今回ご紹介する言葉は、熟語の「態々(わざわざ)」です。
言葉の意味・使い方・注意点・語源・類義語・「業々」との違い・英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「態々」をざっくり言うと……
読み方 | 態々(わざわざ) |
---|---|
意味 | 特別に行うさま |
語源 | 古語の「態々し」から |
類義語 | 折角、手間を惜しまず、時間をかけて、など |
英語訳 | all the way(特別に、取り立てて)など |
このページの目次
「態々」の意味をスッキリ理解!
「態々」の意味を詳しく
「態々」とは、そのことのためにだけに、特別に行うさまを表す言葉です。
「何かのついで」に行うのではなく、「しなくてもよいことを、あえてする」というニュアンスがあります。
「態々」はポジティブな意味でもネガティブな意味でも用いられます。
そのため、相手に誤解されないよう、使い方には注意が必要な言葉です。
「態々」のポジティブな意味
「態々」には、しなくても良いのに行ってくれた相手の行為に対して感謝する時に用いられることが多いです。
たとえば、「態々ありがとうございます」は感謝の言葉として用いられます。
「態々」のネガティブな意味
「態々」は「余計なことをされた」という嫌味の意味で用いられることもあります。
相手の行為が自分にネガティブな影響を与えた時に用いられます。
「態々」の読み方
「態々」は「わざわざ」と読みます。
以下のような読み方は間違いなので注意が必要です。
- たいたい
- たいだい
- くまくま
❶と❷は「態」が音読みで「たい」と読むことから生まれた間違いだと考えられます。
確かに、「態度」「悪態」など、「態」は「たい」と読むのが普通なのですが、「態々」にした場合は例外的に訓読みで「わざわざ」と読むので注意が必要です。
また、「くまくま」は「熊(くま)」が「態」と似ていることから生まれた間違いだと考えられます。
「態々」の表記
「態々」は漢字で表記されることは少なく、「わざわざ」とひらがなで表記されるのがふつうです。
漢字では、「態態」と表記されることもあります。
「態々」は敬語?
「態々」は敬語ではありません。
しかし、敬語と一緒に使うことが多い言葉です。
特に、「態々」を相手がしてくれたことに関する感謝の意味で用いる場合はよく敬語と一緒に用います。
「態々しい」と形容詞のように使っている人をたまに見かけますが、これは誤用です。
「態々しい」という言葉は日本語には存在しません。
これはおそらく、「態(わざ)とらしい」と混同していると考えられます。
「態とらしい」は「いかにも意識していたようで不自然な様子」という意味です。
「態々」の使い方
「態々」の使い方についてポジティブな意味とネガティブな意味で分けて見ていきましょう。
ちなみに、「態々」はたいていポジティブな意味の言葉と一緒に使えばポジティブな意味になりますし、否定形やネガティブな言葉と一緒に使えばネガティブな意味になるので覚えておくと良いでしょう。
「態々」のポジティブな使い方
「態々」は相手が労を惜しまずにしてくれたことに対して、感謝する時に用いられます。
敬語表現と一緒に用いられることが非常に多いです。
ちなみに、否定形やネガティブな言葉と一緒に用いてしまうと、嫌味だと受け取られてしまう場合もあるので注意が必要です。
ポジティブな意味の言葉だけを用いれば、「態々」はポジティブな意味を表すことができます。
- 遠いところから、態々足を運んでいただき誠にありがとうございます。
- 忙しいところ、態々手伝っていただき申し訳ありません。
- 態々ご連絡いただかなくても大丈夫ですよ。
- 病気で寝込んでいたら態々友達が看病に来てくれた。
- 「態々届けに来てくれてありがとう!」
❶、❷の例文のように、「態々」は感謝や謝罪の敬語と一緒に用いられることが多いです。
先ほども解説しましたが、❸の例文では否定形が用いられているため、嫌味だと思われてしまう可能性があります。
ネガティブな意味で取られたくない場合は「態々ご連絡ありがとうございます」など感謝の言葉と一緒に用いると良いでしょう。
「態々」のネガティブな使い方
「態々」は「余計なことをする」「してくてもよいことをする」というネガティブな意味で用いられることもあります。
「態々」をネガティブな意味で使う時には、否定形やネガティブな言葉と一緒に用いることが多いです。
- 態々みんなに聞こえるように叱られた。
- そんなことを言うために態々来たのだろうか。
- 苦手な人に態々近づく必要はない。
「態々」を使う時の注意点
「態々」を使う時には以下のような注意点に気をつけましょう。
- ひらがなで表記する
- 嫌味な意味にもなることに気をつける
- 自分の行動には使わない
注意点①:ひらがなで表記する
「態々」は漢字で表記するのではなく、「わざわざ」とひらがなで表記しましょう。
「態々」は漢字にすると読めない方が多いからです。
注意点②:嫌味な意味にもなることに気をつける
「態々」は使い方によっては嫌味として受け取られてしまう場合もあるので注意が必要です。
「態々」をネガティブな意味で受け取られないようにするためには、「ありがとうございます」など感謝の言葉と一緒に用いると良いでしょう。
注意点③:自分の行動には使わない
「態々」は自分の行動に用いると恩着せがましい言い方になってしまうので注意が必要です。
たとえば、「態々2時間かけてここまで来ました」と言うと、「大変だったんだぞ」という傲慢なニュアンスになってしまいます。
「態々」の語源
「態々」は、「態々し(わざわざし)」という古語に由来するとされています。
「態々し」には、「しなくてもよいことをするさま」という意味があり、本来はネガティブな意味合いだったと考えられています。
その後、時代を経て「労を惜しまずに、特別に行うさま」というポジティブなニュアンスが加わっていったとされています。
現代においては「態々し」と言っても意味が通じないことがほとんどです。
「態々」の類義語
「態々」にはタイプ別に以下のような類義語があります。
- 労力(ろうりょく)をかけて:時間や手間がかかっている様子
- 汗水(あせみず)たらして:大量の汗をかいている様子
- 遠路(えんろ)はるばる:長い距離を苦労を押して移動する様子
- 骨折(ほねお)って:努力して
- 折角(せっかく):めったになく、大切であること
- 時間(じかん)をかけて:あることを行う際に、ある程度長い時間を使うさま
- 手間(てま)を惜(お)しまず:労力や時間を費やすさま
- 意識的(いしきてき)に:自分でわかっていてわざとやっていること
- 意図的(いとてき)に:ある目的を持ってわざと行うこと
- わざと:意識して何かすること
- 図(はか)って:くわだてる
- 企図(きと)して:あることをくわだてること
- あえて:進んで、わざと
- 故意(こい)に:わざとすること
- 殊更(ことさら)に:考えがあってあえて行うこと
「態々」と「業々」の違い
「業々(わざわざ)」は「ついでではなく、特にそのためだけに行うこと」という意味の言葉です。
もともとは「げふげふ」と読み、室町時代まで一般的に用いられていた言葉です。
現在ではあまり使われることがない言葉です。
「態々」と「業々」には以下のような違いがあります。
- 態々:ポジティブな意味でもネガティブな意味でも用いる
- 業々:ポジティブな意味でのみ用いる
「業々」はネガティブな意味で用いられることはないのです。
「態々」の英語訳
「態々」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- all the way
(特別に、取り立てて) - purposely
(わざと、故意に) - deliberately
(あえて) - take the trouble to do
(労を取る) - specially
(特に) - expressly
(明らかに) - especially
(特に)
「態々」の英語訳は、一般的に副詞や形容詞として表現されます。
まとめ
以上、この記事では「態々」について解説しました。
読み方 | 態々(わざわざ) |
---|---|
意味 | 特別に行うさま |
語源 | 古語の「態々し」から |
類義語 | 折角、手間を惜しまず、時間をかけて、など |
英語訳 | all the way(特別に、取り立てて)など |
「態々」は文脈や状況によってニュアンスが異なる言葉であり、また漢字よりも、ひらがなで「わざわざ」と表記される方が一般的です。
この機会に、意味や使い方をしっかり確認しておきましょう。