今回ご紹介する言葉は、カタカナ語の「スケープゴート(scapegoat)」です。
「スケープゴート」の意味や使い方、語源、類義語、「生贄」との違い、「スケープゴート」の例についてわかりやすく解説します。
☆「スケープゴート」をざっくり言うと……
英語表記 | スケープゴート(scapegoat) |
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意味 | 他人の罪を負わされて生贄になる者 |
語源 | 人々の罪を負わされて、荒野に放たれたヤギの話から |
類義語 | 身代わり、生贄、代役、人柱 |
「生贄」との違い | 宗教的なものか、政治的なものか |
「スケープゴート」の例 | 学級内のいじめやナチスのホロコースト |
このページの目次
「スケープゴート」とは?
「スケープゴート」の意味を詳しく
「スケープゴート」とは、他人の罪を負わされていけにえになる者のことです。
組織や集団の中にある不満や憎悪を、直接的な原因になるものや人に向けるのではなく、他の対象に向けることでそれらの感情を解消するという手法があります。この時に、不満のはけ口にされる対象を「スケープゴート」と言います。
「スケープゴート」に行われる行為は様々なものがありますが、基本的には差別的な扱いを受けたり、集団から排除されることが多いです。
また、「スケープゴート」は心理学用語としても使われることがあります。人は不快感や不満を抱くと、それらの感情の原因ではないとわかっていても、他人に嫌悪や憤り(いきどおり)を覚えることがあります。
この感情が結果的に「スケープゴート」を生み出してしまうのです。このように、「スケープゴート」は心理学的にも存在が認められている現象なのです。
集団内の感情によって、自然に「スケープゴート」として差別や迫害を受ける人々が出てくることもあります。しかし、集団内の不満や不安を抑えるために指導者や政府が「スケープゴート」を設定し、意図的に差別を行うこともあります。
「スケープゴート」の使い方
- ユダヤ人は、ナチス党によってスケープゴートになった。
- 市民の不満を解消するには、スケープゴートを作るしかなかった。
- 誰もが、「自分はスケープゴートにされることはない」と思い込んでいる。
- 中途半端な正義を見せると、スケープゴートにされてしまうよ。
「スケープゴート」の語源
「スケープゴート」の語源は英語の “scapegoat” です。
“scape” は「逃げる」という意味の “escape” がもとになっています。 “goat” は「ヤギ」という意味で、直訳すると「逃げるヤギ」という意味になります。
古代ユダヤでは、1年に1度、人々の冒してきた罪や苦難を背負ってヤギが荒野に放たれました。これが “scapegoat”の語源になっています。
この儀式は、ユダヤ教の祝日の1つである「贖罪(しょくざい)の日」に行われます。現在では、9月末から10月ごろの時期にあたります。
「贖罪の日」は「ヨム・キプル」とも呼ばれます。
「スケープゴート」の類義語
「スケープゴート」には以下のような類義語があります。
- 身代わり
- 代役
- 生贄:ある目的のために犠牲になる人や動物
- 人柱:ある目的のために犠牲になる人
「生贄」との違い
「スケープゴート」は、「生贄」と意味が非常に似ています。しかし、厳密には違う意味の言葉です。
まず、「生贄」は「集団の大事なものをあえて捧げることで、神などに祈りを届ける行為」です。それに対して、「スケープゴート」は「集団の不利益を、特定の個人に押し付ける行為」です。
「生贄」は非常に宗教的なものであるのに対して、「スケープゴート」は現代的・恣意的(しいてき)なものです。
「生贄」は、「神に差し出すことで災いを避けようとしたり、豊作を祈る行為」ですが、「スケープゴート」は「感情のはけ口」に過ぎません。
「スケープゴート」の例
実際に「スケープゴート」が行われた例を見てみましょう。
もっとも有名なものは「ホロコースト」です。「ホロコースト」とは、第二次世界大戦中にナチスドイツが行ったユダヤ人に対して行った組織的な大量虐殺のことです。
これは、当時政権を握っていた「ナチス党」が、国民の不満をユダヤ人に向けさせることで解消しました。つまり、意図的な「スケープゴート」の例です。
また、さらに身近で一般的な例では「いじめ」があります。
例えば、もともと問題を抱えている学校や学級で、「いじめられっ子」という「スケープゴート」が作られたとします。
このような場合に、ほかの問題が先送りになったり、一時的に落ち着いたりすることがあるのです。なぜなら、学生たちは、様々な不満を「いじめられっ子」に押し付けることでストレスを発散してしまうからです。
まとめ
以上、この記事では「スケープゴート」について解説しました。
英語表記 | スケープゴート(scapegoat) |
---|---|
意味 | 他人の罪を負わされて生贄になる者 |
語源 | 人々の罪を負わされて、荒野に放たれたヤギの話から |
類義語 | 身代わり、生贄、代役、人柱 |
「生贄」との違い | 宗教的なものか、政治的なものか |
「スケープゴート」の例 | 学級内のいじめやナチスのホロコースト |
私たちは、「スケープゴート」の理不尽な扱いについて考える必要があります。
意味や歴史などをきちんと理解しておきましょう。