「酔生夢死」の意味とは?使い方から英語や類義語まで例文付きで解説

言葉

今回ご紹介する言葉は、四字熟語の「酔生夢死(すいせいむし)」です。

言葉の意味・使い方・由来・類義語・英語訳について分かりやすく解説します。

☆「酔生夢死」をざっくり言うと……

読み方酔生夢死(すいせいむし)
意味無意味に一生を送ること
由来程顥の「程子語録」
類義語飽食終日、無為徒食、走尸行肉、遊生夢死
英語訳like a lotus eater(夢想家のように), like a couch potato(怠け者のように), lazybones(怠け者), hedonism(快楽主義)

「酔生夢死」の意味をスッキリ理解!

酔生夢死(すいせいむし):無意味に一生を送ること

「酔生夢死」の意味を詳しく

酔生夢死は、「快楽に身を任せて生きた結果、何を残すこともなく死んでいくこと」を表す四字熟語です。

酔生とは、「酔ったように生きること」を示します。また、夢死は「夢のように儚く(はかなく)死ぬ」ことです。

 

では、「酔ったように生きる」とはどういうことなのでしょうか。

 

「酔い」とは、ただ「酒に酔っている」ことだけではありません。

酔生夢死の「酔い」は、「欲に酔う」ことを意味します。この場合の欲とは、食欲やお金への欲、異性への欲情や名誉欲など、人間が持つあらゆる欲のことです。つまり、「お酒に酔ってぼんやりと生きる」といったような、人間の欲に忠実に生きることが、「欲に酔う」ということなのです。

欲のまま本能のまま生きることは必ずしも悪いことではありません。しかし、「今さえ楽しければ良い」という欲に忠実な生き方は、計画的な生き方とは言えないこともまた事実です。

 

「人生の意味とは、何か1つ大きな目標を達成することである」という仏教的な考えがあります。一般論として、大きな目標の達成には計画性が必要です。

つまり、「酔ったように生きる」とは、計画性のないゆえに、欲に忠実な生き方を続けることで、人生の「目標」に達成することができないということです。その結果として、何も残すことなく夢のように儚く死ぬことが、酔生夢死という言葉の意味だと言えます。

また、上のように酔生夢死は仏教の世界において戒め(いましめ)の意味で使われることの多い言葉です。

「酔生夢死」の使い方

  1. フリーターのままの生活では酔生夢死になると思い、一念発起して正社員を目指した。
  2. 酔生夢死になると言われようが、僕は音楽の道を突き進むことにした。

「酔生夢死」の由来

酔生夢死は、中国の北宋時代(ほくそう)に活躍した程顥(ていこう)という儒学者(じゅがくしゃ)の言葉を由来に持ちます。

程顥は「程子語録(ていしごろく)」のなかで、「雖高才明智、膠於見聞、酔生夢死、不自覚也」という言葉を残しています。

この言葉を訳すと、「どれだけ才能あり、頭が良くても見たり聞いたりにとらわれたままでは、無自覚のままに何も残さず死んでいってしまう」という意味になります。

この言葉をきっかけに酔生夢死は広く使われるようになりました。

「酔生夢死」の類義語

酔生夢死には以下のような類義語があります。

  • 飽食終日(ほうしょくしゅうじつ):ご飯を食べること以外何もせず、無駄に1日を過ごすこと
  • 無為徒食(むいとしょく):何もせずただ適当に過ごすこと
  • 走尸行肉(そうしこうにく):生きていても何も立たないと言われる人間のこと
  • 遊生夢死(ゆうせいむし):何か成し遂げることもなくぼんやり生きて、儚く死ぬこと

飽食終日は、本来「1日が終わるほど飽きるくらいご飯を食べる」という意味でした。この意味から発展し、「食事以外何もせず無駄に過ごす」という意味を示すようになります。

無為徒食は2つの言葉に分けることができます。「無為」とは、「何もしないこと」を意味します。「徒食」とは、「働かずに食べる」ということです。

また、走尸行肉とは、「走る尸(しかばね)と歩く肉」という意味が原義です。そこから現在の意味に変わっていきました。

「酔生夢死」の英語訳

酔生夢死を英語に訳すと、次のような表現になります。

  • like a lotus-eater
    (夢想家のように)
  • like a couch potato
    (怠け者のように)
  • lazybones
    (怠け者)
  • hedonism
    (快楽主義)

lotus-eater とは、現実世界から離れ、夢だけを追い続けている人のことを意味します。
lotus とは、ギリシア神話のロートスの実のことを意味します。

ギリシア神話ではロートスの実を食べることによって、俗世間の苦しみを忘れ、楽しい夢を見させてくれるとされています。

lotus-eater はこの「ロートスの実を食べた人間」という意味が原義です。ここから転じて、「夢想家」「夢追い人」など、現実よりも夢に没頭してしまっている人のことを示すようになりました。

また、一般的に lotus の日本語訳とされる「蓮の葉」という意味ではないことに注意する必要があります。

 

couch potato は、2つの言葉に分けることができます。 “couch” はソファーなどの椅子のことを意味します。また、 “potato” はジャガイモのことです。

この2語が組み合わさり、「ソファーに座り、ジャガイモのようにゴロゴロとして、テレビばかり見ている人」という意味で用いられます。ここから転じて、「怠け者」と訳されます。

 

また、 hedonism とは快楽主義のことを意味します。快楽主義とは、「苦痛をさけ、自分にとってもっとも楽しい、快楽的な生き方を追求することが人生の究極的な目標である」という考え方のことを意味する、倫理学(りんりがく)上の言葉です。

酔生夢死は、欲や快楽に忠実であり続けることに対し否定的な考え方であるため、hedonism は酔生夢死の対義語ということができます。

まとめ

以上、この記事では「酔生夢死」について解説しました。

読み方酔生夢死(すいせいむし)
意味無意味に一生を送ること
由来程顥の「程子語録」
類義語飽食終日、無為徒食、走尸行肉、遊生夢死
英語訳like a lotus eater(夢想家のように), like a couch potato(怠け者のように), lazybones(怠け者), hedonism(快楽主義)

自分の欲に忠実に生きることは必ずしも悪いことではありません。また、かといって「人生の目標」を追求する生き方が悪いわけでもありません。

どちらにもいいところがあり、悪い部分があります。両方のいいところを見つけ、うまく盗むことができればより良い生き方ができるのではないでしょうか。