | 陰徳は果報の来る門口 隠れたる信あらば顕れたる験 積善の家には必ず余慶あり など |
対義語 | 悪因悪果 |
英語訳 | He who lend to the poor, gets his interest from God. (貧しい人に貸す人は、神からの利益を得る) He that sows good seed shall reap good corn. (良い種をまく者は、良い麦を収穫する) A good turn deserves another. (1つの良い行いをすれば、別の良いことが返ってくる) |
「陰徳あれば陽報あり」は、「誰からも感謝されなかったとしても、良い行いをすれば必ず報われる」という励ましになりますね。
日々の生活のなかで、このことわざを意識していきましょう。