難航とは「障害が多く、物事がうまくいかないこと」「暴風雨などで、船や飛行機が運転できなくなること」という意味です。
ニュースなどで「難航する」と聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
なぜ「行」ではなく、「航」が使われているのか気になりますよね。
この記事では難航の意味や使い方に加えて、渋滞や停滞との違いも詳しく解説します。
☆「難航」をざっくり言うと…
読み方 | 難航(なんこう) |
---|---|
意味 | 障害が多く、物事がうまくいかないこと 暴風雨などで、船や飛行機が運転できなくなること |
類義語 | 難渋 渋滞 停滞 など |
対義語 | 円滑 |
英語訳 | delay(手間取る) difficulties(難しさ) a difficult voyage(船の難航) など |
「難航」の意味
- 障害が多く、物事がうまくいかないこと
- 暴風雨などで、船や飛行機が運転できなくなること
元々は、②の意味から①の意味に転じました。
ただし、①の意味の方がよく使われています。
難航は以下の2字から成り立っています。
- 難
むずかしいこと - 航
船が進むこと。転じて、空を飛ぶこと
つまり、「船や飛行機が進むのがむずかしいこと」を表します。
ここからは、難航の2つの意味をそれぞれ詳しく解説します。
意味①「障害が多く、物事がうまくいかないこと」
難航は、「物事を進める上で障害が多く、進められないこと」という意味です。
この意味での障害には、以下のようなものがあります。
- 物理的に難しい
例:大きな岩を持ち上げたいが、力が足りない - 精神的に難しい
例:勉強したいが、子供の泣き声で集中できない
意味②「暴風雨などで、船や飛行機が運転できなくなること」
難航は、元々、「何らかの障害によって、船や飛行機が運転できなくなること」という意味です。
この意味での障害には、以下のようなものがあります。
- 暴風雨
激しい風をともなう雨 - 時化(しけ)
海が荒れること
難航は、天候によって運転できなくなってしまう乗り物が運転できなくなることです。
車は、基本的に、天気が悪くても運転可能です。
そのため、車が運転できなくなることを難航とはいいません。
「難航」の使い方
難航には以下の2つの意味があります。
- 「障害が多く、物事がうまくいかないこと」という意味
- 「暴風雨などで、船や飛行機が運転できなくなること」という意味
それぞれの意味の使い方を、例文と一緒に見ていきましょう。
使い方①「障害が多く、物事がうまくいかないこと」という意味
「障害が多く、物事がうまくいかないこと」という意味の例文には、以下のようなものがあります。
- 現場に残された証拠があまりにも少ないため、捜査が難航する。
- 日米の貿易交渉が難航した。
- 事故現場の足場が悪かったため、救助活動は難航した。
- 新型コロナウィルスの影響で、彼の就職活動は難航した。
- 夫婦の話し合いは難航しているようなので、第三者を挟んだ方が良いだろう。
- 国内での初症例だったため、手術は難航を極めた。
- ロサンジェルスの街全体を一枚のディスクに閉じこめようと狙ったこの試みは、難航を極めます。
[出典:富田倫生『本の未来』] - 新天地探しが難航中の香川真司、新たな候補先サバデルも合意への道は険しい?
[出典:THE DIGEST] - 延長交渉が難航中の鎌田大地にフランクフルト指揮官が送るアドバイスは?
[出典:ゲキサカ] - 日本の文化、民衆の道は難航である。
[出典:宮本百合子『微妙な人間的交錯 ――雑誌ジャーナリズムの理想性と現実性――』]
例文❻や❼のように、「難航を極める」という言い回しでよく使われます。
例文❽や❾のように、「難航中」という言い回しでも使われたり、ニュース記事の見出しでも使われます。
使い方②「暴風雨などで、船や飛行機が運転できなくなること」という意味
「暴風雨などで、船や飛行機が運転できなくなること」という意味の例文には、以下のようなものがあります。
- 大嵐で難航していた船が、無事に目的地に到着した。
- アメリカの貨物船アーク号は、大難航をつづけていた。
[出典:海野十三『地底戦車の怪人』] - サンタ・クルスはサンタ・カタリナよりも僅か二日後にシナを出帆(しゅっぱん)したのであるが、途中暴風のために非常に難航して、一カ月近くも遅れてしまったのである。
[出典:和辻哲郎『鎖国 日本の悲劇』]
「難航」の類義語
難航には以下のような類義語があります。
- 難渋(なんじゅう)
物事がうまくいかず、苦しむこと - 渋滞(じゅうたい)
スラスラと進まず、つかえること - 停滞(ていたい)
1か所にとどまって動かないこと - 難産(なんざん)
①出産で、赤ちゃんがなかなか生まれないこと
②物事が簡単に成立しないこと - 停頓(ていとん)
物事が進展しないこと
「難航」と「難渋」の違い
難航と難渋には、以下のような違いがあります。
難航 | 難渋 | |
---|---|---|
意味 | ①障害が多く、物事がうまくいかないこと ②暴風雨などで、船や飛行機が運転できなくなること | 物事がうまくいかず、苦しむこと |
状況 | 物事がうまくいかなることで、困難な状況になる | 物事がうまくいかなることで、困難な状況になり、その結果苦しむ |
難航と難渋は、どんな状況になるかが異なります。
難航は、物事がうまくいかなくなり、困った状況に陥ることを表します。
一方、難渋は、物事がうまくいかなくなり、困った状況に陥った結果、苦しむことを表します。
難渋の例文を見てみましょう。
- 資料が手に入らないと、課題を進めることができないため、彼は難渋した。
- 年末で忙しいのに、アルバイトが欠勤したため、売り場は難渋した。
「難航」と「渋滞」の違い
難航と渋滞には、以下のような違いがあります。
難航 | 渋滞 | |
---|---|---|
意味 | ①障害が多く、物事がうまくいかないこと ②暴風雨などで、船や飛行機が運転できなくなること | スラスラと進まず、つかえること |
物事の動き | うまくいかない | 少しずつ進む |
難航と渋滞は、物事の動きが異なります。
難航は、障害によって物事がうまくいかなくなることを表します。
一方、渋滞は、物事が少しずつ進むことを表します。
渋滞の例文を見てみましょう。
- ゴールデンウィークは、高速道路が渋滞する。
- 1台機械が故障したため、作業が渋滞している。
「難航」と「停滞」の違い
難航と停滞には、以下のような違いがあります。
難航 | 停滞 | |
---|---|---|
意味 | ①障害が多く、物事がうまくいかないこと ②暴風雨などで、船や飛行機が運転できなくなること | 1か所にとどまって動かないこと |
物事の動き | うまくいかない | 全く動かない |
難航と停滞は、物事の動きが異なります。
難航は、物事がうまくいかなくなり、困った状況に陥ることを表します。
一方、停滞は、物事が1か所に留まり全く動かないことを表します。
停滞の例文を見てみましょう。
- 梅雨は、前線が停滞しやすい。
※前線は、冷たい空気と暖かい空気が地面と交わる部分 - 日本の景気は停滞しているように思える。
「難航」の対義語
難航には以下のような対義語があります。
- 円滑(えんかつ)
①物事が滞らず、すらすら運ぶこと
②なめらかで、とげとげしくないこと
「難航」の英語訳
難航には以下の2つの意味があります。
- 「障害が多く、物事がうまくいかないこと」という意味
- 「暴風雨などで、船や飛行機が運転できなくなること」という意味
それぞれの意味の英語訳を見ていきましょう。
英語訳①「障害が多く、物事がうまくいかないこと」という意味
「障害が多く、物事がうまくいかないこと」という意味の英語訳には、以下のようなものがあります。
- delay
(手間取る) - difficulties
(難しさ)
英語訳②「暴風雨などで、船や飛行機が運転できなくなること」という意味
「暴風雨などで、船や飛行機が運転できなくなること」という意味には、以下のようなものがあります。
- a difficult voyage
(船の難航) - a difficult flight
(飛行機の難航)
“voyage” は「船で海を渡ること」、 “flight” は「飛行機が飛ぶこと」という意味です。
「難航」のまとめ
以上、この記事では難航について解説しました。
読み方 | 難航(なんこう) |
---|---|
意味 | 障害が多く、物事がうまくいかないこと 暴風雨などで、船や飛行機が運転できなくなること |
類義語 | 難渋 渋滞 停滞 など |
対義語 | 円滑 |
英語訳 | delay(手間取る) difficulties(難しさ) a difficult voyage(船の難航) など |
難航は、元々は「船や飛行機がうまく運転できないこと」という意味でしたが、現在では広い意味で使われています。
場面に合った使い方ができると良いですね。