今回ご紹介する言葉は、故事成語の「覆水盆に返らず(ふくすいぼんにかえらず)」です。
この言葉は、聞いたことのある人が多いでしょう。日常生活の中でもよく使われる言葉です。
しかし、その正しい意味や由来をきちんと知っていますか?
今回は、「覆水盆に返らず」の意味や由来、使い方、類義語、対義語、英語訳などについてわかりやすく解説します。
このページの目次
「覆水盆に返らず」の意味をスッキリ理解!
「覆水盆に返らず」の意味を詳しく
「覆水盆に返らず」のもともとの意味は、「1度離婚した夫婦は、元には戻れない」という意味です。
そこから「1度起きてしまったことは、2度と元には戻すことができない」という意味にが生まれました。
「覆水」というのは「こぼれた水」という意味です。「盆」とは、お盆のことで、広い意味では器のことを指していると考えていいでしょう。直訳すると「こぼれてしまった水は、もうお盆に戻すことができない」というものです。
ちなみに、水が自分でお盆に戻っていくわけではないので、「帰らず」ではなく「返らず」が適切です。
「覆水盆に返らず」の使い方
- セーブデータが消えてしまいショックだったが、覆水盆に返らずだ。
- 彼女と別れてしまったが、今となっては覆水盆に返らずだ。
- 間違えて来客用のお菓子を食べてしまった。覆水盆に返らずの状態だ。
「覆水盆に返らず」の由来
「覆水盆に返らず」の由来は、紀元前11世紀頃の中国までさかのぼります。
紀元前11世紀の中国は、周という名前の国でした。この国に、太公望(たいこうぼう)という人物がいました。
太公望には妻がいました。2人は貧しかったにもかかわらず、彼は働きもせずに本ばかりを読んでいました。あきれた妻は、太公望に離婚を申し出ます。
その後、太公望は出世し、とても高い役職につくことになります。それを聞きつけた前妻は太公望に復縁してほしいと言います。
すると太公望は持っていたお盆の水をこぼし、妻に「この水をお盆に戻すことができたなら復縁しよう」と言います。もちろん妻はそんなことはできません。
すると太公望が「この盆の水をもとに戻すことができないように、私たちの関係も元に戻すことはできないのです」と言いました。
この逸話がもとになって「覆水盆に返らず」という言葉ができました。
「覆水盆に返らず」の類義語
- 後の祭り:物事が終わった後に後悔してもどうにもならないこと
- 後悔先に立たず:過ぎたことを悔んだり、落ち込んでも取り返しがつかない状態
「覆水盆に返らず」の対義語
「覆水盆に返らず」には以下のような対義語があります。
- 転ばぬ先の杖:準備しておけば、予想していない出来事にも対応できるという意味
- 備えあれば患いなし:用意をしておけば心配は無いという意味
これらの言葉は、「覆水盆に返らず」の完全な対義語ではなく、「覆水盆に返らず」の状態にならないための教訓と言ったほうがいいかもしれません。
「覆水盆に返らず」の英語訳
「覆水盆に返らず」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- “It is no use crying over spilt milk.” (こぼれたミルクを嘆いてもどうにもならない)
- “A broken egg cannot be put back together.” (潰れた卵は元通りにできない。)
- “Never comb a bald head.” (禿げた頭にくしを使うな。)
日本語では「水」の部分が、英語では「ミルク」や「卵」になっていますね。しかし、大本の意味はほとんど変わりません。
まとめ
以上、この記事では「覆水盆に返らず」について解説しました。
読み方 | 覆水盆に返らず(ふくすいぼんにかえらず) |
---|---|
意味 | 1度起こったことは元には戻らない |
由来 | 復縁を申し出た前妻に、太公望が「盆に水を戻せ」と言ったことから |
類義語 | 後の祭り、後悔先に立たずなど |
対義語 | 転ばぬ先の杖、備えあれば患いなしなど |
英語訳 | It is no use crying over spilt milk(こぼれたミルクを嘆いてもどうにもならない) |
「覆水盆に返らず」という故事成語はとても有名な言葉ですね。
間違えた使い方をして、恥ずかしい思いをしてしまっても「覆水盆に返らず」です!
日常生活で使うことも多いのでこの機会にきちんと理解しておきましょう。