今回ご紹介する言葉は、カタカナ語の「インシデント」です。
「インシデント」の意味、分野ごとの具体例、つく言葉、使い方、語源、類義語について分かりやすく解説します。
このページの目次
「インシデント」とは?
「インシデント」の意味を詳しく
「インシデント」とは、出来事・事件のことです。
重大な事故につながりかねないミスが起こってしまったものの、重大な事態につながらなかった場合に「インシデント」を使います。
具体的にどのようなものが「インシデント」にあたるかは分野によって異なります。続いては、分野ごとの「インシデント」の具体例について見ていきましょう。
「インシデント」の分野ごとの具体例
以下の3つの分野ごとに、「インシデント」の具体例を見ていきましょう。
情報セキュリティー
情報セキュリティーの分野で「インシデント」とは、具体的には以下のようなアクシデントにつながる可能性のあることを指します。
- 不正アクセス
- 情報漏えい
- データの改ざん
- コンピューターウイルスへの感染
これらのアクシデントを未然に防ぐために、「インシデント」が見つかったら原因を分析し、共有して対策を寝る必要があります。
鉄道・航空機
鉄道・航空機の分野では、運転中に事故が発生する可能性があるもののことを「インシデント」と呼びます。
「インシデント」の例としては以下のものがあげられます。
- 危険物の漏洩
- 車両の脱線
- 停止信号の無視
- 本来の航路から外れた飛行
- 管制室からの指示の無視
そして、「インシデント」の中でも、特に重大な事故につながるおそれのあるものは「重大インシデント」と呼ばれます。
医療
医療での「インシデント」とは患者には影響がなかったが、患者に影響を与えかねない事件のことです。
「インシデント」と「アクシデント」の境界は以下の表のとおりです。
分類 | 影響レベル | 内容 |
---|---|---|
インシデント | レベル0 | 誤った行為が発生したが、患者に実施されなかった |
レベル1 | 誤った行為を患者に実施したが、患者に影響は及ぼさなかった | |
レベル2 | 行った医療または管理により、患者に影響を与えた | |
アクシデント | レベル3a | 行った医療または管理により、本来必要でなかった簡単な治療や処置が必要になった |
レベル3b | 行った医療または管理により、本来必要でなかった治療や処置が必要となった | |
レベル4 | 行った医療または管理により、永続的な障害が発生した | |
レベル5 | 行った医療または管理が原因で患者が亡くなった | |
その他 | 自傷行為、クレーム、盗難、発注ミスなど |
インシデントが発生してしまった場合は、インシデントの背景や課題を共有する「インシデントレポート」が作成されるのがふつうです。
「インシデント」がつく言葉
「インシデント」がつく言葉には以下のようなものがあります。
- 重大インシデント:あわや大事故になりかねない事態
- インシデントレポート:病院全体で事故の背景や課題を共有し、再発を防止するために作成される報告書
それぞれの意味を詳しく見ていきましょう。
重大インシデント:あわや大事故になりかねない事態
重大インシデントとは、あわや大事故になりかねない事態のことです。
「インシデント」の中でも、特に事故につながる危険性が高かったもののことを指します。ちなみに、実際に事故につながってしまった場合は「アクシデント」と呼ばれます。
以下のような分野で時々使われる言葉です。
- 航空
- 鉄道
- 船舶
重大インシデントは国が認定し、国土交通省運輸安全委員会が発生した原因の調査や再発防止のための研究を行っています。
インシデントレポート:病院全体で事故の背景や課題を共有し、再発を防止するために作成される報告書
インシデントレポートとは病院全体で事故の背景や課題を共有し、再発を防止するために作成される報告書です。
病院の中でインシデントが起こってしまった時に作成されます。
インシデントレポートでは、誰が読んでも何が起こったかわかるように、時系列で事件の流れをまとめていきます。
「インシデント」の使い方
- インシデントの解決に時間がかかり、昨日は5時間も残業してしまった。
- A鉄道が重大インシデントを起こし、再発防止策を練ることになった。
- 後輩が集中治療室でインシデントを起こしてしまい、落ち込んでいる。
②の例文では鉄道・航空機の分野で「インシデント」が使われています。
③の例文では医療の分野で「インシデント」が使用されています。
「インシデント」の語源
インシデントの語源は英語の “incident” です。
英語の “incident” には以下のような意味があります。
- 出来事
- 小事件
- 紛争
- エピソード
カタカナ語の「インシデント」と共通している部分も多いですが、より広い意味を持っていることがわかります。
「インシデント」の類義語
インシデントには以下のような類義語があります。
- ヒヤリ・ハット:重大な事故には至らないが、直結してもおかしくない事例
- アクシデント:思いがけず起こった悪い出来事
- ハプニング:思いがけない出来事
- 事件:人々の関心を引く出来事
「インシデント」と「ヒヤリ・ハット」「アクシデント」「ハプニング」の違いについて詳しく見ていきましょう。
「インシデント」と「ヒヤリ・ハット」の違い
「インシデント」と「ヒヤリ・ハット」には以下のような違いがあります。
- インシデント:一歩間違えたら重大な事態になっていた事件全般を指す
- ヒヤリ・ハット:事件の中でも特に人間の不注意やミスが原因のもの
人間の不注意やミス以外で起こった事件は「インシデント」とは呼ばれますが、「ヒヤリ・ハット」とは呼ばれないのです。
また、「インシデント」は一歩間違えたら重大な事態になっていた事件全般を指すので、誰も気づかず発見されていない出来事も含みます。
「ヒヤリ・ハット」は発見した出来事のみを指します。
「インシデント」と「アクシデント」の違い
「インシデント」と「アクシデント」には以下のような違いがあります。
- インシデント:一歩間違えたら重大な事態になっていた事件
- アクシデント:重大な事態に至ってしまった事件
「インシデント」では重大な事態が起こっていませんが、「アクシデント」では重大な事態が起こってしまっているのです。
「インシデント」と「ハプニング」の違い
「インシデント」と「ハプニング」には以下のような違いがあります。
- インシデント:一歩間違えたら重大な事態になっていた事件
- ハプニング:起こったこと全般
「インシデント」に比べて「ハプニング」は広い意味を表しています。日常生活で起こるあらゆることは「ハプニング」と言えます。
「ハプニング」はその中でも特に、珍しい出来事が起こった時に使われることが多いでしょう。
まとめ
以上、この記事では「インシデント」について解説しました。
英語表記 | インシデント(incident) |
---|---|
意味 | 出来事・事件 |
語源 | incident |
類義語 | ヒヤリ・ハット アクシデント ハプニング 事件 |
「インシデント」はニュースでも時々出てくる単語です。知っておくと友達に自慢できるかもしれません。