今回ご紹介する言葉は、故事成語の「杜撰」です。
この記事では、「杜撰」の意味、由来、使い方、類義語、対義語、英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「杜撰」をざっくり言うと……
読み方 | 杜撰(ずさん) |
---|---|
意味 | 物事がいい加減で誤りが多いこと |
由来 | 杜黙の詩が定型詩の規則にほとんどあっていなかったことから |
類義語 | 粗雑、乱暴、乱雑など |
対義語 | 緻密、丁寧、入念など |
英語訳 | sloopy、careless、pisspoorなど |
このページの目次
「杜撰」の意味をスッキリ理解!
「杜撰」の意味を詳しく
「杜撰」には以下の2つの意味があります。
- 物事がいい加減で誤りが多いこと
- 典拠が明らかでないことを詩や文章に書くこと
①の意味で使われることがほとんどですが、たまに②の意味で使われることもあります。
2つの意味について、「杜撰」の漢字の意味と一緒に詳しく見ていきましょう。
意味①:物事がいい加減で誤りが多いこと
「杜撰」は「物事がいい加減で誤りが多いこと」という意味で用いられる言葉です。
ネガティブなニュアンスで用いられることがほとんどと言えます。
意味②:典拠が明らかでないことを詩や文章に書くこと
「杜撰」は「典拠が明らかでないことを詩や文章に書くこと」という意味で使われることもあります。
「典拠が明らかでないことが書かれた文章」は「いい加減で誤りが多い文章」とも言えます。
①の意味ともつながっていますね。
「杜撰」の漢字の意味
「杜撰」の漢字にはそれぞれ以下のような意味があります。
- 杜:宋の時代の詩人である杜黙(ともく)のこと
- 撰:詩文をつくること
つまり、「杜撰」とは、もともと杜黙がつくった詩のことだったのです。
ちなみに、「杜撰」は「ずざん」と読まれることもあります。
また、「杜黙詩撰」と表記されることもあります。
「杜撰」のよくある間違い
「杜撰」は間違って使われることもあるので注意が必要です。
具体的には、「杜撰」は以下のような間違った使われ方をすることがあります。
- 「社撰」と書くのは間違い
- 「杜撰な性格」と表現するのは間違い
それぞれの間違いについて詳しく見ていきましょう。
「杜撰な性格」と表現するのは間違い
「杜撰な性格」というのは間違った表現なので注意が必要です。
「杜撰」はいい加減で誤りが多い物事に対して用いる言葉であって、人に対して用いる言葉ではありません。
いくらいい加減で誤りが多い仕事をする人であっても、「杜撰な人」「杜撰な性格」と表現するのは間違いです。
「社撰」と書くのは間違い
「杜撰」を「社撰」と書くのは間違いなので注意しましょう。
似ている漢字ですが、間違えると恥ずかしいので覚えておきましょう。
「杜撰」の由来
「杜撰」の由来には、実は以下のように3つの説が考えられています。
- 杜黙の詩が定型詩の規則にほとんど当てはまっていなかったことから
- 「杜撰」の「杜」には「本物ではない仮のもの」という意味がある
- 「杜撰」の「杜」は杜黙ではないほかの人名を指す
今回はこの中でも、特に有力と考えられている①の説について詳しく見ていきましょう。
「杜撰」の出典は『野客叢書(やかくそうしょ)』です。
杜黙の詩が定型詩の規則にほとんど当てはまっていなかったことから、この言葉が生まれました。
ただ、杜黙はずっと駄作を作っていたわけではなく、前衛的な詩を書いていただけです。
しかし、前衛的な作品というものはいつの時代にも批判されるものです。
ちなみに、もともとの読み方に準ずるなら、「とせん」と読むはずです。
「杜撰」は日本に禅を通じて入ってきた時には「ずざん(づざん)」と読まれていましたが、やがて「ずさん」と読まれるようになりました。
なぜ「ずさん」と読むようになったのかはよくわかっていません。
「杜撰」の使い方
「杜撰」は以下のような言い回しで使われることが多いです。
- 杜撰な仕事
- 杜撰な管理
- 杜撰な対応
- 杜撰な計画
それぞれの言い回しについて、例文と一緒に見ていきましょう。
「杜撰な仕事」の使い方
「杜撰な仕事」は「いい加減で間違った部分が多い仕事」のことです。
上司などが部下の仕事のクオリティの低さを非難する時に使われることが多い言葉です。
ただ、自分自身の仕事を「杜撰」と表現して、反省の気持ちを表すこともあります。
- 君の杜撰な仕事のせいで、スケジュールが大幅に遅れてしまった。
- 私の杜撰な仕事で、大きな迷惑をかけてしまい、申し訳ありません。
「杜撰な管理」の使い方
「杜撰な管理」とは、「いい加減で甘い管理」のことです。
会社や部署全体の管理体制について非難する言葉です。
自社について「杜撰な管理」と表現して、反省の気持ちを表すこともあります。
- A社は杜撰な管理で顧客の個人情報を流出させてしまった。
- この度は弊社の杜撰な管理で多くの取引先にご迷惑をおかけしたこと、お詫び申し上げます。
「杜撰な対応」の使い方
「杜撰な対応」とは、「いい加減で雑な対応」のことです。
相手を非難する時に使うことが多いですが、自分に対して用いることもできます。
- 彼の杜撰な対応で、顧客からのクレームが殺到している。
- 私の杜撰な対応により、関係者に多大な迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。
「杜撰な計画」の使い方
「杜撰な計画」とは、「雑で成功確率が低い計画」のことです。
相手が立てた計画を非難する時に用いられることが多いです。
「杜撰」の類義語
「杜撰」には以下のような類義語があります。
- 粗雑(そざつ):細かいことまで注意が行き届かないこと
- 乱暴(らんぼう):物事のやり方が不当に荒々しいこと
- 乱雑(らんざつ):ばらばらに乱れてきちんとしてないこと
- 適当(てきとう):いい加減にやること
- 粗漏(そろう):大雑把なこと
- 疎放(そほう):やり方が大雑把で荒っぽいこと
- ぞんざい:取り扱いなどが丁寧でなく乱暴なこと
- アバウト:細部がいい加減で大雑把なこと
「杜撰」の対義語
「杜撰」には以下のような対義語があります。
- 緻密(ちみつ):細かいところまで行き届いていること
- 丁寧(ていねい):注意深く念入りであること
- 入念(にゅうねん):細部まで十分に注意すること
- 厳密(げんみつ):細かい点まで見落とさず厳しいさま
- 綿密(めんみつ):やり方が細かくて注意が行き届いていること
「杜撰」の英語訳
「杜撰」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- sloopy
(いいかげんな) - careless
(不注意な) - pisspoor
(全くダメな) - slovenly
(だらしのない) - slipshod
(だらしのない) - loose
(粗い)
まとめ
以上、この記事では「杜撰」について解説しました。
読み方 | 杜撰(ずさん) |
---|---|
意味 | 物事がいい加減で誤りが多いこと |
由来 | 杜黙の詩が定型詩の規則にほとんどあっていなかったことから |
類義語 | 粗雑、乱暴、乱雑など |
対義語 | 緻密、丁寧、入念など |
英語訳 | sloopy、careless、pisspoorなど |
「杜撰」の意味は想像通りだったのではないでしょうか。
これからは文字でも正しく表記していきたいですね。