言及とは「その事柄まで話す」という意味です。
言及という言葉は、使い方が難そうと思ってしまいますよね。
実は、書いてある文章に対しても使うことができるのです。
この記事では、言及の意味や使い方を詳しく解説します。
☆「言及」をざっくり言うと……
読み方 | 言及(げんきゅう) |
---|---|
意味 | その事柄まで話す |
類義語 | 言う 述べる ~について話す など |
対義語 | 未言及 ノーコメント コメントしない など |
英語訳 | refer to〜(〜について言い及ぶ) reference(言い及ぶこと) mention(簡単に述べる) など |
「言及」の意味
その事柄まで話す
言及は、「その物事について、話の中で触れる」という意味です。
言及を分解すると、それぞれの漢字には以下のような意味があります。
- 言
言葉を口に出して言うこと - 及
目的に到達すること
つまり、「ある到達した目的を、口に出して言うこと」を表します。
言という漢字は、「ごん」とも読みます。
ただし、言及は「ごんきゅう」ではなく「げんきゅう」と読むため注意しましょう。
「言及」の使い方
言及はやや硬い表現であるため、以下のような場面で使います。
- 主に政治や経済についての報道
- 法律についての文章
- ビジネスシーンの文章
- エンタメ作品についての文章
言及は、以下のような言い回しで使います。
- ~に言及する
〜について話す - ~に言及しない
〜について話さない - 言及すべき
その事柄について話すべき - 言及を避ける
その事柄について話さない - 言及する必要はない
その事柄について話す必要はない - 一言も言及がない
一言もその事柄について話さない
例文を見てみましょう。
- 論文発表会では、もう少し自分の考えについて言及するとよい。
- 今回のサミットで、大臣は環境問題についても言及した。
- 謝罪会見では、不貞行為があったかどうかについては言及しなかった。
- 私には、彼女がわざと自分の罪に言及しなかったように思える。
- 記者会見では、視聴者が知りたいであろうことを言及すべきだ。
- 弁護士に相談する前であるため、言及を避けたほうがよい。
- この場では、過去の失敗について言及する必要はない。
- 会見では、会社の抱えていた負債について一言も言及がなかっため、株主たちは納得しないだろう。
「言及」の敬語表現
言及を敬語にする場合には、以下のような表現にします。
- 言及される
- 言及なさる
「される」「なさる」は、「する」の尊敬語であるため、目上の相手に対して使うことができます。
例文を見てみましょう。
- 首相は、次の選挙についても言及された。
- 社長自ら今後の経営について言及なさった。
「言及」を使う時の注意点
言及を使う時は、以下の点に注意しましょう。
- 書いてあることにも使う
- 多用しない
- 人を傷つけない
それぞれ見ていきましょう。
注意点①書いてあることにも使う
言及は、実際に口で言うだけではなく、文章の中に書いてあることに対しても使います。
- 雑誌の記事では、彼の過去にまで言及していた。
- もっと彼女の心理に言及した文章を書いてほしい。
文章の中に書いてあることを、書及とはいいません。
書及という熟語は存在せず、「書き及ぶ」と表現します。
「書き及ぶ」は以下のような意味であるため、言及と混同しないように注意しましょう。
- その物事について、文章の中で触れる
- 絵や文章で十分に表現する
注意点②多用しない
言及は、日常会話で多用することは避けたほうが無難です。
なぜなら、ビジネスシーンなどの改まった場面で使うことが多いため、日常会話で使うと堅苦しくなるからです。
また、意味を正しく理解している人が少ないため、正しく伝わらないこともあります。
注意点③人を傷つけないように使う
人に対して言及をする時には、相手を傷つけないように注意しましょう。
言及することは、きつい印象を与えてしまうことがあるため、慎重に言葉を選びましょう。
特に、不祥事やトラブルなどについて言及する時には、より一層気をつけて使いましょう。
「言及」の類義語
言及には以下のような類義語があります。
- 言う
言葉を口に出す - 述べる
思うことを言葉にして表現する - ~について話す
- ~についてコメントする
- 論及(ろんきゅう)
ある事柄にまで言い及ぶこと - 議題にする
物事を論じる対象として出すこと - 話題にする
物事を論じる対象として出すこと - 話題に触れる
物事を論じる対象として出すこと - 取り上げる
物事を論じる対象として出すこと - 話題に上(のぼ)る
人々のうわさの対象となること - 話に上(のぼ)らせる
それについて話をすること - 論点とする
それについて話をすること - 題材にする
それについて話をすること - 話に触れる
それについて話をすること - 話のネタにする
「それについて話をすること」のくだけた表現 - まな板に載(の)せる/俎上(そじょう)に載せる
議論などの対象として取り上げる - 暗示
それとなく知らせること
「言及」と「言う」の違い
「言及」と「言う」は以下のような違いがあります。
- 言及
特定の事柄について話す
(口頭または文章で) - 言う
単に何かを口に出す
(口頭のみで)
「言及」と「言う」は、「何をどのような手段で言うか」が異なります。
「言及」は、その事柄を口に出したり、文章に書いたりすることを表します。
一方、「言う」は、口から音を発することを表すため、事柄を話すだけでなく、単に「あー」などと発する場合にも使います。
ただし、「言う」は文章では使えません。
「言及」と「論及」の違い
言及と論及は以下のような違いがあります。
言及 | 論及 | |
---|---|---|
意味 | その事柄を詳しく話す その事柄を少し話す | その事柄を詳しく話す |
言及と論及は、「その事柄についてどのくらい話すか」が異なります。
言及は、その事柄について、詳しく話すことと、少しだけ話すことを表します。
一方、論及は、その事柄について詳しく話すことを表します。
論及は、自分の意見を言う場合などに使います。
「言及」と「触れる」の違い
「言及」と「触れる」は以下のような違いがあります。
言及 | 触れる | |
---|---|---|
意味 | その事柄を詳しく話す その事柄を少し話す | その事柄を少し話す |
表現 | 言及する | 話題に触れる 話に触れる 核心に触れる |
「言及」と「触れる」は、「その事柄についてどのくらい話すか」が異なります。
「言及」は、その事柄について、詳しく話すことと、少しだけ話すことを表します。
一方、「触れる」は、その事柄について少しだけ話すことを表します。
「言及」と「暗示」の違い
言及と暗示は以下のような違いがあります。
- 言及
はっきりと口に出す - 暗示
口には出さず、手がかりを与える
言及と暗示は、「はっきりと口に出すかどうか」が異なります。
言及は、相手にわかるようにはっきりと話すことを表します。
一方、暗示は、口には出さず、態度などで相手にわかるように伝えることを表します。
「言及」の対義語
言及には以下のような対義語があります。
- 未言及
ある事柄についてまだ話が広がっていないこと - ノーコメント
会見や取材などで、ある事柄について言わないこと - コメントしない
物事に関する自分の意見などをあえて言わないこと - 発言しない
物事に関する自分の意見などをあえて言わないこと - 発言を慎む
物事に関する自分の意見などをあえて言わないこと - 自粛(じしゅく)する
自らすすんで行動や態度をしないように気をつけること - 差し控える
程度などを少なめにすること - 口を閉ざす
黙って何も言わないこと
「言及」の英語訳
言及を英語に訳すと、次のような表現になります。
- refer to〜
(〜について言い及ぶ) - reference
(言い及ぶこと) - mention
(簡単に述べる) - speak to〜
(〜に関して話す) - allude to〜
(〜に関して話す)
補足:自己言及のパラドックスとは
言及がつく語に、自己言及のパラドックスがあります。
自己言及のパラドックスとは、「この文は嘘である」という構造の文を、自分自身について言い及ぶと生まれる矛盾のことです。
具体的な例を見てみましょう。
もしAさんが嘘つきの場合、「私は嘘つきだ」という発言が嘘ということになるため、嘘つきであるはずのAさんが、「私は正直者だ」と言っているという矛盾が生まれます。
一方、Aさんが正直者の場合、「私は嘘つきだ」という発言が正しいことになるため、正直者であるはずのAさんが、「自分は嘘つき」と言っているという矛盾が生まれます。
つまり、どちらに仮定しても、前提と結論が食い違ってしまうのです。
自己言及とパラドックスは、それぞれ以下のような意味があります。
- 自己言及
その発言をしている人が、自分自身について言い及ぶこと - パラドックス
一見正しいと思われるが、実は矛盾する事柄
つまり、自己言及のパラドックスは、「その発言をしている人が、自分自身についてある事柄を言うと生まれる矛盾」を表します。
「言及」のまとめ
以上、この記事では言及について解説しました。
読み方 | 言及(げんきゅう) |
---|---|
意味 | その事柄まで話す |
類義語 | 言う 述べる ~について話す など |
対義語 | 未言及 ノーコメント コメントしない など |
英語訳 | refer to〜(〜について言い及ぶ) reference(言い及ぶこと) mention(簡単に述べる) など |
言及は、会見などでよく使います。
今、何について言及すべきかを考えながら会話できるとよいですね。