「木で鼻をくくる」とは「無愛想に応対すること」という意味です。
「木で鼻をくくる」の「くくる」は、ひもや縄で巻き付けて締めるという意味だと誤解している人も多いのではないでしょうか。
正しい意味と、由来が気になりますよね。
そこで、この記事では「木で鼻をくくる」の意味から使い方まで詳しく解説します。
☆「木で鼻をくくる」をざっくり言うと……
読み方 | 木(き)で鼻(はな)をくくる |
---|---|
意味 | 無愛想に応対すること |
由来 | ①鼻をかむ時に木を使っていた説 ②雑用係に木で鼻をかませていた説 |
類義語 | 杵で鼻をこする 木っ端で鼻かむ けんもほろろなど |
対義語 | 愛想が良い 人当たりが良い 温和など |
英語訳 | blunt (ぶっきらぼうな) curt (素っ気ない) unfriendly (友好的でない)など |
このページの目次
「木で鼻をくくる」の意味
無愛想に応対すること
例:木で鼻をくくるような態度
「木で鼻をくくる」は、「素っ気ない態度を取ること」という意味です。
具体的には、以下のような態度を表します。
- 真顔
- 雰囲気が暗い
- 返事をしない
主に、相手からの頼み事や相談を冷たくあしらう時の態度を表します。
「木で鼻を括る」は、あくまでも冷たく無愛想なことを表します。
偉そうにしたり、威張ったりするという意味はありませんので注意しましょう。
「くくる」の意味
「木で鼻をくくる」の「くくる」は、「ひもや縄で巻き付けて締める」という意味ではなく、「擦る(こする)」という意味です。
元々、「擦る」という意味で「こくる」と表現していました。
「こくる」が「くくる」に変化して、「木で鼻をくくる」というようになったのです。
「木で鼻をくくる」の表記
「木で鼻をくくる」は以下のように表記することもあります。
- 木で鼻
- 木で鼻を括る
- 木で鼻をかむ
「木で鼻をくくる」の使い方
「木で鼻をくくる」の使い方を、よく使う言い回しと一緒に見ていきましょう。
- 木で鼻をくくるような態度
例:彼は客に木で鼻をくくるような態度であるため、店長からよく注意されている。 - 木で鼻をくくるような返事
例:勇気を出して告白したが、木で鼻をくくったような返事をされてしまった。 - 木で鼻をくくるような回答
例:勇気を出して依頼したが、木で鼻をくくるような回答だった。 - 木で鼻をくくるような挨拶
例:(前略)時の御奉行もそう木で鼻を括くくったような挨拶も出来ず(後略)。
[出典:夏目漱石『吾輩は猫である』] - 木で鼻をくくるような言い方
例:機嫌が悪かったのか、木で鼻をくくるような言い方で断られてしまった。 - 木で鼻をくくるような性格
例:彼は木で鼻をくくったような性格のため、みんなから避けられている。
「木で鼻をくくる」は性格を表すこともあります。
ただし、褒め言葉ではないため、人に対して使わないように注意しましょう。
「木で鼻をくくる」の由来
「木で鼻をくくる」の由来には、以下の2つの説があります。
- 鼻をかむ時に木を使っていた説
- 雑用係に木で鼻をかませていた説
それぞれ見ていきましょう。
由来①鼻をかむ時に木を使っていた説
「木で鼻をくくる」の由来の1つ目は、鼻をかむ時に木を使っていたことです。
昔、紙は貴重なものだったため、鼻をかむ時は、紙ではなく木を使っていたとされます。
木で鼻をかむのは痛いため、顔が歪み不機嫌な顔に見えることから、「木で鼻をくくる」が「無愛想に応対すること」という意味になったとされます。
由来②雑用係に木で鼻をかませていた説
「木で鼻をくくる」の由来の2つ目は、雑用係に木で鼻をかませていたことです。
江戸時代、職人や商人の家に奉公に来る雑用係を丁稚(でっち)と呼んでいました。
丁稚は立場が低いため、鼻をかむ時には貴重品である紙ではなく木を使わされていました。
このことから、「木で鼻をくくる」が「ひどく無愛想にもてなすこと」という意味をもち、変化して「無愛想に応対すること」という意味になったとされます。
「木で鼻をくくる」の類義語
「木で鼻をくくる」の類義語には以下の2種類があります。
- 木に関連する語が使われているもの
- 木に関連する語が使われていないもの
それぞれ見ていきましょう。
類義語①木に関連する語が使われているもの
木に関連する語が使われている類義語には以下のようなものがあります。
- 杵(きね)で鼻をこする
- 木っ端(こっぱ)で鼻かむ
- 立木(たちき)へ鼻こする
- 拍子木(ひょうしぎ)で鼻かむ
- 擂粉木(すりこぎ)で鼻をこくる
上記の類義語は全て、「木で鼻をくくる」を言い間違えた表現だとされているため、木に関連する語が使われています。
木っ端は木くず、立木は生えている木のことです。
類義語②木に関連する語が使われていないもの
木に関連する語が使われていない類義語には以下のようなものがあります。
- けんもほろろ
頼み事や相談に全く取り合わないこと - 歯牙(しが)にもかけない
全く相手にしないこと - 洟(はな)も引っ掛けない
見向きもしないこと - 取り付く島もない
①頼れるところがないこと
②相手に冷たくあしらわれること - にべもない
愛想がないこと - つっけんどん
言動がとげとげしていて不親切なこと
「鼻にも掛けない」は、「洟も引っ掛けない」の誤用です。
「鼻に掛ける」であれば、「得意げな様子」という意味をもちます。
「木で鼻をくくる」の対義語
「木で鼻をくくる」には以下のような対義語があります。
- 愛想が良い
好感をもてる態度や表情をしていること - 人当たりが良い
人に与える印象が良いこと - 温和
優しくて穏やかなこと - 柔和(にゅうわ)
とげとげしくなく、柔らかいこと
「木で鼻をくくる」の英語訳
「木で鼻をくくる」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- blunt
(ぶっきらぼうな) - curt
(素っ気ない) - unfriendly
(友好的でない) - never pay attention to〜
(〜のことを無視する)
「木で鼻をくくる」と似ている語
「木で鼻をくくる」と似ている語を、以下の2つに分けて見ていきましょう。
- 木に関する語
- 「くくる」がつく語
①木に関する語
「木で鼻をくくる」は、木に関する語が使われている語です。
木に関する語が使われている語には、以下のようなものがあります。
- 木鼻答弁(きはなとうべん)
相手を小馬鹿にして質問に返事をしないこと - 木に竹を接ぐ(つぐ)
①前後のつじつまが合わないこと
②不調和なこと
②「くくる」がつく語
「木で鼻をくくる」と同じく「くくる」がつく語には以下のようなものがあります。
- 高を括る(たかをくくる)
大したことはないと見くびること
高を括るの「くくる」は擦るという意味ではなく、ひとつにまとめ上げて区切りを付けるという意味です。
たかをくくるを、「多寡をくくる」と表記するのは誤りです。
多寡は「物が多いか、少ないか」という意味のため、意味が通じなくなります。
「木で鼻をくくる」のまとめ
以上、この記事では「木で鼻をくくる」について解説しました。
読み方 | 木(き)で鼻(はな)をくくる |
---|---|
意味 | 無愛想に応対すること |
由来 | ①鼻をかむ時に木を使っていた説 ②雑用係に木で鼻をかませていた説 |
類義語 | 杵で鼻をこする 木っ端で鼻かむ けんもほろろなど |
対義語 | 愛想が良い 人当たりが良い 温和など |
英語訳 | blunt (ぶっきらぼうな) curt (素っ気ない) unfriendly (友好的でない)など |
「木で鼻をくくる」と聞いただけでは、意味がイメージしづらいかもしれませんが、由来を知ると納得できるでしょう。
木で鼻をくくったような態度は、あまりとられたくありませんね。