今回ご紹介する言葉は、熟語の「虚飾(きょしょく)」です。「虚飾に満ちた生活」など、日常生活でもよく使われますが、それはつまりどういう意味なのか、イメージしづらい方もいるのではないでしょうか。
また、「虚飾」は、人間を堕落させるとされる「七つの大罪」の中でも登場する言葉です。これだけ登場シーンの幅広い「虚飾」の意味は、ぜひとも押せておきたいところです。
以下の記事では、「虚飾」の意味や使い方に加えて、類義語・粉飾との違い・英語訳・七つの大罪における「虚飾」について解説します。
☆「虚飾」をざっくり言うと……
読み方 | 虚飾(きょしょく) |
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意味 | 外見や表面だけ華やかに飾り、内容が伴っていないこと |
類義語 | 虚栄、見栄、修飾、粉飾 |
英語訳 | affectation, ostentation, showy |
「虚飾」の意味をスッキリ理解!
「虚飾」の意味を詳しく
「虚飾」とは、うわべを美しく見せているものの、それに相応する中身がないことを指します。「虚」は「虚(うつ)ろ」や「虚(むな)しい」と訓読し、空っぽであることや実質を伴わないことを表します。「飾」は「飾(かざ)る」と訓読するように、見かけをよくすることを指します。
「虚飾」は、一見華やかでありながらも、中身がないことから、ネガティブな響きを持っています。
「虚飾」の使い方
- 過去の私の生き方は虚飾に満ちており、本当は自信のなさをごまかしているだけだった。
- 嘘と虚飾にまみれた発言をしていては、信用されなくなってしまう。
- 彼女は、決して華やかではないと前置きをしつつ、虚飾のない私の素朴さに惹かれたという。
①の「虚飾に満ちた」は、よく使われる表現です。人目を気にして、言葉や行動が綺麗に見えるようにとりつくろうさまを表します。
②の「嘘と虚飾にまみれた」も頻出する表現です。人をだます「嘘」と、空虚な内面をとりつくろう「虚飾」は、どちらも本当のことを語らないという点で共通していることから、セットでよく使われます。
③のように、「虚飾のない」と言う場合は、うわべだけを変にとりつくろうことなく、自然体であるという意味になります。
「虚飾」の類義語
虚飾には以下のような類義語があります。
- 虚栄(きょえい):うわべを飾って、中身以上の自分に見せようとすること
- 見栄(みえ):実際より自分をよく見せようとするさま
- 修飾(しゅうしょく):よく見せようとして、表面をとりつくろうこと
- 粉飾(ふんしょく):実態を見せないように、表面を立派につくろうこと
「修飾」は、「修飾語」という言葉に代表されるように、後に続く言葉の意味を限定するという文法的な意味もあります。
「虚飾」と「粉飾」の違い
字面もニュアンスも似ている「虚飾」と「粉飾」は混同されやすいです。意味の違いを整理しましょう。
「虚飾」とは、中身がないのに、外見を華やかに見せることです。一方、「粉飾」とは、悪い内容や実態を見せないようにする目的で、うわべを立派に見せることを言います。
つまり、「粉飾」には悪事を隠すという不正の意味合いが含まれ、華やかさよりも健全さをとりつくろっているニュアンスがあります。
「粉飾」を使った言葉の代表例として、「粉飾決算」があります。「粉飾決算」とは、不正な会計処理を行うことで、赤字を黒字に見せかけたりなど、実際の経営状態よりもよく見せようとする決算のことを言います。
「虚飾」の英語訳
虚飾を英語に訳すと、次のような表現になります。
- affectation
(見せかけ、気取ること) - ostentation
(よく見せようとすること) - showy
(見栄っぱりの)
上記3つの英語表現を用いた例文は以下の通りです。
- There is no affectation in his behavior.
(彼のふるまいには、気取った様子がない。) - His life is full of ostentation.
(彼の暮らしは虚飾に満ちている。) - I don’t like showy people.
(うわべをとりつくろう人は好きではない。)
七つの大罪と「虚飾」
「虚飾」は、哲学的な文脈で、悪徳行為の1つとして語られることがあります。
4世紀のエジプトで、エヴァグリオス・ポンティコスという修道士がいました。修道士とは、宗教や学問を身につけることに生活をささげる者のことです。
エヴァグリオス・ポンティコスは、「八つの枢要罪(すうようざい)」という概念を提起しました。八つの枢要罪とは、人間を罪へと導く 8つの欲望や感情のことを指しており、その中に「虚飾」が含まれています。
後に、八つの枢要罪がもとになり、キリスト教圏内で「七つの大罪」という考え方が広がりました。その際に、「虚飾」は、七つの大罪の一つである「傲慢(ごうまん)」に内包される形となりました。
「傲慢」とは、自分の能力を過信して他者を見下す態度のことです。実質を伴わないさまが、「虚飾」と共通していますね。
七つの大罪には、「傲慢」「嫉妬」「憤怒」「怠惰」「強欲」「暴食」「色欲」があります。
まとめ
以上、この記事では「虚飾」について解説しました。
読み方 | 虚飾(きょしょく) |
---|---|
意味 | 外見や表面だけ華やかに飾り、内容が伴っていないこと |
類義語 | 虚栄、見栄、修飾、粉飾 |
英語訳 | affectation, ostentation, showy |
「虚飾」は、「虚(うつ)ろ」な部分を「飾(かざ)る」ことだと覚えれば、その意味をより理解しやすくなるでしょう。七つの大罪における「虚飾」の立ち位置も押さえておくと、もう「虚飾」を使いこなせたも同然です。ぜひ、意味や使い方を覚えてみてください。