今回ご紹介する言葉は、熟語の「欺瞞(ぎまん)」です。
今回の記事では、「欺瞞」の意味・つく言葉・使い方・類義語・対義語・英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「欺瞞」をざっくり言うと……
読み方 | 欺瞞(ぎまん) |
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意味 | 実や真実をいつわり、人をだますこと |
類義語 | 詐欺、虚偽、瞞着、欺騙、欺罔など |
対義語 | 正直、信実、誠実、忠実など |
英語訳 | deception, deceit fraud, deceitful, deceive |
「欺瞞」の意味をスッキリ理解!
「欺瞞」の意味を詳しく
「欺瞞」とは、事実や真実をいつわって、他人をだますことを言います。
「欺瞞」を構成する漢字には以下のような意味があります。
- 欺:言葉を上手く使って嘘を本当のことのように思わせること
- 瞞:だまし、あざむくこと
ちなみに、「欺瞞」は騙されたことによる不利益が極めて大きな場合に用いられます。
相手を騙して犯罪行為を行ったり、不正を隠して相手に大きな損害を与えたりすることを指します。
「欺瞞」はマイナスの影響力が大きいことから、「政府の欺瞞」や「国民を欺瞞する」など、主体や目的語の規模も比較的大きいものになることが多いです。
そのため、小さな嘘や軽い冗談などに対して用いられることはありません。
「欺瞞」がつく言葉
「欺瞞」がつく言葉には以下のようなものが挙げられます。
- 自己欺瞞
- 欺瞞作戦(欺瞞工作)
- 欺瞞者
- 欺瞞心
それぞれの言葉の意味について詳しく見ていきましょう。
自己欺瞞
「自己欺瞞」とは、本来は自分の良心に背くはずの言動を、もっともらしいものであると正当化することを言います。
文字通り、自分で自分を欺いている状態である「自己欺瞞」は、自分を守ろうとする防衛本能の1種だと言われています。
「自己欺瞞」には以下の2つのケースがあります。
- それが良心に背く行為だとわかっていながらする場合
- 無意識のうちにしてしまう場合
どちらにせよ、「自己欺瞞」をしている人は、自分に問題があるということを認められていません。
そのため、問題を解決する力が身につかず、結果として同じ問題を繰り返してしまいます。
また、「自己欺瞞」は、自分を欺くようなことはしていないという「自己欺瞞」へとつながり、次第に悪循環にはまることが懸念されます。
ひどくなると、体調を崩したり、うつ状態になっていく危険性も指摘されています。
「自己欺瞞」は、心身の健康にとって、決してよいものとは言えません。
自分を大切にするためにも、自己を欺くようなことは避けたいものです。
自己欺瞞の例①:責任転嫁
Aさんの起床時刻が予定より遅くなってしまったとします。
この時、親などの人に「起こしてくれなかったのが悪い」と責めるのは「自己欺瞞」です。
Aさんは、寝坊したことが自分の責任であることを、心のどこかではわかっています。
しかし、自分がいけないことをしたという事実を認められず、結果として他者を責めてしまい、自分の良心を欺いています。
このような「自己欺瞞」は他人に責任を押し付けているため、「責任転嫁」をするタイプの「自己欺瞞」です。
自己欺瞞の例②:他人が期待する自分を演じる
Bさんは他人からの頼みを断れないタイプで、引き受けたくない頼み事でも「やります」と答えてしまいます。
これは他人が期待する自分を演じることによって生まれる「自己欺瞞」です。
Bさんは、他者からの評価をあげようとする欲求を前にして、自分ではなく他に適任者がいるはずだという本心を欺いています。
そして、結果として他者から評価されることで、偽りの自分を正当化しようとします。
自己欺瞞の対処法
「自己欺瞞」を克服するには主に以下のような対処法があります。
- 視野を広げる
- 自分の短所や弱さを受け入れる
- 固定観念を捨てる
- 自分を客観視する
- 強い信念を持つ
この中でも特に大切なのは視野を広げることです。
具体的には、本を読んだり、ふだん関わらない人と話してみたりすると自分とは違う考えにたくさん出会います。
そうすると自分の価値観が必ずしも正しいわけではないことに気づくはずです。
欺瞞作戦(欺瞞工作)
「欺瞞作戦(欺瞞工作)」は軍事用語で、敵に偽りの情報を与えることで混乱させ、有利に戦いを進める戦法のことです。
「欺瞞作戦」には、主に次のようなものがあります。
- 兵力を、事実より小さく偽る
- 景色に溶け込んで見えないようにし、敵を油断させる
- 撤退するふりをして、相手を罠がある場所に誘い込む
- 敵をある場所に誘導して、囲い込む
欺瞞者
「欺瞞者」とは、「欺瞞をする人」のことを指します。
欺瞞心
「欺瞞心」とは、「人をあざむこうとする心」のことです。
「欺瞞」の使い方
- 都合の悪い事実を隠し、国民に欺瞞に満ちた言葉を伝えるようなことはあってならない。
- 大切な友人を誤った情報で欺瞞することがあってはならない。
- 実際に商品を購入してみたが、あの広告は欺瞞的だったと言わざるを得ない。
- 彼がしてきた数々の悪行のことを考えると、今回も彼の発言の欺瞞性は高い気がした。
上記の例文のように、「欺瞞」は名詞の形でも「欺瞞する」という動詞の形でも用いられる言葉です。
❶の例文の「欺瞞に満ちた」はよく使われるフレーズです。嘘にまみれていることを指しています。
❷の例文は「欺瞞」を動詞の形で用いた例です。
❸の例文の「欺瞞的」は、他人をだますようなものであることを表す形容詞的な表現です。
❹の例文の「欺瞞性」は、嘘らしさの度合いのことを指しています。「欺瞞性が高い」とは、つまり嘘である可能性が高く感じられるということです。
「欺瞞」の類義語
「欺瞞」には以下のような類義語があります。
- 詐欺(さぎ):偽った事実や真実を他人に伝えること。金品をだまし取ること
- 虚偽(きょぎ):真実ではないことを真実のように見せかけること
- 瞞着(まんちゃく):事実や真実をごまかし、人をだますこと
- 欺騙(ぎへん):他人をだますこと。軍事において、敵軍に誤った情報を与えて混乱させること
- 欺罔(ぎもう):他人をだますこと。法律上、他人を欺いて間違いへと導く行為
- ごまかす:人目をあざむいて不正を働く
- ペテン:嘘をついて人を騙すこと
「詐欺」の意味
「詐欺(さぎ)」は、法的に人を欺く行為を言います。
偽りの事実や真実を他人に伝え、それによって一定の不利益を相手方に与えることや、金品をだまし取る行為を指します。
前者は民法で、後者は刑法で裁かれます。
「欺騙」の意味
「欺騙(ぎへん)」は、敵を偽りの情報で欺き、戦況を有利に進める戦法のことです。
主に軍事において敵をだます場合に使われます。
先ほどご紹介した「欺瞞作戦」とほぼ同じ意味です。
「欺罔」の意味
「欺罔(ぎもう)」は、主に詐欺をする目的で相手方をだますことを言います。
「欺瞞」の対義語
「欺瞞」には以下のような対義語があります。
- 正直(しょうじき):嘘や偽りがないさま
- 信実(しんじつ):偽りがなく、まっすぐな姿勢であること
- 誠実(せいじつ):私欲に溺れず、まっすぐな姿勢であること
- 忠実(ちゅうじつ):真心があること。内容に一切のごまかしがないこと
- 信頼(しんらい):信じて頼りにすること
「欺瞞」は行為を表す言葉ですが、上記に挙げた 4つの対義語は物事の性質や人柄を表しています。
「欺瞞」の英語訳
「欺瞞」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- deception
(ごまかすこと、だますこと) - deceit
(悪意を持ったごまかし) - fraud
(詐欺) - deceitful
(偽りの、(外見が)見誤られるような) - deceive
(だます)
“deception” の場合は必ずしも何かをだまし取ろうとしているわけではないですが、“deceit” の場合は詐取を目的にした強烈な悪意があります。
上記 5つの表現を用いた例文は以下の通りです。
- Our teacher saw through his deception.
(先生は、彼のごまかしを見抜いた。) - She is incapable of depriving somebody of something by deceit.
(彼女は、誰かから何かをだまし取ろうなんてことは出来ない人間だ。) - He was arrested on charge of fraud.
(彼は、詐欺の容疑で逮捕された。) - The advertising I saw this morning was deceitful.
(今朝見た広告は欺瞞的なものだった。) - They deceived me by using clever tricks.
(彼らは、巧妙な手口で私をだました。)
ちなみに、「自己欺瞞」は “self-deception” 、「欺瞞作戦」は “military deception” と表現します。
まとめ
以上、この記事では「欺瞞」について解説しました。
読み方 | 欺瞞(ぎまん) |
---|---|
意味 | 実や真実をいつわり、人をだますこと |
類義語 | 詐欺、虚偽、瞞着、欺騙、欺罔など |
対義語 | 正直、信実、誠実、忠実など |
英語訳 | deception, deceit fraud, deceitful, deceive |
「欺瞞」は、単なる冗談とは次元が違うダメージを伴う行為です。
特に、「自己欺瞞」は無意識のうちに行われてしまうものでもあるため、日ごろから、見栄を張らずに正直でいることを心がけるようにしましょう。