ことわざ「据え膳」の意味とは?読み方は?類語から使い方まで解説

言葉

据え膳とは食膳を人の前に据えること」「人を働かせ、自分は何もしないでいること」「女性のからの誘い」という意味です。

言葉の意味をなんとなく知っていても、据え膳を使った熟語の理解や英語訳があやふやな人も多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では、据え膳を使った熟語や据え膳の類義語、英語訳などについて詳しく解説します。

☆「据え膳」をざっくり言うと……

読み方据え膳(すえぜん)
意味食膳を人の前に据えること
人を働かせ、自分は何もしないでいること
女性のからの誘い
類義語至れり尽くせり
おんぶにだっこ
何から何まで など
対義語上げ膳
独立独歩
自給自足 など
英語訳leave nothing to be desired(至れり尽くせり)
more than satisfactory(至れり尽くせり)
give a royal welcome(盛大に歓迎する) など

「据え膳」の意味

ぜん

  1. 食膳を人の前に据えること
  2. 人を働かせ、自分は何もしないでいること
  3. 女性のからの誘い

据え膳には三つの意味があります。

ひとつ目の意味は「食膳を人の前に据えること」です。

二つ目の意味は「人を働かせ、自分は何もしないでいること」です。

三つ目の意味は「女性のからの誘い」です。

それぞれの意味について解説していきます。

「食膳を人の前に据えること」の意味

据え膳には「食膳を人の前に据えること」という意味があります。

食膳とは、一人前として用意された料理のことです。

この意味の据え膳は、すっかり準備されてあとは手をつけるだけになっている食膳のことを指します。

 

「据え膳を断る」というように使います。きちんとした食事を用意してくれるにもかかわらず、それを断るという意味です。

旅館などに宿泊した際、外で食事をしたい場面で使います。

「人を働かせ、自分は何もしないでいること」の意味

据え膳には「人を働かせ、自分は何もしないでいること」という意味があります。

据え膳の「食膳を用意させる」というニュアンスから、「人を働かせ、自分は何もしないでいること」という意味が生まれました。

 

「私の夫は上げ膳に据え膳だ」というように使います。

家事や身の回りのことを、すべて他人に任せきりにしているという意味です。

食事の用意や出かけるときのしたくなどを、誰かに丸投げしている状況を指します。

「女性のからの誘い」の意味

据え膳には「女性のからの誘い」という意味があります。

据え膳の「手を付けるだけ」というニュアンスから、「女性のからの誘い」という意味が生まれました。

「据え膳に手をつけない意気地なし」というように使います。

「据え膳」を使った慣用句

  • 据え膳食わぬは男の恥
    女性の誘いを受けないことは男の恥であるということ
  • 据え膳と河豚(ふぐ)汁を食わぬは男の内ではない
    女性の誘惑に応じないのは男として恥であること
  • 上げ膳据え膳
    すべて人にやってもらうこと

「据え膳食わぬは男の恥」「据え膳と河豚(ふぐ)汁を食わぬは男の内ではない」の意味は同じです。

「据え膳食わぬは男の恥」は、ビジネスシーンではあまり使われない言葉です。

また、英語では “It is time to set in when the oven comes to the dough.” (かまどの方がパン生地の所へやってきたら、パン生地をかまどに入れてやる時だ)と表現します。

「上げ膳据え膳」の上げ膳は食事の済んだ膳を下げること、「据え膳」は食膳を人の前に整えることです。

「据え膳」の誤用

据え膳を使った慣用句に「据え膳食わねど高楊枝」というものがあります。

これは、「据え膳食わぬは男の恥」と「武士は食わねど高楊枝」が混ざった言葉であるため誤用です。

「武士は食わねど高楊枝」の意味は、「見栄をはること」「やせ我慢すること」です。

武士が貧しくて空腹でも楊枝を口にくわえ、さも満腹であるかのように見せたことが由来です。

「据え膳と河豚汁を食わぬは男の内ではない」の由来

「据え膳と河豚汁を食わぬは男の内ではない」は、人形浄瑠璃の「夏祭浪花鑑(なつまつり なにわ かがみ)」が由来となっています。

この物語の一節に「据え膳と河豚汁を食わぬは男のうちではない」というセリフが出てくるのです。

これには、「フグの毒を怖がってフグを食べない男は、意気地なしである」というニュアンスが含まれています。

よって、「据え膳と河豚汁を食わぬは男の内ではない」は、「女性の誘いやフグを食べることを拒否する男は臆病である」という意味になります。

「据え膳」の使い方

据え膳は以下のような言い回しでよく使われます。

  • 据え膳食わぬは男の恥
  • 上げ膳据え膳

据え膳を使った具体的な例文は以下のとおりです。

  1. 据え膳食わぬは男の恥とは、まさにこのことだ。
  2. 奥手な彼は、据え膳に見向きもしなかった。
  3. 上げ膳据え膳の父は、母が入院したときに苦労した。

「据え膳」の類義語

据え膳には以下のような類義語があります。

  • 至(いた)れり尽(つ)くせり
    もてなしが何から何まで行き届いていること
  • 下にも置かない
    非常に丁重に扱うこと
  • 丁重なもてなし
    丁寧な振る舞い
  • サポート
    支えること
  • バックアップ
    支援すること
  • 何から何まで
    何もかも。すべて。
  • 人任せ
    自分のことを自分でしないで、すっかり他人にさせること
  • 丸投げ
    人任せにすること
  • 他力本願(たりきほんがん)
    他人に頼って物事をしようとすること
  • おんぶに抱っこ
    他人に頼り切ること
  • 責任放棄(せきにんほうき)
    責任を避けようとすること
  • 無責任
    自分の言動に責任をもつという態度が無いこと
  • 他人任せ
    他の人にまかせてやってもらうこと
  • 神風主義(かみかぜしゅぎ)
    自分では何もせずに、他人の行動に任せること
  • 依存(いぞん)
    他のものによりかかり、それによって成り立つこと
  • 頼りきり
    他者をあてにして依存している様子

「据え膳」の対義語

据え膳には以下のような対義語があります。

  • 上げ膳
    済んだ膳を下げること
  • 独立独歩(どくりつどっぽ)
    他に頼らずに実行すること
  • 自給自足(じきゅうじそく)
    自分に必要な物資を自らの生産だけでまかなうこと
  • 自立
    自分以外のものの助けなしで、物事をやっていくこと
  • 独り立ち
    他の助力なしに、自分だけの力でやっていくこと
  • 自助自立(じじょじりつ)
    庇護者に頼らず、自らの力で物事を行うこと
  • 自主独立(じしゅどくりつ)
    独力で自立して物事を進めて行くこと
  • 一本立ち
    ひとりだち
  • 自活(じかつ)
    他人の援助や保護を受けず、自分の力で生活すること
  • インディペンデント
    独立
  • 独往(どくじゅう)
    他にたよらず自主的に歩を進めること
  • 介立(かいりつ)
    他人の助けを借りずに、自分の力で物事をなすこと

「据え膳」の英語訳

据え膳を英語に訳すと、次のような表現になります。

  • meal set before one
    (据え膳)
  • perfect care
    (申し分ない世話)
  • thorough help
    (完璧な世話)
  • leave nothing to be desired
    (至れり尽くせり)
  • more than satisfactory
    (至れり尽くせり)
  • give a royal welcome
    (盛大に歓迎する)
  • extending every courtesy
    (下にも置かない)
  • sensible
    (気の利いた)
  • smart
    (気の利いた)
  • thoughtfulness
    (思いやりの心)
  • considerateness
    (思いやり深い)
  • fear
    (気遣い)
  • care
    (気にかける)
  • polite
    (丁重な)
  • independent
    (独立)

「据え膳」のまとめ

以上、この記事では「据え膳」について解説しました。

読み方据え膳(すえぜん)
意味食膳を人の前に据えること
人を働かせ、自分は何もしないでいること
女性のからの誘い
類義語至れり尽くせり
おんぶにだっこ
何から何まで など
対義語上げ膳
独立独歩
自給自足 など
英語訳leave nothing to be desired(至れり尽くせり)
more than satisfactory(至れり尽くせり)
give a royal welcome(盛大に歓迎する) など

据え膳は、「据え膳食わぬは男の恥」「上げ膳据え膳」というように用いる言葉です。

意味を理解して正しく使いましょう。

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mikan
愛読書は広辞苑。 日本語の持つゆかしさや含み、趣深さが大好きです。大学では音声学・日本語学を専攻しました。 慣用句や四字熟語が得意分野です。