今回ご紹介する言葉は、四字熟語の「鶏口牛後(けいこうぎゅうご)」です。
言葉の意味・使い方・由来・類義語・対義語・英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「鶏口牛後」をざっくり言うと……
読み方 | 鶏口牛後(けいこうぎゅうご) |
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意味 | 大きな組織で下の地位にいるよりも、小さい組織で上の地位について重んじられる方がよいということ |
由来 | 司馬遷『史記』 |
英語訳 | Better be the head of a dog than the tail of a lion.(ライオンの尻尾になるより犬の頭となる方がよい) |
このページの目次
「鶏口牛後」の意味をスッキリ理解!
「鶏口牛後」の意味を詳しく
「鶏口牛後」は、大きな組織の末端(まったん)で使われるよりも、小さな組織の長となって重んじられた方がよいという意味です。
「鶏口となるも牛後となるなかれ」ということわざを略した四字熟語です。
「鶏口牛後」を構成する熟語には以下のような意味があります。
- 鶏口:鳥のくちばし(小さな組織のトップのたとえ)
- 牛後:牛の尻(大きな組織の末端のたとえ)
大きな組織に属すると、人数も多くなり、自然と上の地位につくことが難しくなります。
一方で、小さな組織は人数が少ないため、上の地位につくことは比較的容易です。
そのため、活躍の場を広げられる可能性が高いといえます。
「鶏口牛後」は、就職の際の会社選びにおいて、役に立つ四字熟語です。
大きい会社に入れば、自分のある種のステータスにはなるかもしれません。
しかし、入社後に実際仕事をしてみても、その満足感は続くのでしょうか。
既に確立されたシステムに抗(あらが)えなかったり、大人数ゆえ、個性が埋もれてしまい、自分の活躍の場が少ないこともあります。
一方で、小さな会社であれば、個性が尊重され、自らがトップとなって働く場面も、多いでしょう。
学校の授業でも、大人数よりも少人数の方が、一人一人の個性が目立ち、先生や周囲に意見を伝えやすくなります。
これは、学校以外の組織においても当てはまります。
「鶏口牛後」は、このような小さな組織の良さを表すことわざです。
「鶏口牛後」の使い方
- 鶏口牛後というので、大きな企業ではなく小さな企業でもいいので、自分の主導で何かをプロジェクトしたい。
- 大企業に入社したが、ロクな仕事を与えてもらえない。中小企業でも構わないので、やりがいのある仕事がしたかった。鶏口牛後とはまさにこのことだ。
- 鶏口牛後という言葉にならって、自分のスキルを活かしやすい小さな会社に就職したが、大手の会社への憧れが消えない。
上記の例文のように、「鶏口牛後」は小さな組織や会社を志す時に用いられることが多いです。
ちなみに、「鶏口牛後」の「鶏口」は「小さな組織のトップ」を表すため、トップ以外の人、つまり中小企業の役員などを表すことはできません。
「鶏口牛後」の由来
「鶏口牛後」の由来となったのは、中国の歴史書である『史記(しき)』の「蘇秦列伝(そしんれつでん)」です。
その中の以下のようなエピソードが由来になっています。
中国の戦国時代には、7つの国が覇権(はけん)を争っていました。
秦(しん)・斉(せい)・楚(そ)・魏(ぎ)・趙(ちょう)・韓(かん)・燕(えん)です。
この中で、最も大きな権力を持っていたのが秦でした。
秦は、他の6つの国に対して、領土を分けるように脅(おど)しました。
すると、6国の中の1国である趙の粛王(しゅくおう)は反対し、6国で団結して秦に対抗しようと、他国を説得することにします。
粛王から他国を説得するよう依頼された弁論家の蘇秦(そしん)は秦に服従しようと考えていた韓王を「寧為鶏口、無為牛後(小さな組織のトップになっても、大きな組織に従属してはならない)」と言って説得しました。
このセリフ、「寧為鶏口、無為牛後」を書き下し文にすると「寧(むし)ろ鶏口と為(な)るとも、牛後と為ること無かれ」となります。
ここから「鶏口となるも牛後となるなかれ」ということわざが生まれ、それが略されて「鶏口牛後」とという四字熟語ができました。
『史記』は中国の歴史書のひとつです。
中国の前漢(ぜんかん)の時代(紀元前206–紀元後8年)に司馬遷(しばせん)によって書かれました。
「鶏口牛後」の類義語
「鶏口牛後」には以下のような類義語があります。
- 鯛(たい)の尾より鰯(いわし)の頭:小さな団体でもトップになるほうが良いということ
- 大鳥(おおとり)の尾より小鳥(ことり)の頭:大きな組織の末端よりも小さな組織のトップのほうが良い
- 芋頭(いもあたま)でも頭は頭:どんなに小さな組織でも、長であることには価値があるということ
- 鶏尸牛従(けいしぎゅうしょう):大きな組織で末端にいるよりも、小さな組織で上に立つほうが良いということ
「鶏口牛後」の対義語
「鶏口牛後」には以下のような対義語があります。
- 寄らば大樹の陰:頼りにするなら勢力が大きい者のほうが良い
- 犬になるなら大家(おおや)の犬になれ:仕えるなら大物が良いということ
- 長い物には巻かれろ:強い権力があるものには逆らうより従ったほうが良い
- 箸(はし)と主(しゅう)とは太いがよい:仕えるなら頼りになる人が良い
- 大所(おおどこ)の犬となるとも小家(こいえ)の犬となるな:人に仕えるなら勢力が大きい者が良い
「鶏口牛後」の英語訳
「鶏口牛後」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- Better be the head of a dog than the tail of a lion.
(ライオンの尻尾になるより犬の頭となるほうがよい) - I’d rather be a big fish in a small pond than a little fish in a big pond.
(大きな池の小さな魚でいるよりも小さな池の大きな魚でいたい) - Better be first in a village than second at Rome.
(ローマで2番目にいるよりも、村で1番になるほうがいい)
まとめ
以上、この記事では「鶏口牛後」について解説しました。
読み方 | 鶏口牛後(けいこうぎゅうご) |
---|---|
意味 | 大きな組織で下の地位にいるよりも、小さい組織で上の地位について重んじられる方がよいということ |
由来 | 司馬遷『史記』 |
英語訳 | Better be the head of a dog than the tail of a lion.(ライオンの尻尾になるより犬の頭となる方がよい) |
「鶏口牛後」は、現代の私たちの考えを見直すきっかけを与えてくれる四字熟語かもしれません。
周りの評価を重視し、大きな会社に入っても、自分があまり活躍できなかったとしたら、仕事にやりがいがあるとは言えないでしょう。
一方、小さな会社でも自分が第一線で活躍することができたら、仕事にやりがいを感じ、日々が充実するでしょう。
人にはそれぞれの考え方があるので、厳しい環境に身を置き、成長していくプロセスが仕事のやりがいにつながると思う人も多くいます。
一方、もともと人の前に立つのが苦手な人などは、大人数の中で他の人を支えることにやりがいを見出します。
一概にどちらが良いと決めるのは野暮(やぼ)なことです。あくまで一つの考え方として、自分の中に取り込むのが良いでしょう。