今回ご紹介する言葉は、熟語の「正念場(しょうねんば)」です。
言葉の意味、使い方、語源、類義語、英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「正念場」をざっくり言うと……
読み方 | 正念場(しょうねんば) |
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意味 | ここぞという大事な場面のこと |
語源 | 仏教用語の「正念」から、正しい心が必要な場面のこと |
類義語 | 山場、大一番、土壇場など |
英語訳 | crunch time(試練の時) |
「正念場」の意味をスッキリ理解!
「正念場」の意味を詳しく
「正念場」とは、ここぞという大事な場面を意味する熟語です。「ここぞ」とは、勝負事や仕事などの流れの中で、その展開に重要な影響を及ぼす箇所のことです。
勝負事には勝ちと敗け、仕事には成功と失敗という最終的な結果があります。その結果に重要な影響を与える局面が、勝負事や仕事においては多く存在します。
理解をより深めていただくために、まずはサッカーを例にとります。後半の途中まで1-0で勝っていたものの、自分のチームの選手が一人レッドカードで退場し、相手より一人少ない状況になったとします。
途中まで勝っていたそのチームは、一人少ない状況で残りの時間、失点せずに試合を終えなければなりません。この局面は、まさに勝敗という最終的な結果に大きな影響を及ぼす、重要な局面と言うことができます。
次に、仕事を例にとります。あるプロジェクトを進める中で、取引先とトラブルを起こしてしまったとします。仕事を完遂するためには、そのトラブルをどうにかして乗り越える必要があります。
この局面はまさに、このプロジェクトが成功するか失敗するかに直結する重要な局面と言えます。
また、後ほど「語源」の箇所で詳しく解説しますが、「正念場」にはもう一つ別の意味が存在します。それは、歌舞伎や浄瑠璃(じょうるり)などでの最も大切な見せ場という意味です。
こちらの意味は、一般的にはあまり使わないものではありますが、本来の意味はこちらでした。
「正念場」の使い方
- ここからは傾斜のきつい上り坂での走りだ。レースはまさに正念場を迎えている。
- 次の相手は一度も勝ったことの無いチームだ。この試合は優勝のための正念場と言えよう。
- 今回の取引先へのプレゼンは、このプロジェクトを成功に導くための正念場だ。
「正念場」の語源
「正念場」は、仏教用語である「正念」と、場面を表す「場」が合わさってできた言葉です。
仏教では、悟りを開くために必要とされる八つの徳目が定められており、それを「八正道(はっしょうどう)」と言います。徳目とは、人間が持つべき優れた品性を項目化したもののことです。「正念」は、その八正道の中の一つです。その字の通り、「正しい心」を意味します。
仏教における正しい心とは、邪念を捨てて、仏道を念ずることによって真理に至ろうとする心を保つことを表します。
これらが転じて、正しい心が必要な重要な場面のことを「正念場」と呼ぶことになりました。
「正念場」は最初、歌舞伎や浄瑠璃などで「主人公の役柄を発揮するような重要な場面」に対して使われていました。この意味では「性根場(しょうねば)」と表すこともあります。
その後、意味がより一般化して「ここぞという重要な場面」に対しても使われるようになり、現在ではそちらが主流です。
「正念場」の類義語
「正念場」には以下のような類義語があります。
- 山場(やまば):物事の最も重要で緊迫した場面。
- 大一番(おおいちばん):スポーツなどで優勝を左右するような重要な試合
- 土壇場(どたんば):物事が決定しそうな最後の瞬間や場面
- 踏ん張りどころ:頑張って乗り越える重要な場面
- 崖(がけ)っぷち:後に引くことができない、追い込まれた状況
「正念場」の英語訳
「正念場」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- crunch time
(試練の時) - the crucial time
(重要な時) - the moment of truth
(決着の時)
まとめ
以上、この記事では「正念場」について解説しました。
読み方 | 正念場(しょうねんば) |
---|---|
意味 | ここぞという大事な場面のこと |
語源 | 仏教用語の「正念」から、正しい心が必要な場面のこと |
類義語 | 山場、大一番、土壇場など |
英語訳 | crunch time(試練の時) |
「正念場」の意味や使い方など、理解することはできたでしょうか。
一般的にも使われることの多い言葉ではありますが、漢字と意味があまり繋がっていないことを疑問に思っていた方も多かったのではないでしょうか。しかし、元々は仏教用語であることを知ると納得できますね。
ぜひ、語源から覚えて、歌舞伎などの演劇でも使われる言葉であることまで知っておきたいですね。