今回ご紹介する言葉は、ことわざの「損して得取れ(そんしてとくとれ)」です。
言葉の意味や使い方、由来、類義語、対義語、英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「損して得取れ」をざっくり言うと……
読み方 | 損して得取れ(そんしてとくとれ) |
---|---|
意味 | 一時的には損をしても、それが後に大きな利益となることを考えるべきだということ |
由来 | 元々の「損して徳取れ」ということわざから。 |
類義語 | 損せぬ人に儲けなし、損をして利を見よ、損と傷は癒え合うなど |
対義語 | 一文惜しみの百知らず、安物買いの銭失い、小利をむさぼって大利を失うなど |
英語訳 | Lose a dime and win a dollar. (損をして得をする。) |
このページの目次
「損して得取れ」の意味をスッキリ理解!
「損して得取れ」の意味を詳しく
「損して得取れ」は、一時的には損をしたとしても、その小さな損が後に大きな利益となって返ってくるように考えるべきだということを意味することわざです。
「損して得取れ」は、商売の場面において使われることの多いことわざです。
商売においては、一般的には、利益を出すことが一番優先されることです。利益を出すことで、商売は成り立ちます。
しかし、利益を出すことを意識しすぎるあまり、目の前の利益にこだわってしまうことが数多くあります。
例えば、立場的に弱い子どもに半強制的に売りつけたり、商品の効果なども誇張したりなどです。修学旅行に来ている子どもを言葉巧みにだまして売りつけたり、「絶対に痩せる」と誇張をして広告を出したりが良い例になるでしょう。
しかし、目の前にある利益は、長期的に見た時に、そこまで大きな利益にはなりません。それどころか、結果的には損をすることになることもあります。
子どもへの半強制的な売りつけ手法や、誇張広告は、後にネットや口コミで世に出回ることになります。悪いうわさが流れれば、客足は遠のき、やがて商売が成り立たなくなることもあります。
一方で、商売を長い目で見た時に、一時的な損は、最終的に大きな利益となって返ってくることが数多くあります。
例えば、修学旅行に来ている子どもに対して、割引などのサービスをするとします。そのサービスはもしかしたら、赤字となり、損をするかもしれません。損をするとなると、どうしても「嫌だ」と感じることでしょう。
しかし、そのサービスをすることによって、店の評判は上がるかもしれません。店の対応を称賛する口コミが回り、多くの客が訪れ、商売が繁盛するかもしれません。
一時的には損をすることも、大きな利益のためには必要です。一時的に損をしたとしても、今後、大きな利益が返ってくるためには必要なことであると考えるべきだ、という意味で使われるのがこのことわざです。
「損して得取れ」の使い方
- 私の店のモットーは、損して得取れだ。
- 損して得取れというので、今は安売りをして後の利益につなげたいと考えている。
- 大きな工場や、良い機械に投資をしておくことは、損して得取れで、後には莫大な利益の元となる。
➂の例文についてです。企業が商品を作るためには工場や機械が必要になります。大きな工場や良い機械への投資は莫大な金額になり、一時的には赤字となったり、損をすることになったりします。
しかし、大きな工場を建てたり、良い機械を買ったりすることで、商品生産の効率が上がったり、生産量が増えたりします。これが結果的に大きな利益に結び付くのです。
「損して得取れ」の由来
「損して得取れ」は元々、「損して徳取れ」ということわざでした。「得」ではなく「徳」だったのです。
つまり、元々は、現在のように、損をしてもいつかは「得」をするという意味ではありませんでした。
「損して徳取れ」は、主に仕事の場面で使っていました。損をしてでも、努力を惜しまず一生懸命やって徳を積めば、いつかは良い仕事が回ってくるということを意味していました。
これが転じて、商売で使われるようになり、「徳」から「得」という漢字に変化してことわざになったと言われています。
「損して得取れ」の類義語
「損して得取れ」には以下のような類義語があります。
- 損せぬ人に儲けなし(そんせぬひとにもうけなし):目先の損を惜しんでいては、大きなもうけも期待できないということ。
- 損をして利を見よ:目先の利益ではなく、今は損をして、後の大きな利益を期待するべきだということ。
- 損と傷は癒え合う(そんときずはいえあう):損は一時的にすることはあっても、いつかはもうける時が来るということ。
- 損は儲けのはじめ:損は後の大きな利益のはじめとなる存在だということ。
- 損をすれば得をする:損をしたとしても、後に得をする時が来るということ。
「損して得取れ」の対義語
「損して得取れ」には以下のような対義語があります。
- 一文惜しみの百知らず(いちもんおしみのひゃくしらず):目先のわずかな出費を惜しみ、結果的に大きな損をすること。また、そのことに気付かないこと。
- 安物買いの銭失い(やすものがいのぜにうしない):値段の安いものは品質が悪いので、買得だと思っても結局は買い替えることになり、損をするということ。
- 小利(しょうり)をむさぼって大利(たいり)を失う:目先の利益にとらわれて、大きな利益を失うこと。
- 一文儲けの百使い(いちもんもうけのひゃくづかい):わずかなもうけを得ようとして、大きな出費をすること。
- 一文拾いの百使い(いちもんひろいのひゃくづかい):わずかなもうけを得ようとして、大きな出費をすること。
目の前の利益にとらわれ、結果的に損をしたり、大きな利益を逃したりすることを表すことわざは多く存在します。それほど、昔から人間は、目の前の利益のとらわれやすい性質を持っているのだと考えられます。
「損して得取れ」の英語訳
「損して得取れ」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- Lose a dime and win a dollar.
(損をして得をする。) - Sometimes the best gain is to lose.
(時に、一番利益となるのは、失うことだ。) - Don’t consider only immediate profits.
(目先の利益だけに固執するな。)
まとめ
以上、この記事では「損して得取れ」について解説しました。
読み方 | 損して得取れ(そんしてとくとれ) |
---|---|
意味 | 一時的には損をしても、それが後に大きな利益となることを考えるべきだということ |
由来 | 元々の「損して徳取れ」ということわざから。 |
類義語 | 損せぬ人に儲けなし、損をして利を見よ、損と傷は癒え合うなど |
対義語 | 一文惜しみの百知らず、安物買いの銭失い、小利をむさぼって大利を失うなど |
英語訳 | Lose a dime and win a dollar. (損をして得をする。) |
「損して得取れ」の意味や使い方など、理解することはできたでしょうか。
人間はどうしても目先の利益にとらわれてしまいがちです。しかし、目先の利益にとらわれた挙句、結果として損をすることはよくあります。皆さんもそのような経験は多くあるのではないでしょうか。
ぜひ、目先の利益にとらわれそうになったら、「損して得取れ」という言葉を思い出して、今一度考えなおすことをおすすめします。