「僭越」の意味とは?読み方は?使い方から英語や類義語まで解説

言葉

今回ご紹介する言葉は、熟語の「僭越(せんえつ)」です。「僭越ながら」という表現で耳にすることが多いでしょう。

以下では、「僭越」の意味・使い方・類義語・英語訳についてわかりやすく解説します。

☆「僭越」をざっくり言うと……

読み方僭越(せんえつ)
意味身の程をわきまえず、出過ぎた言動をすること
類義語越権、厚顔、失敬、不躾、厚かましい
英語訳presumptuous(僭越な), with all due respect(僭越ながら)

「僭越」の意味をスッキリ理解!

僭越(せんえつ):身の程をわきまえず、出過ぎた言動をすること

「僭越」の意味を詳しく

「僭越」とは、自分の立場をわきまえずに、出過ぎた言動をすることを指します。

第三者の行動を“僭越”と表現することもあるものの、現代の日本語では一般的に、自分の行為に対して使います。

「僭」と「越」の意味は、以下の通りです。

漢字の意味
  • :身の程をわきまえない言動をすること
  • :限度の先を行くこと

上記2つの字から、「僭越」は身分不相応な言動をすることを指すとわかります。

たとえば、「そこまで立ち入ったことを聞くのは僭越だ」といった使い方があります。

立ち入ったことを聞くという行為が、出過ぎているということです。

ただ、一般的には、「僭越ながら~します」という形で、自分の失礼さを先にわびるために「僭越」を用いることが多いです。

「僭越ながら」の意味

「僭越」は、「僭越ながら~します」の形を取り、自分の行為をへりくだる表現として、発言の冒頭に使われることが多いです。

たとえば、何らかの催し物において、「僭越ながら、私が乾杯の音頭を取らせていただきます。」といった言い回しは定型句です。

ここでの「僭越ながら」は、「大勢の前で物を言うのにふさわしい人は自分以外にいるはずですが」という意味を持ちます。出過ぎた行為をわびているのです。

「僭越ながら」のように、冒頭で用いて自分の行為の失礼さをわびる言葉を「クッション言葉」と言います。

「クッション言葉」は、失礼さを前もって断ることで、後に続く発言をやわらかく聞き入れてもらうために有効な役割を果たします。

「僭越」の使い方

  1. 僭越ながら、新商品のデザインについて意見を述べさせていただきます。
  2. 僭越ではございますが、私よりお祝いの言葉を述べさせていただきます。
  3. 素人にしては僭越な言い方だったかもしれないと、言い終えて思った。

①は、会議の場面です。新商品のデザインについて意見を述べる前に、「出過ぎたことをして申し訳ありませんが」とわびることで、やわらかく考えを伝えようとしています。

②は、結婚式など、祝いの場でのスピーチで用いられる定型の表現です。ここでの「僭越ではございますが」は、「他にもふさわしい人がいるかもしれませんが」というニュアンスです。

③は、ある発言について、素人にしては出過ぎた言い分だったかもしれないと感じている場面です。

宴会などで乾杯をするときに、冒頭に「僭越ではございますが、乾杯の音頭を取らせていただきます」というセリフがよく使われます。

「僭越ではございますが〜」という表現は、誰しもが形式的な枕詞(まくらことば)として、よく使いがちです。

ただし、これらの表現は、立場が上の人物は使わない方が良い表現です。「僭越」はへりくだる意味合いが強いため、上司などが使うと、「謙遜をしすぎている」という印象になり、不自然な表現になるからです。

「僭越ではございますが〜」には、「他にもふさわしい人が多いなか、私のような者が役目を担うことになり申し訳ない」といった意味である点を忘れないようにしましょう。

場面ごとに使える「僭越ながら」の例文

「僭越」は、「僭越ながら」というかたちで使われることが多い言葉です。ここからは、場面ごとに役立つ「僭越ながら」の例文を紹介します。

宴会での挨拶

例文
広報部の西村でございます。僭越ながら、乾杯の音頭を務めさせていただきます。

宴会では、「僭越ながら」が乾杯の挨拶としてよく使われます。

結婚式でのスピーチ

例文
僭越ながら、友人代表のスピーチをさせていただきます。

結婚式では、新郎新婦の友人・仲間が前に出て何かしらの役割を果たすときに、「僭越ながら」と使うことが多いです。

会合で意見を述べる

例文
僭越ながら、今回の合同プロジェクトについて、弊社としては参加できかねます。

あらたまった場所で意見を述べる際に使う「僭越ながら」は、「お言葉ですが」という断りのニュアンスが含まれていますね、

手紙やメールでの挨拶

例文
明日の会議に関しまして、僭越ながら私が代理出席させていただく運びとなりました。当日は何卒よろしくお願いいたします。

「僭越ながら」は話し言葉だけでなく、手紙やメールの文面でも使うことができる表現です。ビジネスメールなど、あらたまった文面で使いましょう。

「僭越ながら」「僭越ですが」は、普段もしているような作業に対しては使えません。普段しないような役目を担うときに「僭越ながら」と言うのです

「僭越」の類義語

「僭越」には以下のような類義語があります。

  • 越権(えっけん):自分の権限を越えた行動をすること
  • 厚顔(こうがん):図々しく、恥知らずなさま
  • 不躾(ぶしつけ):礼に欠けるさま
  • 失敬:礼に欠けるさま
  • 厚かましい:図々しく、恥知らずなさま
  • 生意気(なまいき):一人前でないのにも関わらず、偉そうにすること
  • 図々しい:自分勝手であること。
  • 不遜(ふそん):謙虚な気持ちがなく、思い上がっていること

「僭越」と「越権」の違い

「僭越」と「越権」には、使う場面において以下のような違いがあります。

  • 僭越:単に「出過ぎた」行動をする際に使う
  • 越権:「権限」など具体的な限度を越えたときにも使う

「僭越」と「厚顔」の違い

「厚顔」は、「僭越」よりもさらに、自分の振る舞いの「図々しさ」に対する自覚のなさを強調する表現です。

「厚かましい」は、「厚顔」を形容詞にしたものと考えて差し支えありません。

「僭越」と「不躾」「失敬」の違い

「不躾」や「失敬」は、「僭越」よりも礼儀に欠けることを強調した表現です。また、「失敬」は、礼を欠く度合が軽い場合に使われます。

「僭越ながら」の類義語

「僭越」は、「僭越ながら」の形でクッション言葉として用いることが多いです。そこで、「僭越ながら」に類似する表現をご紹介します。

  • 失礼ですが
  • お言葉ですが
  • 憚(はばか)りながら
  • 厚かましいですが
  • 厚顔(こうがん)ながら
  • 微力ながら
  • 及ばずながら
  • 恐縮ながら

「僭越ながら」と「失礼ですが」「お言葉ですが」の違い

「失礼ですが」や「お言葉ですが」は、「出過ぎたことをしてしまいますが」という意味です。

「僭越ながら」のほうがよりかしこまった印象であるものの、基本的には同じ意味のクッション言葉といえます。

「僭越ながら」と「恐縮ながら」の違い

「僭越ながら」に似ている表現に、「恐縮ながら」があります。ただし、相手に対してどのような感情をもっているかという前提に、以下のような違いがあります。

  • 僭越ながら
    形式的な「自分の行為をへりくだる表現」として、発言の冒頭につける
  • 恐縮ながら
    自分の行為をへりくだるだけでなく、相手に手間や迷惑をかける申し訳なさも表す

「相手に手間をかけてしまって申し訳ない」という意味合いも込めたい場合は、「僭越ながら」ではなく、「恐縮ながら」を使うほうが適しています。

「僭越」の英語訳

「僭越」を英語に訳すと、次のような表現になります。

  • presumptuous
    (僭越な)
  • with all due respect
    (僭越ながら)
  • with the greatest respect
    (僭越ながら)

“with all due respect” の “due respect” は、「あって当然の敬意」という意味です。つまり、with all due respect の直訳は「当然大いなる敬意を抱いておりますが」となり、「僭越ながら」と意訳することができます。

また、”with the greatest respect” も、 “with all due respect” と同じ意味をもちます。”greatest respect”は、最大の敬意」を表します。

それぞれを用いた例文は以下の通りです。

例文
  • It is presumptuous of you to give directions to them.
    (君が彼らに指図するのは僭越だ。)
  • With all due respect, I have an opinion which is different from yours.
    (僭越ながら、私には違う意見がございます。)

ちなみに、with all due respect は、with the greatest respect とも表現できます。”the greatest” は、great の最上級であり、”all due” と同等の意味を持ちます。

まとめ

以上、この記事では「僭越」について解説しました。

読み方僭越(せんえつ)
意味身の程をわきまえず、出過ぎた言動をすること
類義語越権、厚顔、失敬、不躾、厚かましい
英語訳presumptuous(僭越な), with all due respect(僭越ながら)

「僭越」や「僭越ながら」は、ビジネスシーンや祝いの場、また手紙などでも使用できる言葉です。ぜひとも意味を押さえておきましょう。