今回ご紹介する言葉は、ことわざの「歯に衣(きぬ)着せぬ」です。
言葉の意味や使い方、由来、類義語、対義語、英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「歯に衣着せぬ」をざっくり言うと……
読み方 | 歯に衣(きぬ)着せぬ |
---|---|
意味 | 相手に遠慮せずに、思ったことを率直に言うこと |
由来 | 歯に衣が被った状態でははっきり話せないという、比喩的状況の否定 |
類義語 | 歯に衣を着せない、直言居士、腹蔵なくなど |
対義語 | 奥歯に衣着せる、奥歯に物が絡まる、奥歯に物が挟まる |
英語訳 | call a spade a spade (あからさまに言う) |
このページの目次
「歯に衣着せぬ」の意味をスッキリ理解!
「歯に衣着せぬ」の意味を詳しく
「歯に衣着せぬ」とは、相手に遠慮せずに、思ったことを率直に言うことを意味することわざです。
仕事や学校生活、私生活において、相手と接する際に、人間は相手の感情や思惑を気にして発言をすることがほとんどです。「思っていても言えない」というような状況に心当たりは少なからずあるはずです。
しかし、中には相手の感情や思惑を気にすることなく、思ったことをズバズバと伝える人もいます。これは、その人自身が意識をして率直に伝えている場合と、意識せずとも思っていることを率直に伝える性格である場合とに分けられます。
どちらの場合においても、相手に遠慮せずに、思ったことを率直に伝えることを「歯に衣着せぬ」と表現することができます。
また、「相手の感情や思惑を気にしない、遠慮しない」と言うと、嫌なことを何でもストレートに言ってくるというイメージからマイナスな意味で捉えてしまいがちです。批判的な人や毒舌な人をイメージするかもしれません。
しかし、必ずしもそうではありません。思ったことをそのまま直接伝えるという「率直さ」を評価して使う場合が非常に多いです。
このように、躊躇(ちゅうちょ)せず、単刀直入に物事を言える人に対して、賞賛の意を込めて使う場合が多いということは「歯に衣着せぬ」の大きなポイントです。
注意が必要なのは漢字と読み方です。「衣」は、「ころも」ではなく「きぬ」と読み、漢字は「絹」ではありません。間違いが多いので注意してください。
「歯に衣着せぬ」の使い方
- 彼の歯に衣着せぬ物言いは、有権者の心を引き付けた。
- 上司の歯に衣着せぬアドバイスは、きついときもあるが仕事において非常に役に立つ。
- 彼は相手が誰であろうとも、臆せずに歯に衣着せぬ物言いで持論を述べる。
- 先輩の歯に衣着せぬ物言いは怖くて苦手だ。
①の例文は、政治家として思っていることを率直に伝える話し方が、有権者に受けたという場面です。
②の例文は、上司のアドバイスはストレートな表現なので、傷つくこともあるが、役に立つことも多いという意味で、感謝の意が含まれています。
③の例文は、相手が誰であろうと遠慮せずに持論を展開する人について述べたものです。この例文だけでは、彼をプラスに評価しているのかどうかは分かりません。
④の例文は、思ったことをズバズバ伝える先輩を苦手としている状況において、「歯に衣着せぬ」を使っています。
「歯に衣着せぬ」の由来
「歯に衣着せぬ」は、歯に衣を着せた状態という比喩表現の否定です。
歯に衣、つまり洋服を着せるとどうなるか想像してみてください。あくまでイメージですが、口がどもってしまいうまく話せないことが想像できます。つまり、はっきり話せないのです。
「歯に衣着せぬ」はその否定です。歯に衣が着せられた状態でははっきり話せないが、着せなければはっきり話せるということです。
これが「歯に衣着せぬ」の由来です。
「歯に衣着せぬ」の類義語
「歯に衣着せぬ」には以下のような類義語があります。
- 歯に衣を着せない:「歯に衣着せぬ」と同義
- 直言居士(ちょくげんこじ):相手が誰であろうとも、臆せずに正論を述べる男性のこと
- 腹蔵(ふくぞう)なく:隠し事が無い状態のこと
- 胸襟(きょうきん)を開く:心の中をすべて打ち明けること
- 舌鋒鋭く(ぜっぽうするどく):弁舌が鋭いことのたとえ
- 忌憚(きたん)なく:遠慮がない状態のこと
- 舌端火(ぜったんひ)を吐く:激しい勢いで鋭く持論を述べること
「歯に衣着せぬ」の対義語
「歯に衣着せぬ」には以下のような対義語があります。
- 奥歯に衣着せる:思ったことを率直に言わず、遠回しな言い方をすること
- 奥歯に物が絡(から)まる:思ったことをそのまま言わずに、隠し事をするような言い方をすること
- 奥歯に物が挟まる:思ったことをそのまま言わずに、隠し事をするような言い方をすること
「歯に衣着せぬ」の英語訳
「歯に衣着せぬ」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- Call a spade a spade
(あからさまに言う) - wear your heart on your sleeve
(袖に心臓を着る、率直に言う) - not mince words
(遠慮なくはっきりと)
「鋤」は「すき」と読みます。土を掘って畑などを耕すシャベルのような農具です。
まとめ
以上、この記事では「歯に衣着せぬ」について解説しました。
読み方 | 歯に衣(きぬ)着せぬ |
---|---|
意味 | 相手に遠慮せずに、思ったことを率直に言うこと |
由来 | 歯に衣が被った状態でははっきり話せないという、比喩的状況の否定 |
類義語 | 歯に衣を着せない、直言居士、腹蔵なくなど |
対義語 | 奥歯に衣着せる、奥歯に物が絡まる、奥歯に物が挟まる |
英語訳 | call a spade a spade (あからさまに言う) |
「歯に衣着せぬ」の意味や使い方など、理解することができたでしょうか。
ネガティブな状況で使うイメージが持たれがちなことわざですが、どちらかというとポジティブな状況で使うことのほうが多いです。そこはこのことわざの大きなポイントです。
また、「歯に衣着せる」というように肯定での使い方は正式なものではありません。基本的には否定表現で使うことは、ぜひ覚えておきましょう。