「制作と製作って何が違うの?」
そう思っていませんか?
「制作」「製作」は読み方も、「何かを作る」という意味も同じです。
そのため、どう使い分けたら良いかわからない方も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事では、「制作」と「製作」の相違点や使い分けについて解説します。
このページの目次
結論:作るものの特徴と数が異なる
一方、「製作」は、実用的なものを、道具を使って大量に作る行為を指します。
「制作」と「製作」の違いを詳しく
上記でも述べたとおり、「制作」と「製作」には以下のような違いがあります。
つくる物の性質 | つくる物の数 | つくる手段 | |
---|---|---|---|
制作 | 芸術的 | ひとつ | 手作業 |
製作 | 実用的 | 大量 | 道具を使う |
たとえば、ピカソが描いた絵は「制作」ですし、工場で量産された机は「製作」になります。
「制作」と「製作」の違いは一見わかりやすいように感じますが、実はこの2つの言葉の違いはあいまいです。
職人がひとつひとつ手作りした皿は「制作」?「製作」?
たとえば、職人がひとつひとつ手作りした皿はどちらの言葉が当てはまるでしょうか。
「ひとつひとつ手作りしている」という点に着目すると、これは「制作」が当てはまるように感じます。
しかし、これがスーパーで食器として売られていたら、多くの人は「製作」が当てはまると感じるのではないでしょうか。
その皿が「実用的」で、同じものが多くあるもののうちのひとつだと考えられるからです。
このように、「実用的」か「芸術的」か、「ただひとつ」か「大量にあるもののうちひとつ」か、は捉え方によって異なるのです。
父が日曜大工で作った椅子は「制作」?「製作」?
次に、父が日曜大工で娘のために作った椅子について考えてみましょう。
この場合、椅子は実用的に使われるものですから、「製作」と捉えられます。
しかし、この椅子は手作業で作られたもので、ただひとつしかないものなので、「制作」とも捉えられそうです。
このように、「制作」と「製作」ははっきりと区別できる場合もありますが、区別が難しい場合もあります。
「制作」の意味と使い方を解説
「制作」とは、芸術的なものをただひとつだけ作ることを指します。
「制作」を構成する漢字の意味は以下のとおりです。
- 制:つくりあげる
- 作:つくる
「制作」は「つくる」という意味の2つの漢字を組み合わせてできた言葉なのです。
「制作」の例としては以下のようなものが挙げられます。
- 絵画
- 陶芸
- その他の芸術作品を作ること
- Web、新聞などの記事
- ウェブサイト
「制作」の例文
「制作」を使った例文には以下のようなものが挙げられます。
- 彼の卒業制作は木彫りのうさぎだった。
- 優秀なエンジニアがウェブサイトを制作してくれた。
- 彼が制作する絵画は世界中から高い評価を得ている。
「制作」の英語訳
「制作」を英語訳すると以下のような表現になります。
- produce
- create
- make
「製作」の意味と使い方を解説
「製作」は実用的なものを、道具を使って大量生産することを指します。
手作業ではなく、道具を使って作るため、作られるものは、どれも同じ規格になります。
「製作」を構成する漢字には以下のような意味があります。
- 製:こしらえる
- 作:つくる
なお、「製作」の例としては以下のようなものが挙げられます。
- 日用品
- 部品
- 器具の作成
作られたものはどれも、工場の機械で大量に生産されており、実用性をもっています。
ですから、「製作」の定義に当てはまっています。
「製作」の例文
「製作」を使った例文には以下のようなものが挙げられます。
- 彼は自動車の部品を製作する会社に就職した。
- この時計はスイスのメーカーが製作したものらしい。
- 弊社が新たに製作を始める商品は、性能が50%向上するらしい。
「製作」の英語訳
「製作」を英語訳にすると以下のような表現になります。
- manufacture
- produce
- make
【分野別】「制作」か「製作」か
ここからは、以下の分野で「制作」と「製作」がどのように使われるか見ていきましょう。
- 映画・アニメ・ドラマ|「制作」も「製作」も使う
- 本|「制作」も「製作」も使う
- 保育園・幼稚園|「製作」を使うのが慣習
- 小学校の図画工作|「製作」を用いる
- 中学・高校の美術|「制作」を用いる
- ハンドメイド|場合により異なる
- プログラム|発表会の場合は「制作」プログラミングで作るものは「製作」
映画・アニメ・ドラマ|「制作」も「製作」も使う
映画・アニメ・ドラマなどの映像作品では、「制作」も「製作」も使います。
脚本・撮影(作画)・音楽の部分は「制作」
映画・アニメ・ドラマでは、脚本を作ること、撮影すること(アニメの場合は作画をすること)、音楽を作ることの3つは「制作」といえます。
脚本の内容、スクリーンに映すもの、音楽の旋律は、どれもその作品にしかない独自性のあるものでなくてはならないからです。
また、魅力的な構図や音楽にするためには、芸術性も求められます。
映画・アニメ・ドラマで脚本、撮影(作画)、音楽を作る会社のことは「制作会社」と呼びます。
資金調達・宣伝の部分は「製作」
映画・アニメ・ドラマでは資金調達や宣伝を行う時には「製作」を使います。
予算やコマーシャルといった道具を使って、多くの人に映画を届ける作業ですから、これらは「製作」といえます。
映画・アニメ・ドラマを多くの人に届けるために、宣伝や資金調達を行う会社のことは「製作会社」と呼びます。
本|「制作」も「製作」も使う
本も、「制作」と「製作」の両方が関わってうまれるものです。
執筆する作業は「制作」
本を執筆する作業は「制作」です。
説得力や文学性がある文章を、手作業で書く作業ですから、「制作」の定義に当てはまりますね。
つまり、本では、作者が行う行為は基本的に「制作」になります。
印刷・刊行する作業は「製作」
作者が執筆した本を印刷・刊行する作業は「製作」と言います。
機械を用いて大量に本を作るからです。
つまり、本では出版社や印刷所が行う作業は基本的に「製作」です。
保育園・幼稚園|「製作」を使うのが慣習
保育園・幼稚園では工作などをすることを「せいさく」と呼びますが、これは「製作」という漢字をあてるのが慣習になっています。
工作では園児たちがそれぞれ「芸術的」で「手作業」で「ただひとつ」しかないものを作るので、本来は「制作」を使うのが正しいです。
しかし、幼稚園教諭の指導案やカリキュラムには、共通して「製作」と記載されているようです。
これは、保育園・幼稚園の工作では園児たちが先生の手本通りに作るからだと考えられます。
小学校の図画工作|「製作」を用いる
小学校の図画工作では「製作」を用います。
実際に、学習指導要領でも「製作」を用いてます。
中学・高校の美術|「制作」を用いる
一方、中学校・高校の美術では「制作」を使います。
ただ、中学校・高校でも家庭科・技術など、全員が手本通りに同じものを作る場合は「製作」が使われています。
ハンドメイド|場合により異なる
ハンドメイドは「制作」か「製作」か、場合により異なります。
芸術性が強い作品を作る場合は「制作」
ハンドメイドでは、芸術性が高い作品を作る場合は「制作」を使います。
たとえば、毎回デザインの異なるアクセサリーを作る場合には「制作」が適しています。
マニュアルに従って作る場合は「製作」
ハンドメイドでは、マニュアルに従って、毎回同じものを作る場合には「製作」を使います。
たとえば、同じデザインの帽子を繰り返し作っている場合には「製作」と言えます。
プログラム|発表会の場合は「制作」プログラミングで作るものは「製作」
「プログラム制作」は演奏会、発表会などの進行を載せたパンフレットを作ることを指します。
デザイナーなどが、パンフレットにデザインを施し、ただひとつのプログラムのパンフレットを作るからです。
一方、プログラミング言語を使って、コンピューターを動かすプログラムを作ることは「プログラム製作」と呼びます。
「作成」とは?
「作成」とは、文章や書類などをつくることを指します。
そのため、「制作」と言い換えられる場合もあります。
たとえば、「チラシを作成する」という文章は「チラシを制作する」と言い換えられます。
一方、「作成」はあくまで文章をつくることを指すので、「絵画を制作する」を「絵画を作成する」と言い換えることはできません。
「作製」とは?
「作製」は実用的な物や道具をつくることを指します。
そのため、「製作」とほぼ同じ意味です。
ただ、「作製」と「製作」には以下のような違いがあります。
- 作製:物や道具を小規模に作ること
- 製作:物や道具を大規模に作ること
「作製」と「製作」では規模が異なるのです。
「製造」とは?
「製造」とは原材料を加工して製品を作り出すことです。
「製作」と意味が似ていますが、2つの言葉には以下のような違いがあります。
- 製造:形あるものを作ること
- 製作:有形・無形に関わらず実用的なものを作ること
「製造」は「製作」と違って、形がないものを作る時には用いられないのです。
「製作」「制作」の同音異義語の意味
「製作」「制作」の主な同音異義語の意味は以下のとおりです。
- 政策:政府や政党などの施政上の方針
- 精索:血管、神経などを覆う3層になっている膜のこと
まとめ
以上、この記事では、「制作」と「製作」の違いについて解説しました。最後に、両者の相違点についておさらいしましょう。
- 制作:芸術的なものを、手を使って、1つだけ作る
- 製作:実用的なものを、道具を使って、大量に作る
「制作」と「製作」はどちらも、ものを作ることを指す言葉ですが、作るものの特徴や数に違いがあるのです。
私たちの生活は、たくさんのもので溢れています。
ひとつひとつを見て、それが「制作」されたものなのか、「製作」されたものなのか、考えてみるのもおもしろいですね。