今回ご紹介する言葉は、四字熟語の「一網打尽(いちもうだじん)」です。
言葉の意味・使い方・由来・類義語・英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「一網打尽」をざっくり言うと……
読み方 | 一網打尽(いちもうだじん) |
---|---|
意味 | ある集団の全てのメンバーを捕らえること |
由来 | 宋の時代の検察官が犯罪者を一斉検挙した時に検察官が言ったこと |
類義語 | 一瀉千里、一気呵成など |
英語訳 | “make a wholesale arrest” (一味全てを逮捕すること) など |
「一網打尽」の意味をスッキリ理解!
「一網打尽」の意味を詳しく
「一網打尽」は「1回ですべてを捕らえる」という意味です。
この意味になる理由は、漢字の意味を見るとわかりやすいのではないでしょうか。
「一網打尽」のそれぞれの漢字の意味は以下のとおりです。
- 一網:縄を一度打つ
- 打尽:すべて捕らえてしまうこと
「一網打尽」の漢字は「縄を一度打っただけで、すべて捕らえてしまうこと」という意味になるのです。
そして、「一網打尽」はより厳密に言うと、以下の3つの意味があります。
- 魚やその他の生物を1回ですべて捕らえること
- 犯人グループを1回で全員捕らえること
- 複雑な事態を一度ですべて片付けること
❶がもともとの意味です。
そこから転じて❷や❸の意味が生まれました。
「一網打尽」の使い方
- たくさんのボートで魚の群れを一つの場所に追い込み、一網打尽にした。
- 警察がテロ組織の本拠地に急襲し、その場にいたメンバー全ての逮捕に成功した。まさに一網打尽といったところだ。
- 優秀なエンジニアがシステム上の問題を一網打尽にした。
❶の例は、「一網打尽」の元々の使い方です。漁において、文字通り網を使って魚を一気に大量に獲ることをいいます。
❷の例は、現在よく使われている用法です。
この例のように、「一網打尽」は主に犯罪者などの悪人の集団を一斉に逮捕する際に用いられます。
❸の例は「複雑な事態を一度ですべて片付けること」という意味で用いられています。
「一網打尽に捕らえる」は間違った表現なので注意が必要です。
「一網打尽」に「捕らえる」という意味が含まれており、「一度ですべて捕らえる捕らえる」という意味になってしまうからです。
「一網打尽」の由来
元々「一網打尽」は、「魚を1回ですべて捕らえること」という意味のみを持つ中国の四字熟語でした。
「犯人グループを1回で全員捕らえること」などの意味は、中国の歴史書『宋史(そうし)』にある以下のエピソードを由来としています。
宋の時代、王拱辰(おうきょうしん)という検察官がいました。
彼は独自に政府の腐敗に関する調査を行い、ついには現場で容疑者を全員逮捕することができました。
その時に王拱辰は「一網打尽せり」と叫びました。
中国の「宋」の時代を扱った歴史書。
「一網打尽」の類義語
一網打尽には以下のような類義語があります。
- 一瀉千里(いっしゃせんり):物事の進むスピードがとても速いこと
- 一気呵成(いっきかせい):あることを一気に終わらせてしまうこと
- 一攫千金(いっかくせんきん):1回で簡単に大きな利益を得ること
- 一朝富貴(いっちょうふうき):急に高い身分や財産を得ること
- 一斉検挙(いっせいけんきょ):犯人グループを一度に検挙すること
- 一斉摘発(いっせいてきはつ):犯人グループを一度に摘発すること
「一瀉千里」「一気呵成」は、物事が一気に進む状態を表しているという点で「一網打尽」と似た意味を持っています。
しかし「何かを捕まえる」といった意味合いはないので、注意してください。
また、「一攫千金」「一朝富貴」は大きな利益が得られた時にしか使えません。
「一斉検挙」「一斉摘発」は一度に犯人を捕まえた時にのみ使えます。
「一網打尽」の英語訳
一網打尽を英語に訳すと、次のような表現になります。
- net a good haul of fish
(大漁である) - make a wholesale arrest
(一味全てを逮捕する) - round up
(一斉に検挙する) - in one swoop
(一気に)
❶が、魚に関する際の用法の英語訳で、❷と❸が悪人集団に対して使われる際の英語訳です。
❹はどちらの場合も使うことができます。
意味に応じて使い分けましょう。
まとめ
以上、この記事では「一網打尽」について解説しました。
読み方 | 一網打尽(いちもうだじん) |
---|---|
意味 | ある集団の全てのメンバーを捕らえること |
由来 | 宋の時代の検察官が犯罪者を一斉検挙した時に検察官が言ったこと |
類義語 | 一瀉千里、一気呵成など |
英語訳 | “make a wholesale arrest” (一味全てを逮捕すること) など |
「犯罪グループの構成員が一網打尽にされる」というようなことが起きるのは珍しいことといえます。
しかし、しっかりと使い方を覚えて、いざという時に困らないようにしましょう。