「業を背負う」とは「過去の罪を償うために生きること」「自分の宿命を探し求めること」の2つの意味がある言葉です。
「業を背負う」というと、何となくネガティブなイメージをもつ人が多いのではないでしょうか。
実は、もともとはネガティブな意味をもたない言葉でしたが、今ではネガティブな意味でよく使われているのです。
「業を背負う」は日本の代表的な宗教である仏教の考え方が由来ですので、意味や使い方をしっかり理解しておきましょう。
- 「業を背負う」の意味は「過去の罪を償うために生きること」「自分の宿命を探し求めること」
- 「業を背負う」のよくある言い回しは「業を背負い」「業を背負って」「業を背負った〇〇」
- 業を背負う人の特徴は「自分の気持ちに素直ではない」など
- 「業を背負う」の類義語は「カルマを背負う」「宿命を背負う」「因縁を背負う」など
- 「業を背負う」の対義語は「徳を積む」「昇華する」
- 「業を背負う」の英語訳は「karma」
☆「業を背負う」をざっくり言うと……
読み方 | 業を背負う(ごうをせおう) |
---|---|
意味 | 過去の罪を償うために生きること 自分の宿命を探し求めること |
類義語 | カルマを背負う 宿命を背負う 因縁を背負う など |
対義語 | 徳を積む 昇華する |
英語訳 | karma(業。カルマ) |
「業」がつく語 | 身口意の三業 自業自得 業が深い など |
このページの目次
「業を背負う」の意味
- 過去の罪を償うために生きること
- 自分の宿命を探し求めること
「業を背負う」は「過去の行いによって、現在何かすべきことがある」という意味です。
細かく分けると、自分の過去の行いに「自覚がある場合」と「自覚がない場合」で意味が異なります。
しかし、どちらの場合でも、過去の行いが「善(よ)い行い」か「悪い行い」かは決まっていないため、ポジティブな意味もネガティブな意味ももちません。
ここからは、自分の過去の行いに「自覚がある場合」と「自覚がない場合」にわけてそれぞれ見ていきましょう。
意味①過去の罪を償うために生きること
自分の過去の行いに「自覚がある場合」は、「過去に罪となる悪い行いをして、その罪を償うために生きること」を表します。
※罪となる悪い行いが多い
↓
その罪を償うために生きている
=「業を背負う」
意味②自分の宿命を探し求めること
自分の過去の行いに「自覚がない場合」は、「過去に何らかの行いをして、それによる自分の宿命を探し求めること」を表します。
※悪い行いとは限らない
↓
それが原因で現在すべきことがある
※罪を償うこととは限らない
↓
それが何なのか探し求める
=「業を背負う」
「業」の意味
「業を背負う」の「業」には以下のような意味があります。
- (仏教の言葉で)人間が行う善悪の行為
- 前世の行為が、現世に影響を及ぼすこと
- 理性で止められない心の動き
「業」は、古代インドで用いられていたサンスクリット語の「karman(カルマ)」を日本語に訳した言葉です。
「業」には本来、ポジティブな意味もネガティブな意味もありませんが、ネガティブな意味で使うことが多いです。
「過去の罪を償うために生きること」では、①「(仏教の言葉で)人間が行う善悪の行為」の意味で使われています。
「自分の宿命を探し求めること」では、②「前世の行為が、現世に影響を及ぼすこと」の意味で使われています。
「業」は「ごう」とも「ぎょう」とも読みますが、「業を背負う」の場合は「ごうをせおう」と読みます。
「業を背負う」の使い方
「業を背負う」は主に以下のような言い回しで使います。
- 業を背負い
- 業を背負って
- 業を背負った〇〇
「業を背負う」には2つの意味があります。
- 過去の罪を償うために生きること
- 自分の宿命を探し求めること
それぞれの意味にわけて例文を見てみましょう。
使い方①過去の罪を償うために生きること
- あなたは前世の業を背負ってしまっています。
- 業を背負うような生き方はやめなさい。
- 悪事を働けば、深い業を背負うことになります。
使い方②自分の宿命を探し求めること
- お金で苦労をしてばかりなので、業を背負っているのかもしれない。
- 人間は誰しも少なからず業を背負って生きている。
- どうせなら、善い業を背負った人間になりたいものだ。
「業を背負う」は仏教の考え方がもとになっている言葉です。
そのため、他の宗教を信仰している人には意味が伝わりにくかったり、不快に感じさせてしまったりする可能性があります。
「業を背負う」人の特徴
「業を背負う」は、本来ポジティブな意味もネガティブな意味ももちません。
しかし、現世でうまくいっていないことがある場合、悪い「業」を背負っている可能性があります。
「業を背負う」人の特徴には以下のようなものがあります。
- 自分の気持ちに素直ではない
- 自分の思う通りにならないと気が済まない
- 周囲の人との関係がうまくいっていない
それぞれ見ていきましょう。
特徴①自分の気持ちに素直ではない
自分の気持ちに素直でないと、より多くの悪い「業を背負う」ことになってしまいます。
本来、自分と向き合い正直に生きることで、過去の罪を償ったり、自分の宿命を見つけることができたりします。
しかし、頼み事を無理して引き受けたり、嘘をついたりすると悪い「業を背負う」ことになってしまいます。
特徴②自分の思う通りにならないと気が済まない
自分の思う通りにならないと気が済まない人も、より多くの悪い「業を背負う」ことになってしまいます。
生きていると、自分の思う通りにならないこともたくさんあります。
その環境のなかで生きることで、魂を成長させることができるのです。
しかし、何でも自分の思う通りにしようとすると悪い「業を背負う」ことになってしまいます。
特徴③周囲の人との関係がうまくいっていない
周囲の人との関係がうまくいっていない場合、すでに業を背負っている可能性があります。
家族や親しい友人は自分の魂を成長させるものです。
その人たちと関係がうまくいっていないということは、過去の罪を償ったり、自分の宿命を見つけるためなのかもしれません。
「業を背負う」の類義語
「業を背負う」には以下のような類義語があります。
- カルマを背負う
①過去の罪を償うために生きること
②自分の宿命を探し求めること - 宿命(しゅくめい)を背負う
生まれる前から決まっている運命を背負って生きること - 因縁(いんねん)を背負う
前世から決まっている運命を背負って生きること - 十字架(じゅうじか)を背負う
耐えがたい苦難や消えない罪などをいつまでも背負って生きること
「業を背負う」と「カルマを背負う」の違い
「業を背負う」と「カルマを背負う」は、同じ意味です。
なぜなら、「業」と「カルマ」は、どちらもサンスクリット語の「karman」を日本語にした言葉だからです。
ただし、一般的には「業を背負う」のほうがよく使われます。
「業を背負う」の対義語
「業を背負う」には以下のような対義語があります。
- 徳(とく)を積む
善い行いをすること - 昇華(しょうか)する
物事が一段上の状態に高められること
「業を背負う」の英語訳
「業を背負う」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- karma
(業。カルマ)
上記の英語表現を使った例文は以下のようなものがあります。
- We must live carrying the burden of our karma.
(私たちは業を背負って生きなければならない。)
“burden” は「負担」という意味で、 “burden of our karma” で「私たちの業の負担」という意味です。
関連:「業」のつく語
「業」の付く言葉には以下のようなものがあります。
- 身口意の三業(しんくいのさんごう)
人間が行うすべての行為から生まれる罪 - 身業(しんごう)
身体で表すすべての動作 - 口業(くごう)
言葉がもととなり、善悪につながる行為 - 意業(いごう)
心の動き - 自業自得(じごうじとく)
自分の行いが、自分に返ってくること - 業が深い
前世の罪が重く、現世で多くの報いを受けているさま - 業を曝(さら)す
前世の悪事によって受けた恥を、現世で人目に触れるようにすること - 業を煮やす
冷静だった心の動きが怒りで激しくなること - 業が煮える
冷静だった心の動きが怒りで激しくなること - 業を沸かす
冷静だった心の動きが怒りで激しくなること - 業を重ねる
何かを繰り返し行うこと。
善い行いであれば「徳を積む」に同じ - 業を積む
何かを繰り返し行うこと。
善い行いであれば「徳を積む」に同じ
「業を背負う」のまとめ
以上、この記事では「業を背負う」について解説しました。
読み方 | 業を背負う(ごうをせおう) |
---|---|
意味 | 過去の罪を償うために生きること 自分の宿命を探し求めること |
類義語 | カルマを背負う 宿命を背負う 因縁を背負う など |
対義語 | 徳を積む 昇華する |
英語訳 | karma(業。カルマ) |
「業」がつく語 | 身口意の三業 自業自得 業が深い など |
善い行いをして、悪い業を背負わないように生きていきましょう。