「勝(か)って兜(かぶと)の緒(お)を締(し)めよ」とは?意味や使い方を例文付きでわかりやすく解説

言葉

「勝って兜の緒を締めよ」とは「敵に勝っても油断せず、気を引き締めて物事にあたれ」という意味です。

なぜ兜の緒を締めるのか、気になりますよね。

戦国時代の武将・北条氏綱が遺した言葉で、軍人の東郷平八郎が言った言葉として有名です。

この記事では、「勝って兜の緒を締めよ」の意味や使い方を詳しく説明します。

「勝って兜の緒を締めよ」の意味

ってかぶとめよ

敵に勝っても油断せず、気を引き締めて物事にあたれ

「勝って兜の緒を締めよ」は、「勝ったからといって油断しないで、さらに用心しなければならない」という意味です。

物事が順調である時ほど、気を引き締めなければいけないという教訓です。

「兜の緒」の意味

兜は、主に戦国時代に用いられた頭を守るための被り物です。

兜の緒は、兜が頭からずれて落ちないように固定するためのひもです。

↑兜の緒

「緒」を「尾」としない

「緒」を「尾」と間違えて、「勝って兜の尾を締めよ」と表記しないように注意しましょう。

「勝って兜の緒を締めよ」の使い方

「勝って兜の緒を締めよ」は、日常会話やビジネスシーンなど、様々な場面で使います。

  1. 自分に向けて使う
  2. 目上の人が目下の人に使う

それぞれ例文と一緒に見ていきましょう。

使い方①自分に向けて使う

「勝って兜の緒を締めよ」は、自分に向けて使います。

例文
  1. 初戦には勝ったけど、「勝って兜の緒を締めよ」で、2回戦も気を抜かずに頑張ろう。
  2. 出世できたとしても、「勝って兜の緒を締めよ」というから、調子に乗らないで努力を続けよう。
  3. 中間テストは良い結果だったけれど、「勝って兜の緒を締めよ」だ。期末テストに向けて勉強しよう。
  4. 勝ち続けるためには、「勝って兜の緒を締めよ」を意識することが大切だ。

使い方②目上の人が目下の人に使う

「勝って兜の緒を締めよ」は、目上の人が目下の人に使うこともあります。

例文
上司
今月の営業成績トップおめでとう。
部下
ありがとうございます!
上司
勝って兜の緒を締めよ」だよ。来月も、他の人に抜かされないように頑張ってね。

「勝って兜の緒を締めよ」の由来

「勝って兜の緒を締めよ」の由来は、戦国時代の武将である北条氏綱(ほうじょう うじつな)が書いた『五箇条の御書置(かきおき)』です

『五箇条の御書置』は、北条氏綱が息子の氏康に書いた遺言です。

5つある教訓の中のひとつに、以下のようなものがあります。

一、手際なる合戦にて夥敷(おびただしき)勝利を得て後、驕(おごり)の心出来し。
(合戦で見事な勝利が続いた後は、驕りの心が生まれる。)

敵を侮り、或は不行義(ふぎょうぎ)なる事、必(かならず)ある事也。可慎(つつしむべし)。
(敵を侮ったり、行儀が悪くなったりすることは、必ずあることだ。これは慎まなければならない。)

散々如斯候而(さんざんかくのごとくにそうらひて)、滅亡の家、古より多し。此心、万事にわたるそ。
(散々このようにして、滅亡した家は昔から多い。この精神は何事にも言えることだ。)

勝て甲(かぶと)の緒をしめよ、といふ事忘れ給ふへからす。
(勝って兜の緒を締めよ、ということを忘れてはいけない。)

この文章の一部である「勝て甲の緒をしめよ」が、「敵に勝っても油断せず、気を引き締めて物事にあたれ」という意味になりました。

『五箇条の訓戒』ともいう

『五箇条の御書置』は、『五箇条の訓戒(くんかい)』ともいいます。

「勝って兜の緒を締めよ」が広まった理由

「勝って兜の緒を締めよ」が広まった理由は、東郷平八郎(とうごう へいはちろう)が使用したためだとされています

東郷平八郎は、江戸末期から昭和初めの海軍軍人です。

↑東郷平八郎
[出典:Wikipedia]

1904年、日露戦争において、連合艦隊司令長官として海軍の指揮をとり、ロシアのバルチック艦隊に勝利しました。

東郷は日露の調停条約の場で、日本海軍に向けて「古人曰く(いわく)、勝って兜の緒を締めよと」と語りました。

この「古人」は、北条氏綱のことです。

東郷の言葉は、日本国民の間で広く広まり、日露戦争の調停を務めたアメリカ大統領・セオドア・ルーズベルトも感動したと言われています。

「勝って兜の緒を締めよ」の類義語

「勝って兜の緒を締めよ」には以下のような類義語があります。

  • 敵に勝ちて愈々戒(いよいよいまし)む
    勝ったとしても気を緩めないで警戒すること
  • 油断大敵(ゆだんたいてき)
    油断は失敗につながるため、恐ろしい敵であるということ
  • 好事魔多し(こうじまおおし)
    良い時ほど邪魔が入りやすい
  • 褌(ふんどし)を締めてかかる
    決心を固くして、気を引き締めて物事にあたること
  • 心に垣(かき)をせよ
    油断しないで、用心すること

「敵に勝ちて愈々戒む」を詳しく

「敵に勝ちて愈々戒む」は、「勝ったとしても気を緩めないで警戒すること」という意味です

愈々は、「より一層」という意味です。

敵に勝っても、より一層気を引き締めることを表します。

「好事魔多し」を詳しく

「好事魔多し」は、「良い時ほど邪魔が入りやすい」という意味です

「好事魔多し」は、以下のように成り立っています。

  • 好事:喜ばしいこと
  • :人を迷わせるもの
  • 多し:数が多い

つまり、物事がうまくいっていたり、うまくいきそうだったりする喜ばしい時には、人を迷わせるような出来事が多いことを表しています。

「褌を締めてかかる」を詳しく

「褌を締めてかかる」は、「決心を固くして、気を引き締めて物事にあたること」という意味です

褌は、日本の伝統的な下着です。

↑ふんどし
[出典:いらすとや]

褌が緩んでいると、物事に本気で取り組むことができないため、褌を締めることで気を引き締ることを表します。

「勝って兜の緒を締めよ」の対義語

「勝って兜の緒を締めよ」には以下のような対義語があります。

「勝って兜の緒を締めよ」の英語訳

「勝って兜の緒を締めよ」を英語に訳すと、次のような表現になります。

  • Tighten the strings of a helmet.
    (敵に勝っても油断せず、気を引き締めて物事にあたれ。)
  • Don’t halloo till you are out of the wood.
    (森を出るまでは、喜びの叫びをあげるな。)
  • You must keep up your guard even after a victory.
    (勝利した後も、警戒し続けなければいけない。)

「勝って兜の緒を締めよ」を直訳すると、 “Tighten the strings of a helmet.” になります。

“Don’t halloo till you are out of the wood.” は、慣用句で、「安心できる状況になるまで、注意しなさい」という意味です。

「勝って兜の緒を締めよ」のまとめ

以上、この記事では「勝って兜の緒を締めよ」について解説しました。

読み方勝(か)って兜(かぶと)の緒(お)を締(し)めよ
意味敵に勝っても油断せず、気を引き締めて物事にあたれ
由来北条氏綱の『五箇条の御書置』
類義語敵に勝ちて愈々戒む
油断大敵
好事魔多し など
対義語驕る平家は久しからず
蟻の穴から堤も崩れる
不覚を取る など
英語訳Tighten the strings of a helmet.(敵に勝っても油断せず、気を引き締めて物事にあたれ。)
Don’t halloo till you are out of the wood.(森を出るまでは、喜びの叫びをあげるな。)
You must keep up your guard even after a victory.(勝利した後も、警戒し続けなければいけない。)

「勝って兜の緒を締めよ」は、戦国武将の北条氏康が遺して、海軍軍人の東郷平八郎が引用した言葉です。

彼らのように、何かと戦う場面では、この言葉を思い出して取り組むと良いでしょう。

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間山智賀
間山智賀
自称、誤字キラー。 Web記事でも誤字脱字を見逃しません。言葉が大好きです。 大学では言葉遊びについて研究していました。マイブームは日本語ラップを聴くこと。