「快刀乱麻を断つ」とは「複雑で難しい問題を鮮やかに解決すること」という意味です。
泥棒を意味する「怪盗」を用いると勘違いしていませんか?
正しい表記や使い方を知っておきたいですよね。
この記事では、「快刀乱麻を断つ」の意味や使い方に加えて、類義語や英語訳、由来も詳しく解説します。
このページの目次
「快刀乱麻を断つ」の意味
複雑で難しい問題を鮮やかに解決すること
「快刀乱麻を断つ」は、「複雑な問題や難しい課題を、見事に解決すること」という意味です。
「快刀乱麻を断つ」は以下の語から成り立っています。
- 快刀
切れ味がよい刀 - 乱麻
乱れもつれた麻糸 - 断つ
切り離すこと
つまり、切れ味が鋭い刀でもつれている糸を切り離すように、複雑な問題を手際よく解決することを表します。
快刀乱麻だけでも、同じ意味を表します。
「快刀乱麻を断つ」の表記
正しい表記は「快刀乱麻を断つ」ですが、「快刀乱麻を絶つ」と表記することもあります。
「怪盗乱麻を断つ」と表記するのは誤りですので、注意しましょう。
「快刀乱麻を断つ」は、「複雑で難しい問題を鮮やかに解決すること」という意味です。
物事を解決せずに、ただ単に鮮やかであることを表す場合には使いません。
したがって、「快刀乱麻を断つように魚をさばく」という文は、物事を解決しているわけではありませんので、誤用です。
「快刀乱麻を断つ」の使い方
「快刀乱麻を断つ」は、「解決する」という言葉と一緒に使われることが多いです。
具体的な例文を見てみましょう。
- 彼は数学の難題を快刀乱麻を断つように解決した。
- 部長は取引先にまで拡大した厄介な問題を快刀乱麻を断つようにスムーズに処理した。
- その探偵は快刀乱麻を断つように難事件を解決した。
- ベテランのシステムエンジニアは、快刀乱麻を断つように仕事を終わらせた。
- どんな未解決事件であっても、刑事の手にかかれば快刀乱麻を断つがごとく解決する。
- (前略)暫(しばら)くすると先生の快刀乱麻を断つような推理の冴さえに魅せられて、夢中になってその実験に没入した。
[出典:中谷宇吉郎『寺田先生の追憶 ――大学卒業前後の思い出――』] - 実に快刀乱麻を絶つとはこういうことであろう。
[出典:中谷宇吉郎『球皮事件』]
例文❼では、「快刀乱麻を断つ」ではなく「快刀乱麻を絶つ」と表記しています。
「快刀乱麻を断つ」の由来
「快刀乱麻を断つ」の由来は、中国の歴史書である『北斉書(ほくせいしょ)』の中にある「文宣帝紀(ぶんせんていき)」という章です。
「文宣帝紀」の中に、以下のようなエピソードがあります。
そこで高歓は、子供達にからまった麻糸のかたまりを渡し、麻糸を解くように命じました。
子供達が麻糸を解くのに手こずっている中で、次男の高洋(こうよう)だけは刀で麻糸のかたまりを斬り、「乱れたものは斬らなければならない」と言いました。
高歓は感心して、「高洋は、場合によって的確に判断する能力を持っているから、将来きっと大物になるに違いない」と褒めました。
実際に、高洋は北斉(ほくせい)の初代皇帝である文宣帝(ぶんせんてい)になりました。
このエピソードから、「快刀乱麻を断つ」が「複雑で難しい問題を鮮やかに解決すること」を表すようになりました。
「快刀乱麻を断つ」の類義語
「快刀乱麻を断つ」には以下のような類義語があります。
- 一刀両断(いっとうりょうだん)
①物事を素早く処理すること
②ためらわずに決断すること - 一剣両断(いっけんりょうだん)
①物事を素早く処理すること
②ためらわずに決断すること - 迅速果断(じんそくかだん)
①物事を素早く処理すること
②決断力があること - 飛鳥の早業(ひちょうのはやわざ)
動作が素早いこと
「快刀乱麻を断つ」と「一刀両断」の違い
「快刀乱麻を断つ」と一刀両断には以下のような違いがあります。
快刀乱麻を断つ | 一刀両断 | |
---|---|---|
意味 | 複雑で難しい問題を鮮やかに解決すること | ①物事を素早く処理すること ②ためらわずに決断すること |
由来 | 『北斉書』の「文宣帝紀」 | 『朱子語類(しゅしごるい)』 |
「快刀乱麻を断つ」と一刀両断は、意味と由来が異なります。
「快刀乱麻を断つ」には「決断すること」という意味はありませんが、一刀両断には「決断すること」という意味があります。
また、「快刀乱麻を断つ」の由来は『北斉書』の「文宣帝紀」ですが、一刀両断の由来は『朱子語類』です。
「快刀乱麻を断つ」と「迅速果断」の違い
「快刀乱麻を断つ」と迅速果断には以下のような違いがあります。
快刀乱麻を断つ | 迅速果断 | |
---|---|---|
意味 | 複雑で難しい問題を鮮やかに解決すること | ①物事を素早く処理すること ②決断力があること |
「快刀乱麻を断つ」と迅速果断は、意味が異なります。
「快刀乱麻を断つ」には「決断力があること」という意味はありませんが、迅速果断には「決断力があること」という意味があります。
「快刀乱麻を断つ」の対義語
「快刀乱麻を断つ」には以下のような対義語があります。
- 試行錯誤(しこうさくご)
挑戦と失敗を繰り返しながら成功に近づいていくこと - トライアンドエラー
思いつく方法を試して失敗を重ねていくうちに、解決策を見つける方法
「快刀乱麻を断つ」の英語訳
「快刀乱麻を断つ」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- cut the Gordian knot
(複雑な問題や難しい課題を、見事に解決すること) - act decisively to solve a complicated problem
(複雑な問題を解決するために、決断力をもって行動する) - solving a problem swiftly and skillfully
(問題を素早く、巧みに解決する)
“cut the Gordian knot” の “the Gordian knot”(ゴルディアスの結び目)は、アレクサンドロス大王の神話に登場する言葉です。
以下のようなエピソードがあります。
彼は王になったあと、縄をそれまで誰も見たことのないほどにしっかりと柱に結びつけて、次のような予言を残しました。
この結び目は、ゴルディアスの結び目という名前で広く知られるようになり、多くの人々が結び目を解こうとしましたが、決して解けることはありませんでした。
時は流れて数百年後、この地にアレクサンドロス大王がやって来て、結び目を解こうとしてみましたが、なかなか解くことができませんでした。
すると、アレクサンドロス大王は剣を抜き、ゴルディアスの結び目を断ち切りました。
ちなみに、彼は結び目を断ち切った時、次のように宣言したとも言われています。
このエピソードから、“cut the Gordian knot” (ゴルディアスの結び目)は「複雑な問題や難しい課題を、見事に解決すること」という意味で使われるようになりました。
ちなみに、ゴルディアスの結び目は、以下のように表記することもあります。
- ゴルディオスの結び目
- ゴルディオンの結び目
「快刀乱麻を断つ」のまとめ
以上、この記事では「快刀乱麻を断つ」について解説しました。
読み方 | 快刀乱麻を断つ(かいとうらんまをたつ) |
---|---|
意味 | 複雑な問題や難しい課題を、見事に解決すること |
由来 | 『北斉書』の「文宣帝紀」 |
類義語 | 一刀両断 一剣両断 迅速果断 など |
対義語 | 試行錯誤 トライアンドエラー |
英語訳 | cut the Gordian knot (複雑な問題や難しい課題を、見事に解決すること) act decisively to solve a complicated problem (複雑な問題を解決するために、決断力をもって行動する) solving a problem swiftly and skillfully (問題を素早く、巧みに解決する) |
この記事を読んで、快刀乱麻を断つがごとく、意味が理解できたのではないでしょうか。
分からない言葉があったらすぐに調べて、快刀乱麻を断つようにスッキリ解決しましょう。