今回ご紹介する言葉は、ことわざの「高みの見物(たかみのけんぶつ)」です。
言葉の意味や使い方、由来、類義語、英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「高みの見物」をざっくり言うと……
読み方 | 高みの見物(たかみのけんぶつ) |
---|---|
意味 | 自分には直接関係の無い立場で、物事の成り行きを気楽に見ること |
由来 | 周囲の高いところで、下の方で騒いでいる人を、第三者の立場で、気楽に興味本位で眺める様子から |
類義語 | 山門から喧嘩見る、対岸の火事、川向こうの火事など |
英語訳 | To see it rain is better than to be in it. (雨が降るのを見るのは、雨の中にいるよりも良い。) |
このページの目次
「高みの見物」の意味をスッキリ理解!
「高みの見物」の意味を詳しく
「高みの見物」とは、自分には直接関係の無い物事の成り行きを、気楽に見ることを意味することわざです。
普段生活する中で、自分には直接関係の無い物事は数多く存在すると思います。それを全て自分ごととして捉えることはさすがにどんな人でもできないでしょう。
例えば、電車でカップルが痴話喧嘩(ちわげんか、男女間の愛情のもつれが原因で起こるたわいもない喧嘩)をしていたとします。この喧嘩が、周りに大きな迷惑を掛けるような大声での喧嘩であれば話は別です。
しかし、周りに気を使いながら小さな声での痴話喧嘩だとしたらどうでしょうか。
おそらく、多くの人は自分に迷惑が掛かっているわけでも無いので、非常に気楽な立場からその様子を見たり聞いたりすることができるでしょう。中には、その内容を興味本位で聞く人もいるでしょう。
このようなことを、「高みの見物」と言います。ポイントは、「自分には直接関係が無い」「気楽に見ることができる」点にあります。また、前述したような、興味本位に見たり聞いたりするというニュアンスを含むこともあります。
また、最近では自分よりも劣っていると思われる人を見下すことを「高みの見物」と言うこともあります。ネットで多く使われることが多いですが、誤った使い方ではありません。
自分は上の立場にいて、下にいる者を自分には直接関係の無い第三者の立場で見ていられるという点で、正しい使い方ではあるのです。実際の使い方は、後ほどご紹介します。
「高みの見物」の使い方
- 変なトラブルに巻き込まれたくもないので、ここは高みの見物といこう。
- 自分の出番は終わった。残りの演技を高みの見物するとしよう。
- A社の経営破綻(はたん)は自社にも影響を及ぼす可能性があり、高みの見物とはいられない。
- ○○大学に在籍する身として、△△大学と□□大学のどちらが上かという議論は高みの見物だ。
➀は、起きているトラブルが自分に直接関係の無いものなので、あえて第三者として気楽な立場でいようとする例文です。
➁は、自分の出番が終わり、気楽な立場となった途端に、他の演技を興味本位で見ようとする場面です。
➂は、他社の経営破綻が他人ごとではなく、自分達に直接関係するかもしれないということで、「高みの見物」をしていられないという場面です。
➃は、ネットでよく見られる、上の立場にいると考えられる人が、下にいると考えられる人を見下す意図で「高みの見物」を使っている場面です。○○大学のその人は、議論には直接関係が無いため、両者とも見下した目で見ています。
「高みの見物」の由来
周囲の高いところから、下の方で騒いでいる人を、第三者の立場で、気楽に興味本位で眺める様子から来ています。
「高み」とは、周囲よりも高いところを指します。「高見」ではありませんので注意が必要です。
ちなみに、「高み」のように形容詞の語幹(どのような使われ方をしても変化しない部分)に、「み」を付けることで、「状態を表す名詞」になります。「深い」は「深み」、「甘い」は「甘み」、「強い」は「強み」などです。
「高みの見物」の類義語
「高みの見物」には以下のような類義語があります。
- 山門から喧嘩見る(さんもんからけんかみる): 事件とは関係のない安全なところから、事のなりゆきを興味本位で見物すること
- 対岸の火事(たいがんのかじ):自分に何の関係もないので、痛くも痒くもないということ
- 川向こうの火事:「対岸の火事」と同義
- 川向かいの喧嘩:「対岸の火事」と同義
- 向こう河岸の火事:「対岸の火事」と同義
「高みの見物」と「対岸の火事」の違いは、「見るか見ないか」です。
「対岸の火事」は、ただ自分には関係の無いものだと思うことだけを表します。しかし、「高みの見物」は、自分には直接関係の無いものを興味本位で気楽に見るということを表します。
「高みの見物」の方が少しねじ曲がっていたり、悪質なものと捉えられる場合もあります。
「高みの見物」の英語訳
「高みの見物」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- To see it rain is better than to be in it.
(雨が降るのを見るのは、雨の中にいるよりも良い。) - stand by idly
(何もしないで傍観する) - look on with folded arms
(腕を組んで傍観する)
“stand by idly” と、 “look on with folded arms” は動詞なので、主語をともなって使います。
“idly” は「何もしない」という意味を表す形容詞 “idle” の副詞です。
まとめ
以上、この記事では「高みの見物」について解説しました。
読み方 | 高みの見物(たかみのけんぶつ) |
---|---|
意味 | 自分には直接関係の無い立場で、物事の成り行きを気楽に見ること |
由来 | 周囲の高いところで、下の方で騒いでいる人を、第三者の立場で、気楽に興味本位で眺める様子から |
類義語 | 山門から喧嘩見る、対岸の火事、川向こうの火事など |
英語訳 | To see it rain is better than to be in it. (雨が降るのを見るのは、雨の中にいるよりも良い。) |
自分には直接関係の無いことを気楽に見ることは、あまりよくないと言わざるを得ない場面も数多くあります。
特にネットで使われているような、見下すような使い方は、倫理的にあまり好ましくありません。そういったところにも気を付けてことわざは使いたいものです。