今回ご紹介する言葉は、熟語の「剣呑(けんのん)」です。「剣呑な雰囲気」などのフレーズを耳にしたことのある方は多いのではないでしょうか。
以下では、「剣呑」の意味・使い方・語源・類義語・対義語・英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「剣呑」をざっくり言うと……
読み方 | 剣呑(けんのん) |
---|---|
意味 | 危ない様子。不安を覚えるさま。 |
語源 | 「剣難」の音変化。 |
類義語 | 危険、不穏、物騒 |
対義語 | 平穏、柔和、良好など |
英語訳 | dangerous(危険を伴う)など |
「剣呑」の意味をスッキリ理解!
「剣呑」の意味を詳しく
「剣呑」は、以下の2つの意味で使われます。
- 危険を覚えるさま
- 不安を覚えるさま
②の意味に関しては、「嫌な予感がすること」と置き換えて問題ありません。
「剣呑」は、「呑」という漢字の旧字体を用いて「剣吞」と表記されることもあります。一見同じ漢字に見えますが、旧字体では一画目が「はらい」ではなく、横棒になっていますね。
また、「剣呑」は、「けんのみ」と読んで「荒々しく叱りつけること」を意味することもあります。しかし、この場合は類義語である「剣突(けんつく)」という熟語を用いるのが一般的です。
「剣呑」の使い方
- 飼い犬は剣呑な雰囲気を感じ取ったのか、大きな声で吠えはじめた。
- そんな剣呑な思いをしてまで、そこに行く必要はあるのか。
- 彼の醸し出す雰囲気の剣呑さに、皆が気圧されてしまった。
- 私はどうしても剣呑性(けんのんしょう)で、臆病なところがある。
- 剣呑、剣呑!この街で事件があったなんて、信じたくもない。
②の「剣呑な思い」は、リスクに心震えることを指します。
④の例文の「剣呑性」は、どんなことにも不安や危険を感じる性質のことを言います。言い換えるなら、臆病だということですね。
「剣呑」を繰り返すことで、意味を強調して使っているのが⑤の例文です。災難を避けるためのまじないの言葉として「くわばら、くわばら」がありますが、これと同じようなニュアンスを持っています。
「剣呑」の語源
「剣呑」は、「剣難(けんなん)」という熟語を語源としています。
「剣難」は、「刃物で殺傷されるという災難」を意味します。転じて、「災難が予感されるさま」という意味になりました。同時に、読み方が「けんなん」から「けんのん」に転じ、「剣呑」という字が当てられるようになりました。
ちなみに、「剣難」の同音異義語として「険難」という言葉があります。「険難」とは、「非常に険しく、通過するのが困難な道の様子」という意味です。「剣呑」が持っている「危険な」というニュアンスにより近いのは「険難」ですが、語源は「剣難」であるということを押さえておきましょう。
「剣呑」の類義語
剣呑には以下のような類義語があります。
- 危険(きけん):あぶないこと。また、その様子。
- 不穏(ふおん):穏やかでないこと。危険をはらんでいること。
- 物騒(ぶっそう):危ないこと。危険なことを起こしそうな様子。
上記の熟語はどれも、「安全でないこと」を指している点で「剣呑」と類似しています。
「剣呑」の対義語
剣呑には以下のような対義語があります。
「柔和」は、特に人の性質を指す時に用いられます。
「剣呑」の英語訳
剣呑を英語に訳すと、次のような表現になります。
- dangerous
(危険を伴う) - risky
(危険な) - hazardous
(危険な、行為などが冒険的な) - perilous
(非常に危険な) - unsafe
(安全でない) - insecure
(不安である、自信がない) - precarious
(不安定な、危うい)
「危険な」という意味に対応する英単語は、dangerous・risky、そしてより形式ばった表現である hazardous・perilous です。
「不安な」というニュアンスを示す場合は、insecure・precarious を用います。
まとめ
以上、この記事では「剣呑」について解説しました。
読み方 | 剣呑(けんのん) |
---|---|
意味 | 危ない様子。不安を覚えるさま。 |
語源 | 「剣難」の音変化。 |
類義語 | 危険、不穏、物騒 |
対義語 | 平穏、柔和、良好など |
英語訳 | dangerous(危険を伴う)など |
「安全な様子」を意味する熟語は数多くあり、耳慣れたものも多いです。しかし、その反対の意味を持つ「危険な様子」を表す熟語を多く知っている人は少ないものです。「剣呑」の意味をきちんと覚え、語彙(ごい)を増やしましょう。