今回ご紹介する言葉は、熟語の「軋轢(あつれき)」です。
言葉の意味・使い方・語源・類義語・対義語・英語訳について解説します。
☆「軋轢」をざっくり言うと……
読み方 | 軋轢(あつれき) |
---|---|
意味 | 仲が悪くなること |
語源 | 「車輪がきしむ」という意味から派生 |
類義語 | 摩擦、対立、反目など |
対義語 | 昵懇、懇意、親交など |
英語訳 | friction(衝突) |
「軋轢」の意味をスッキリ理解!
「軋轢」の意味を詳しく
「軋轢」とは、「人との関係が悪化し、仲違いになること」を表します。人間関係が悪くなる様子や、敵対するもの同士の衝突を意味します。
「軋」と「轢」はどちらも「きしむ」と訓読することができます。「きしむ」とは、「物事の滑りが悪いこと」を表します。また、「いらだつ」という意味も含まれています。
したがって、「人間関係がきしむ」ということは「相性が悪くなること」を示します。
つまり、「軋轢」とは、本来は仲が良かった、もしくは関係性に問題がなかった人同士が、何らかのきっかけにより仲が悪くなった様子のことです。
「軋轢」は人間関係の状態について用いられる言葉であり、非常にネガティブな意味を持ちます。
「軋轢」の使い方
- ショッピングセンターの建設計画を巡って、自治体と商店街の間に軋轢が生じた。
- 彼の余計な一言が、彼女と軋轢を生むきっかけとなった。
- チームが分裂した一番の原因は、チームメイトの間に軋轢があったことだ。
- 相手との軋轢を避けるために、時には多少の我慢が必要だ。
「軋轢」を用いる時に、使われやすい表現は「軋轢が生じる」です。
また、他にも次のような使われ方があります。
- 軋轢を生む
- 軋轢がある
- 軋轢を避ける
「軋轢を生む」は、主に仲を悪くするきっかけについて述べるときに用います。また、きっかけに重点を置くことから、「軋轢の火種となる」という表現も使われます。
「軋轢がある」は、すでに関係性が悪くなっている状態について述べる時に用います。
「軋轢を避ける」は、その時の状況を考えて、仲が悪くなる未来を避ける行動について述べる時に使われる表現です。
このように、その場の状況によって、「軋轢」の後に続く言葉が変化してきます。使い方だけでなく、表現方法もより多く覚えて、会話や文章に活かしましょう。
「軋轢」の語源
「軋轢」は、もともと「車輪がきしむ様子」を表す言葉です。どちらの漢字も「車(くるまへん)」が付いていることから、自動車に関係がある漢字同士です。
「軋」には、「押し付け合う」「争う」「きしむ」、「轢」には「車でひく」「きしむ」という意味が含まれます。
ちなみに、「樂」には「奏でる」という意味があります。「樂」に「車」をつけて「車から生じる音」という意味を持つようになりました。この意味が、やがて「きしむ」という意味に派生しました。
車輪がきしむと、聞いていて不快な音が出ます。人間関係に置き換えると、人間同士がぶつかると、見ていて嫌な気分になります。
したがって、「軋轢」は、「相性が悪くなること」や「不仲になること」を意味する言葉になりました。
「軋轢」の類義語
軋轢には以下のような類義語があります。
- 摩擦(まさつ):意見や考え方の違いから生まれる揉め事のこと
- 対立(たいりつ):2つのものが反対の立場に立ち、張り合うこと
- 反目(はんもく):にらみ合うくらい仲が悪いこと
- 紛争(ふんそう):物事がもつれあって争いになること
- 不仲(ふなか):仲がよくないこと
- 葛藤(かっとう):事情の入り組んだ争いや揉め事のこと
「摩擦」も、「軋轢」と同じように本来の意味から派生して、上記の意味が生まれました。
「摩擦」にはもともと、「こすれ合い、熱が生まれる」という意味があります。「軋轢」よりも、「争う」という意味が強い言葉です。
「確執(かくしつ)」も、「軋轢」の類義語とされることがありますが、「確執」は「軋轢」の類義語ではありません。
「確執」とは、「対立するもの同士が互いに自己主張を譲らないこと」という意味です。
「軋轢」は、そこに生じている不和のことを指し、原因が何であるかは問われません。一方、「確執」は、お互いに自分の主張を譲らないという原因によって起こる不和や争いのことを表します。
「葛藤」は「軋轢」の対義語に含まれますが、扱いには注意が必要です。なぜなら、「葛藤」には上記とは別の意味があるからです。
「葛藤」には、「心の中で対立した欲求が生まれることにより、心の中で迷うこと」という意味もあります。
「軋轢」が生まれる対象は、主に人間関係です。つまり、自らの心の中で起きる争いについては、対象に含まれません。
「軋轢」と「葛藤」を、上手に使い分けましょう。
「軋轢」の対義語
軋轢には以下のような対義語があります。
「軋轢」は、人間関係が悪いことを意味します。そのため、対義語には、非常に仲の良い様子を表す言葉が当てはまります。
「昵懇」は、「入魂」とも表記されます。
「同朋」と似た読みの「同胞」は、対義語ではありません。「同胞」は、「同じくくりにまとめることができる集団のこと」です。国民や家族などが当てはまります。
「軋轢」の英語訳
軋轢を英語に訳すと、次のような表現になります。
- friction
(衝突) - conflict
(争い) - discord
(仲違い) - collision
(激突) - strife
(闘争) - clash
(小競り合いがある) - be at odds
(不仲になる)
clash と be at odds はそれぞれ動詞として用いられます。
「軋轢」は名詞です。しかし、英文を作るとき、同じニュアンスの動詞を用いて表現することも可能です。
動詞表現を覚えておくと、臨機応変に文章が組み立てられるようになります。
まとめ
以上、この記事では「軋轢」について解説しました。
読み方 | 軋轢(あつれき) |
---|---|
意味 | 仲が悪くなること |
語源 | 「車輪がきしむ」という意味から派生 |
類義語 | 摩擦、対立、反目など |
対義語 | 昵懇、懇意、親交など |
英語訳 | friction(衝突) |
「軋轢」は複雑な漢字ですが、日常生活でも使いやすい言葉です。もちろん、文章においてもよく用いられます。
意味のみでなく、類義語や対義語、英語表現なども合わせて覚えると、日常生活でより生かすことができます。