「以降」の意味と使い方|その日を含む?「以後」「依頼」との違いは?

言葉

今回ご紹介する言葉は、熟語の「以降(いこう)」です。

言葉の意味・使い方・語源・類義語・対義語・英語訳・「以」が含まれる言葉の意味についてわかりやすく解説します。

☆「以降」をざっくり言うと……

読み方以降(いこう)
意味ある時から後ずっと
語源「ある地点を起点としてそれより」「後」という漢字の意味から
類義語その後、以後、以来、など
対義語以前、前に、かつて、など
英語訳from ~ on(~から)など

「以降」の意味をスッキリ理解!

以降(いこう):ある時から後ずっと

「以降」の意味を詳しく

「以降」とは、「ある時から後ずっと」という意味です。

つまり、「ある出来事を含んで、その後のこと」を指しています。

例で見ていきましょう。

  • 本日(11月10日)以降:10日、11日、12日、……
  • 明日以降:明日、明後日、……
  • 17時以降:17時、18時、19時、……
  • 9月以降:9月、10月、11月、……

「以降」は、過去を起点にして現在までのことを表すことが多いです。

ただ、未来を起点にして、その先の未来のことを指すこともあります。

ちなみに、「以降」は「已降」と表記されることもあります。

「以降」の使い方

「以降」の使い方には以下のような種類があります。

  1. 過去を起点として現在までのことを表す
  2. 未来を起点としてその先の未来のことを表す
  3. ビジネスでは範囲を明記するべき

それぞれの使い方について詳しく見ていきましょう。

使い方①:過去を起点として現在までのことを表す

「以降」は過去を起点として現在までのことを表すことが多いです。

過去を起点として過去までのことを表すこともありますが、その場合はどこまで含まれているかの範囲が示されていることが多いです。

例文
  1. 日本で洋服が普及していったのは、明治時代以降である。
  2. 10日以降は体調を崩していましたが、20日には回復して今では万全の状態です。

❶の例文では過去を起点として現在までのことを表しています。

このように、特にどこまで含まれているかの範囲が示されていない場合は、現在までのことを指すのが普通です。

❷の例文では、過去を起点として過去までのことを表しています。

使い方②:未来を起点としてその先の未来のことを表す

「以降」は未来を起点としてその先の未来のことを表すこともあります。

未来を起点としてその先の未来を表すのは、相手に何か依頼する時であることが多いです。

例文
  1. 会議の資料は10日以降に提出してください。
  2. 10月以降に弊社の新規事業が始まる予定です。

❶の例文では、会議の資料の提出を依頼しています。

この場合は、10日に資料を提出しても問題ありません。

使い方➂:ビジネスでは範囲を明記するべき

ビジネスで日時を指定する時には、どこからどこまでが含まれるか範囲を明記すべきです。

そのため、先ほどの例文は以下のように変えるべきです。

  • 会議の資料は10日以降に提出してください。
  • 会議の資料は10日から15日までの間に提出してください。

「以降」のみを使って、どこまで含まれるかの範囲を示さないと、資料が永遠に提出されない可能性もあるからです。

もちろん、上記の例文では常識的には会議が始まるまでには提出すべきことがわかりますが、会議の5分前などに提出されても困りますよね。

無駄なトラブルを避けるためにも、範囲をきちんと示すのがおすすめです。

「以降」の語源

「以降」を構成する漢字はそれぞれ以下のような意味になっています。

「以降」の漢字の意味
  • :「ある時・所を起点としてそれより」という意味
  • :「その時からあと」という意味

これら2つの意味の漢字を合わせて、「以降」は「ある時を起点としてそれより後」という意味を持っているのです。

「以」の漢字の意味を理解していれば、「以後」や「以下」などの熟語の意味も起点を含むことが理解できるようになります。

「以降」の類義語

以降には以下のような類義語があります。

  • 以後(いご):これから先。また、その時よりのち
  • 以来(いらい):その時から引き続き
  • その後:ある事があったあと
  • 爾後(じご):ある事があったあと
  • 今後(こんご):今から後。この後
  • より後(あと):ある時点から後の時間のこと
  • この方(かた):過去から現在までの間
  • 将来(しょうらい):これからの近い未来

これらの熟語は、「それよりのち」という意味を表しているという点で「以降」と共通しています。

ですが、それぞれの使い方は異なっています。

それぞれの言葉と「以降」との違いについて詳しく見ていきましょう。

「以降」と「以後」の違い

「以後」は「これから先、その時より後」という意味です。

「以降」と「以後」には以下のような違いがあります。

  • 以降:基準になっている出来事がはっきりしている
  • 以後:基準になっている出来事があいまい

「以降」と「以後」では基準となっている出来事が具体的かどうかが異なるのです。

たとえば、「以後」は「以後気をつけます」のように、基準になっている出来事をはっきりと示さずに用いることが多いです。

「以降」を使う場合には、「〇〇以降」として、基準となる出来事を示す必要があります。

なお、「以降」と「以後」はどちらも基準になっている出来事を含む表現です。

「以降」と「以来」の違い

「以来」は「その時から引き続いて」という意味です。

「以降」と「以来」には以下のような違いがあります。

  • 以降:過去のことも未来のことも表せる
  • 以来:過去のことしか表せない

「以降」と「以来」では未来のことを表せるかどうかが異なるのです。

「以来」は基準になっている出来事を含んでその時から、過去の一地点か現在までの範囲を表します。

たとえば、「入社以来、一生懸命頑張ってきた努力が報われた」という文の場合は「入社」という出来事から現在までのことを表しています。

「以降」は「来週からは9時以降外出禁止になる」のような形で未来のことを表せます。

「以降」と「以来」の違いとは?「以後」は?使い分けまで解説

「以降」と「その後」の違い

「その後」は「ある事があったあと」という意味です。

「以降」と「その後」には以下のような違いがあります。

  • 以降:基準になっている出来事を含む
  • その後:基準になっている出来事を含まない

「以降」と「以後」では基準となっている出来事を含むかが異なるのです。

たとえば、「プラモデルを注文したその後、届くのがずっと楽しみだった」という場合、「プラモデルを注文した時」のことは含みません。

「以降」と「爾後(じご)」の違い

「爾後」は「ある事があった後」という意味で、「その後」を書き言葉にした表現です。

「以降」と「爾後」には以下のような違いがあります。

  • 以降:基準になっている出来事を含む
  • 爾後:基準になっている出来事を含まない

「以降」と「爾後」では基準になっている出来事を含むかどうかが異なるのです。

「以降」と「その後」の違いと同じですね。

「爾後」は難しめの言葉なので、使われることはまれです。

「以降」と「今後」の違い

「今後」は「今から後」という意味です。

「以降」と「今後」には以下のような違いがあります。

  • 以降:基準が過去、現在、未来どれでも使える
  • 今後:基準が現在の時のみ使える

「以降」と「今後」では過去、未来を基準として使えるかどうかが異なるのです。

たとえば、「今後もよろしくお願いします」と言った場合は現在を起点として未来のことを指しています。

「以降」の対義語

以降には以下のような対義語があります。

  • 以前:その時よりも前。また、今より前の時点
  • 前に:ある時点より過去、もしくはある地点より前方のこと
  • かつて:むかしのこと
  • 先(さき)だって:前もって
  • あらかじめ:前もって

「以前」の意味

「ある時点よりも前」という意味である「以前」は、「以降」の対義語であるといえます。

「以前」は通常、基準となる出来事のことを含みます。

しかし、基準となる出来事を含まない場合もあるので注意が必要です。

たとえば、「明治時代以前」という場合は、「明治時代を含まずに、その前の江戸時代から前のこと」を指す場合もあります。

「以降」の英語訳

以降を英語に訳すと、次のような表現になります。

  • from ~ on
    (~から)
  • no earlier than
    (~以降に)
  • since
    (~以降に)
  • on and after
    (~以降に)
  • as of
    (~以降に)
  • Or later
    (以降)

“from ~ on” の意味

英語で「以降」の意味を表したい場合、 “from ~ on” を用いましょう。

たとえば、「平安時代以降」は英語で “from Heian period on” となります。

“on” の代わりに “onwards” という単語が用いられていることもありますが、意味は同じです。

“from” の意味

“from” のみで「以降」を表すこともできます。

しかし、“from” は基準となっているものを含めるかどうかあいまいな場合があります。

そのため、基準となっているものが含まれているとはっきり示したい時には後ろに(inclusive)とつけます。

たとえば、「7時以降」を表したい時には “from 7 o’clock (inclusive)” と表記します。

“no earlier than” の意味

“no earlier than” という言い回しもあります。

たとえば、「願書は、3月10日以降に提出されなければならない」という文章は “The application must be filed no earlier than the 10th March.” と訳すことができます。

 “on and after” の意味

“on and after” などの表現で「以降」と表現することができます。

ただ、単に “after” と言うと、基準となる出来事を含まない場合もあり、「以降」とは微妙に意味がずれてしまうので注意が必要です。

「以」が含まれる言葉の意味

「以降」と同じように「以」が含まれる言葉には以下のようなものがあります。

  • 以内
  • 以外
  • 以上 / 以下
  • 以南 / 以北 / 以西 / 以東

それぞれの意味について詳しく見ていきましょう。

以内

「以内」は基準となる数値より小さい範囲という意味です。

「〇〇以内」という形で用いられることが多く、「〇〇」に入っているものが基準になります。

たとえば、「2日以内に返信します」と書かれていたら、2日が経過するよりも前に返信することを表します。

以外

「以外」は「基準となるものの他すべて」という意味です。

「〇〇以外」という形で用いられることが多く、「〇〇」に入っているものの他すべてのことを表します。

たとえば、「ピーマン以外に嫌いな食べ物はない」と言った場合は、ピーマンのみ嫌いであることを表せます。

以上 / 以下

  • 以上:基準となる値を含んで、それより上の範囲
  • 以下:基準となる値を含んで、それより下の範囲

たとえば、「18歳以上」と言った場合は「18歳、19歳、20歳、……」のことを表します。

「18歳以下」と言った場合は「18歳、17歳、16歳、……」のことを表します。

以南 / 以北 / 以西 / 以東

  • 以南:その地点を含めて、それより南
  • 以北:その地点を含めて、それより北
  • 以西:その地点を含めて、それより西
  • 以東:その地点を含めて、それより東

たとえば、「北海道以南」と言った場合は北海道も含め、それより南の地域のことを表します。

「以左」「以右」という言葉はない

「以左」「以右」という言葉はないので注意しましょう。

基準点を含めてそれよりある方角の場所のことを表したい時には、「以東」「以西」などを代わりに用いると良いでしょう。

まとめ

以上、この記事では「以降」について解説しました。

読み方以降(いこう)
意味ある時から後ずっと
語源「ある地点を起点としてそれより」「後」という漢字の意味から
類義語その後、以後、以来、など
対義語以前、前に、かつて、など
英語訳from ~ on(~から)など

「以降」という言葉が指している範囲が分からず、混乱してしまう人も多いと思います。

この記事を読んで以降、困ることがなくなれば幸いです。

いざ「以降」という言葉を使う場面が来た時のために、しっかりと意味と使い方を理解しておきましょう。