「つるべ落とし」には、「秋は日が暮れるのが早いということ」「物の相場(そうば)が急落すること」「人を食べる妖怪」という3つの意味があります。
「つるべ落とし」は、字面から意味が予想しづらいため、「どのようなときに使うのだろう」と気になる人が多いのではないでしょうか。
この記事では、「つるべ落とし」の3つの意味や例文、由来などについて詳しく解説します。
☆「つるべ落とし」をざっくり言うと……
読み方 | つるべ落とし(おとし) |
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意味 | 秋は日が暮れるのが早いということ 物の相場(そうば)が急落すること 人を食べる妖怪 |
由来 | 井戸のなかに釣瓶が速く落ちていく様子から |
類義語 | 秋の日の鉈落とし |
対義語 | 鰻上り 青天井 |
英語訳 | Autumn dusk comes without warning. (秋の日はつるべ落とし) a sharp fall in prices (価格の急落) など |
このページの目次
「つるべ落とし」の意味
- 秋は日が暮れるのが早いということ
- 物の相場が急落すること
- 人を食べる妖怪
「つるべ落とし」には、上記3つの意味があります。
なお、「つるべ落とし」は「釣瓶落とし」と書くことも多いです。
「釣瓶」を「鶴瓶」と書き間違えないようにしましょう。
ここからは、「つるべ落とし」のそれぞれの意味を詳しく解説します。
意味①秋は日が暮れるのが早いということ
「つるべ落とし」の1つ目の意味は、「秋は日が暮れるのが早いということ」です。
四季のなかで、最も早く日が暮れる季節は秋です。
そのため、「秋は、日没までの時間が非常に短い」ということをたとえる言葉が、「つるべ落とし」なのです。
- 春〜夏:遅い
- 夏〜秋:早い
このように、夏から秋にかけて、日没の速度は早くなります。
特に11月は、16時30分には太陽が沈みます。
6月の日没が19時ごろであることをふまえると、秋はとても早く日が沈むことがわかります。
意味②物の相場が急落すること
「つるべ落とし」の2つ目の意味は、「相場が急落すること」です。
特に、「株価がどこまでも落ちていく様子」を指すときに使います。
ただし、現実的には、物の相場がずっと下がり続けるという現象は、まずありえません。
なぜなら、相場は常に上がったり下がったりするものだからです。
意味③人を食べる妖怪
「つるべ落とし」の3つ目の意味は、「人を食べる妖怪」というものです。
その習性については、様々な説があります。
- 生首の姿で、木の上から突然落ち来て、人間を食べる
- 縄の先に容器をつけて落とし、人間を釣り上げて食べる
「つるべ落とし」は、近畿地方・東海地方において、人々から恐れられてきました。
具体的には、以下のような地域で伝わる妖怪です。
- 京都府
- 滋賀県
- 岐阜県
- 愛知県
- 和歌山県
水木しげる原作の漫画『ゲゲゲの鬼太郎』で、「つるべ落とし」というキャラクターが登場したことをきっかけに、全国的に知られるようになりました。
「つるべ落とし」の使い方
「つるべ落とし」のそれぞれの意味に分けて、具体的な使い方を見てみましょう。
- 秋は日が暮れるのが早いということ
- 相場などが急落すること
- 人を食べる妖怪
使い方①秋は日が暮れるのが早いということ
「秋は日が暮れるのが早いということ」という意味で「つるべ落とし」を使うときは、「秋の日はつるべ落とし」という形で用いることがほとんどです。
- 秋の日はつるべ落としだね。外はもう真っ暗だ。
- 秋の日はつるべ落としなので、帰り道には気をつけてください。
- 秋の日はつるべ落としだから、日が沈むのをいつも見逃してしまう。
「秋の日はつるべ落とし」という言い回しは、一種のことわざや慣用句として定着しています。
「秋の日はつるべ落とし」は、「日にちがあっとういまに経つ」という意味ではありません。
ここでの「日」は「日の入り」を指しており、「日にち、日数」を表しているわけではないからです。
× 秋の日はつるべ落としで、あっという間に冬になろうとしている。
× 秋の日はつるべ落としで、12月に突入した。
季語として使う場合
「秋は日が暮れるのが早い」という意味での「つるべ落とし」は、俳句の季語として使うことも多いです。
- 時計塔 鳴り出で 釣瓶落しかな
和田 敏子(わだ としこ) - ビニールハウス つるべ落しの 日をはじく
阿波野 青畝(あわの せいほ) - つるべ落し 反動のごと 月上がり
宮津 昭彦(みやつ あきひこ) - 書庫梯子(しょこはしご) 降りずに釣瓶落しかな
能村 研三(のむら けんぞう)
なお、別の意味合いで「つるべ落とし」が使われる例もあります。
たとえば、次の俳句では、70歳になったとたん、あっと言う間に離婚することになったことを表しています。
文挟 夫佐恵(ふばさみ ふさえ)
「つるべ落とし」は6文字です。そのため、「つるべ落とし」という言葉を単独で使うと、5・7・5のかたちに当てはまりませんが、秋を表す季語として人気の言葉です。
また、「つるべ落としの」などと言葉を加えると、7文字になるため、より俳句に使いやすくなります。
使い方②相場などが急落すること
「相場などが急落すること」という意味での「つるべ落とし」は、以下のように使うことができます。
- 今日の株価の動きは、つるべ落としだ。
- いま、世界の石油価格がつるべ落としになっている。
- 当時、その商品の価格はつるべ落としだった。
使い方③人を食べる妖怪
「人を食べる妖怪」という意味での「つるべ落とし」は、以下のように使うことができます。
- この井戸には、つるべ落としがいるらしい。
- その古文書は、つるべ落としの伝説について書かれている。
- 悪いことをしていたら、つるべ落としがやってくるよ。いい子にしなさい。
「つるべ落とし」の由来
「つるべ落とし」の意味は、釣瓶(つるべ)が井戸のなかに速く落ちる様子に由来します。
釣瓶とは、井戸から水を汲み上げるために使う桶(おけ)のことです。
釣瓶で水を汲む際は、以下のような作業が行われます。
- 釣瓶に縄をつける
- その縄を滑車にかける
- 滑車を使って、釣瓶を井戸のなかに落とす
- 滑車にかけた縄をたぐって、水が入った釣瓶を上げていく
井戸の水を汲みあげるとき、釣瓶は、井戸の底に真っ逆さまに落ちます。
この「速く落ちていく様子」が、「つるべ落とし」の1つ目の意味「秋は日が暮れるのが早いということ」につながっているのです。
「秋は日が暮れるのが早い」という意味が、さらに2つ目の「物の相場が急落する」という意味に派生しました。
妖怪「つるべ落とし」の名前は、人間を釣り上げて食べるという習性が、釣瓶を引き上げる作業に似ていることと関係しています。
「つるべ落とし」の類義語
「つるべ落とし」には以下のような類義語があります。
- 秋の日の鉈(なた)落とし
秋は日が暮れるのが早いということ - 急降下(きゅうこうか)
数値や値段がなどが急激に下がること
「秋の日の鉈落とし」は、「秋は日没が早い」という意味での「つるべ落とし」の類義語です。
また、「急降下」は、「物の相場が急落する」という意味での「つるべ落とし」の類義語です。
「つるべ落とし」の対義語
「つるべ落とし」には以下のような対義語があります。
- 鰻上り(うなぎのぼり)
物の相場などが、何かをきっかけに急に上がること
※「鰻登り」とも書く - 青天井(あおてんじょう)
物の相場がどこまでも上がること
※青空を指すこともある - 急上昇(きゅうじょうしょう)
数値や値段がなどが急激に上がること
これらの言葉は、「物の相場が急落する」という意味での「つるべ落とし」の類義語です。
「つるべ落とし」の英語訳
「つるべ落とし」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- Autumn dusk comes without warning.
(秋の日はつるべ落とし) - The sun sets very fast in autumn.
(秋の日はつるべ落とし) - a sharp fall in prices
(価格の急落)
補足:つるべ落としの滝
日本には、「つるべ落としの滝」という滝があります。
静岡県の駿東郡(すんとうぐん)長泉町(ながいずみちょう)にある、高さ20mほどの滝です。
[出典:伊豆半島ジオパーク]
「つるべ落としの滝」には「幻の滝」という別名があります。
水が流れない時期もあり、滝を見ることができる時期が限られているからです。
「つるべ落としの滝」は、地元のハイキングコースに組み込まれてて、観光地としても有名です。
滝に至るまでの道では、古い火山の溶岩を見ることができます。
「つるべ落とし」のまとめ
以上、この記事では「つるべ落とし」について解説しました。
読み方 | つるべ落とし(おとし) |
---|---|
意味 | 秋は日が暮れるのが早いということ 物の相場(そうば)が急落すること 人を食べる妖怪 |
由来 | 井戸のなかに釣瓶が速く落ちていく様子から |
類義語 | 秋の日の鉈落とし |
対義語 | 鰻上り 青天井 |
英語訳 | Autumn dusk comes without warning. (秋の日はつるべ落とし) a sharp fall in prices (価格の急落) など |
気候に関する会話をする機会は、日常生活のなかで多いのではないでしょうか。
「秋は日が短いですね」と言いたいとき、「秋の日はつるべ落とし」という表現を使ってみると、いつもと違う印象を残すことができます。
「相場が急落する」「人を食べる妖怪」という意味も、これを機にしっかり覚えましょう。