今回ご紹介する言葉は、ことわざの「一寸(いっすん)の虫にも五分(ごぶ)の魂(たましい)」です。
言葉の意味や使い方・由来・類義語・対義語・英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「一寸の虫にも五分の魂」をざっくり言うと……
読み方 | 一寸(いっすん)の虫にも五分(ごぶ)の魂(たましい) |
---|---|
意味 | どんなに小さく弱い者でも、それ相応の意地や根性があるのだから、侮ってはならないということ |
由来 | 虫のような小さな体にも、その半分には魂が詰まっているということ |
類義語 | 小さくとも針は飲まれぬ、瘦せ腕にも骨、蛞蝓にも角など |
対義語 | 独活の大木、弱肉強食 |
英語訳 | Even a worm will turn.(ミミズでさえ立ち向かってくる。) |
このページの目次
「一寸の虫にも五分の魂」の意味をスッキリ理解!
「一寸の虫にも五分の魂」の意味を詳しく
「一寸の虫にも五分の魂」とは、どんなに小さく弱い者でも、それ相応の意地や根性があるのだから、決して侮ってはならないということを意味することわざです。
ここでの「小さく弱い者(=一寸の虫)」は自分自身を指す場合もあれば、他者を指す場合もあります。どちらを指すかにより、このことわざの意味合いも少しだけ異なります。
まずは、「小さく弱い者」が自分自身を指す場合です。自分が小さく弱い存在であることをいったん認めたうえで、弱いなりに根性を見せてやるというニュアンスになります。自分自身に奮起を促すような使い方をします。
また、自身を侮る相手に対して、自分の意地や根性を示すためにも使います。どちらにせよ、自分自身が弱い者であるということを認めたうえで使うことわざです。
次に、「小さく弱い者」が他者を指す場合です。こちらの場合では、自身への戒めの意味で「一寸の虫にも五分の魂」が使われます。
人間はどうしても、人を見た目で判断し、弱く見える人は過小評価したり侮ったりしてしまう傾向があります。そのような傾向のある自分自身に対して、どんな人も侮ってはならないのだと戒める意味で使います。
ちなみに、「小さく弱い者」が他者を指す場合には、その人のことを考える必要があります。なぜなら、場合によっては失礼に当たるからです。取引先や上司、先輩などを指して使うのは避けた方がよいでしょう。
また、言葉そのままに、「一寸の虫」が実際の「虫」を指す場合もあります。この場合は、虫に対する殺生(せっしょう)を戒める意味で使います。
「一寸の虫にも五分の魂」の使い方
- 次の試合の相手は強豪校だが、一寸の虫にも五分の魂、弱小チームと言われていても意地を見せて戦おう。
- 新入社員の自分は今は上司から見下されているが、一寸の虫にも五分の魂、努力してすぐに上司を追い抜いてやる。
- いくら相手が初心者だからって、一寸の虫にも五分の魂というように油断はできない。
➀と➁の例文では、自分自身を「一寸の虫」、つまり弱い者としています。どちらの例文においても、自分自身が弱い者であることを前提としており、自身を鼓舞しています。
➂の例文は、「一寸の虫」が初心者である他者を指しています。この場合、自分自身を戒める意味で「一寸の虫にも五分の魂」を使っています。
「一寸の虫にも五分の魂」の由来
「一寸の虫にも五分の魂」は、どんなに小さな虫でも、その体の半分には魂が詰まっているということに由来しています。
一寸とは約3cmの長さです。このことわざは、一般的に考えて非常に小さいといえる一寸の大きさの虫でも、その半分に当たる五分(約1.5cm)の大きさの魂があるということを示しています。
実際には、魂はどれほど詰まっているのかは確認することは不可能です。しかし、どんなに小さなものでもそれ相応の魂、つまり意地や根性があるのだということを表した言葉です。
「一寸の虫にも五分の魂」の類義語
「一寸の虫にも五分の魂」には以下のような類義語があります。
- 小さくとも針(はり)は飲まれぬ:大きさは小さくとも決して侮れないということ
- 瘦(や)せ腕にも骨:弱い者でも、それなりの意地や根性を持っているので、決して侮れないということ
- 蛞蝓(なめくじ)にも角(つの):弱い者だからといって、決して侮ってはいけないということ
- 山椒(さんしょう)は小粒でもぴりりと辛い:体は小さくとも高い能力を持っているため、侮ることのできない存在であるということ
- 小糠(こぬか)にも根性:小さいからといって侮ってはならないということ
- 八(や)つ子も癇癪(かんしゃく):幼い子供であっても、それ相応の意地や考えは持っているので侮ってはならないということ
「一寸の虫にも五分の魂」の対義語
「一寸の虫にも五分の魂」には以下のような対義語があります。
- 独活(うど)の大木(たいぼく):大きい体であるにもかかわらず、全く役に立たないこと
- 弱肉強食(じゃくにくきょうしょく):弱い者は強い者の餌食(えじき)となって、強い者が繁栄するということ
大きくても役に立たないという意味の「独活の大木」は、小さくても侮れないという意味の「一寸の虫にも五分の魂」の対義語であるといえます。
また、弱い者は淘汰されていくという意味の「弱肉強食」も、弱者といえども侮れないという意味の「一寸の虫にも五分の魂」の対義語であるといえます。
「一寸の虫にも五分の魂」の英語訳
「一寸の虫にも五分の魂」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- Even a worm will turn.
(ミミズでさえ立ち向かってくる。) - The fly has her spleen and the ant has gall.
(ハエにも脾臓(ひぞう)があり、アリにも胆汁(たんじゅう)がある。)
“worm” は「ミミズ」、 “turn” はここでは動詞で「立ち向かう」を意味します。
“fly” は「ハエ」、 “spleem” は「脾臓」、 “gall” は「胆汁」を意味します。ちなみに、脾臓とは、胃の左側にある臓器です。胆汁は、肝臓で生成されます。「消化液」の一種であり、消化を助ける役割があります。
まとめ
以上、この記事では「一寸の虫にも五分の魂」について解説しました。
読み方 | 一寸(いっすん)の虫にも五分(ごぶ)の魂(たましい) |
---|---|
意味 | どんなに小さく弱い者でも、それ相応の意地や根性があるのだから、侮ってはならないということ |
由来 | 虫のような小さな体にも、その半分には魂が詰まっているということ |
類義語 | 小さくとも針は飲まれぬ、瘦せ腕にも骨、蛞蝓にも角など |
対義語 | 独活の大木、弱肉強食 |
英語訳 | Even a worm will turn.(ミミズでさえ立ち向かってくる。) |
「一寸の虫にも五分の魂」の意味や使い方など理解することはできたでしょうか。「一寸の虫」つまり、弱い者が誰を指すかによって、若干意味合いも異なるということは、このことわざを覚えるうえで押さえておくべきポイントです。
「一寸の虫」が自分自身を指して使う際は、自分自身の気概を示し、奮起を促す意味合いを持ちます。一方で、「一寸の虫」が他者を指して使う際は、どんな相手も侮ってはいけないという自戒を込めて使います。
この二つの使い方の違いを押さえておけば、「一寸の虫にも五分の魂」ということわざも使いこなすことができるでしょう。