今回ご紹介する言葉は、四字熟語の「石部金吉(いしべきんきち)」です。
言葉の意味・使い方・由来・類義語・英語訳について分かりやすく解説します。
☆「石部金吉」をざっくり言うと……
読み方 | 石部金吉(いしべきんきち) |
---|---|
意味 | 生真面目で物堅い人のこと |
由来 | 江戸時代の書物 |
類義語 | 四角四面、杓子定規、頑固一徹 |
英語訳 | a man of incorruptible character(真面目で清廉な性格の人) |
「石部金吉」の意味をスッキリ理解!
「石部金吉」の意味を詳しく
「石部金吉」は、「非常に頑固で真面目な堅い人」を表す四字熟語です。
「堅い」という意味は、「石部金吉」の「石」と「金」からきています。「石」も「金属」も、硬い物の象徴にあたります。どちらもとても硬く、簡単に折り曲げることが出来ません。
この「石」と「金」を二つ並べ、まるで人の名前のようにして堅い人を表すのが「石部金吉」です。
このように、言葉を人名のようにして、人の性格を表す方法はよく使われました。
「石部金吉」の他にも、痩せ細った人のことを表す「骨皮筋右衛門(ほねかわすじえもん)」があります。この方法は、四字熟語以外にも用いられます。
石部金吉な人の特徴としては、生真面目で物堅い性格であったり、非常に頑固で一度決めたら一点張りを貫き通す性格であったりなどがあります。主に考えが堅い人のことをいうので、「石部金吉」には「融通が効かない」という意味も含まれます。
しかし、「石部金吉」な人は決して悪い人というわけではありません。頭が堅いからこそ、男女の色恋に無頓着で、金銭や女の人の甘い言葉に心を迷わされない人でもあります。したがって、「石部金吉」な人物は、「非常に誠実な人物」ともいうことができます。
ちなみに、「石部金吉」の後に「金兜(かなかぶと)」をつけた、「石部金吉金兜」という言葉があります。これは、頭の堅い「石部金吉」な人が、さらに硬い「金兜」をつけることで、「この上なく頭の堅い人物」を表します。つまり、「石部金吉」をさらに強調した言葉です。
「石部金吉」の使い方
- 祖父は石部金吉な人物で、非常に頑固な性格だった。
- 浮気や曖昧なことを嫌う石部金吉な人は、将来子供の良い見本となるだろう。
- 自分のやり方を押しつける石部金吉なやり方は、私にはとても窮屈であった。
- 何に関しても細かく、厳しい石部金吉とは、やりづらいのであまり関わりたくない。
「石部金吉」は、人の性格を表す四字熟語です。使うときには「石部金吉な人」のようにして用います。
もともと「石部金吉」は、融通の利かない、生真面目な人物をからかう言葉として使われたそうです。ですが、❸のように「石部金吉」を良い人物として使うこともできます。
「石部金吉」の由来
「石部金吉」は、人の名前のような四字熟語ですが、実際に「石部金吉」という人物は存在しなかったそうです。ですから、人の名前から生まれた四字熟語ではありません。
「石部金吉」が、誰によって作られた言葉なのかはわかっていません。ですが、「石部金吉」という四字熟語は、江戸時代にはすでに使われていたようです。
その証拠として、江戸時代の歌舞伎、『五大力恋緘(ごだいりきこいのふうじめ)」の一節があります。この一節に、「菊野さんは石部金吉」と書かれている箇所があります。
また、同じく江戸時代に書かれた浮世草子、『世間妾形気(せけんかけかたぎ)』の一節にも、その証拠が見られます。この一節には、「いまだ四十に足らぬ人物なれども物堅きこと石部金吉にて、忠義専らの武士」と書かれています。
この二つの文書に用いられる「石部金吉」の意味は、現在使われている「石部金吉」と同じ意味です。したがって、「石部金吉」は江戸時代から使われている言葉ということになります。
「石部金吉」の類義語
石部金吉には以下のような類義語があります。
- 四角四面(しかくしめん):物事を几帳面に考える、真面目な人のこと
- 杓子定規(しゃくしじょうぎ):すべてに一つの基準を当てはめようとする、応用や融通の利かないやり方
- 頑固一徹(がんこいってつ):決めたことは、頑なに突き通そうとする性格のこと
「四角四面」は、真四角の物のことも意味します。四角形は四つの角と面がきっちりしているさまから、生真面目できっちりした人の様子を意味します。
「杓子定規」の「杓子」は、食べ物をよそうことに使われた道具です。昔は杓子の柄が曲がっていたそうです。だから、杓子は定規として使うことができません。つまり、「杓子定規」は、杓子を定規として使うように、正しくないものさしで無理矢理測ろうとする、頑固な性格を示します。
「石部金吉」の英語訳
石部金吉を英語に訳すと、次のような表現になります。
- a man of incorruptible character
(真面目で清廉な性格の人) - a man of strict morals
(道徳に厳しい人物)
「石部金吉」は人のことを表します。したがって、どちらの英文にも人物を意味する a man of という連語が入ります。
まとめ
以上、この記事では「石部金吉」について解説しました。
読み方 | 石部金吉(いしべきんきち) |
---|---|
意味 | 生真面目で物堅い人のこと |
由来 | 江戸時代の書物 |
類義語 | 四角四面、杓子定規、頑固一徹 |
英語訳 | a man of incorruptible character(真面目で清廉な性格の人) |
「頭が堅い」や「融通が利かない」など、どうしてもマイナスのイメージがつきやすい「石部金吉」ですが、悪いところばかりではありません。
「真面目できっちりしている」や「実直な性格」などのように捉えることで、「石部金吉」な人物にも良いイメージがつき、考え方によっては長所にもなります。
厳格で筋の通った人物にも、その長所がすぎるゆえに、真面目すぎるという短所が付いてきてしまいます。
どんな人物にも長所があれば短所もあります。長所と短所は紙一重で、捉えようによってはどちらにもなります。自分の短所も他人の短所も、考え方を少し変えて、上手く付き合うことが大切です。