実は違う!「十分」と「充分」の違いと使い分けを徹底解説!

違いのギモン

不足のない状態を「じゅうぶん」と言います。漢字にすると、「十分」と「充分」の2通りに変換することができますね。

読み方と大意が共通しているため、どちらも同じような言葉であるように感じられます。

しかし、両者の意味には微妙な違いがあるのです。そこで、この記事では、「十分」と「充分」の相違点や使い分けについて解説します。

結論:数値的に「十分」、主観的に「充分」を用いることが多い

「十分」と「充分」は、どちらを使っても間違いではありません。ただ、使い分けるとすれば、以下の形で行われることが多いです。

「十分」は、数値を基準にした時、すべてが満たされていることを指します。「十割」のイメージであり、誰から見ても満たされていることが明らかです。

一方、「充分」は、数値の他に、自分の中の主観的な基準に照らした時に満たされている場合に用います。数値化できない精神的な話等で用いられることが多いです。

「十分」の意味

「十分」とは、ある数値的な基準があった時、その基準を満たしていることを意味します。

「十分」の語源は、「十等分したものがすべてそろう」というものです。つまり、 “10分の1” が10個集まって “1” になった状態を指すのですから、「十分」は “100%” という意味なのです。

数に表して満足を示すため、「十分な状態」は誰が見ても同じように判断することができますね。ですから、「十分」は客観的にみて不足がない状態ともいえます。

この由来からわかるように、「十分」とは、数値的・客観的な観点で不足のない状態のことを言います。分量、回数、程度などが満たされた場合に使います。

「十分」の使い方

  1. バケツには水が十分に溜まっている。
  2. 80点以上が目標だったので、88点を取れたのは十分な結果と言えよう。
  3. 家内が作るご飯を食べれば、必要な栄養は十分摂れる。
①では、バケツの水が満杯になっていることが表現されています。バケツという物体がある以上、こぼれる寸前まで水が溜まった状態こそが、誰もが認める満杯です。そのため、数値的、客観的に満たされていることを指す「十分」を用いています。

②の試験では、自分が決めた 80点という基準を超えていることから、「十分」を用いています。

③の「栄養」も、満たされているかどうかには客観的な基準があります。そのため、「十分」を用いています。

「充分」の意味

「充分」は、客観的な数値、あるいは主観的な基準を満たしている際に使われます

「充分」の「充」という漢字には、「満ち足りている」という意味があります。「満ち足りている」と判断するための条件は、数値などを使って客観的に表すことができる場合もありますが、その人の感覚や価値観によって主観的に決まる場合もありますね。

この由来からわかるように、「充分」は、数値を用いた客観的な満足も、感覚をもとにした客観的な満足も示すことができる言葉なのです。

「十分」の推奨

文化庁では、「十分」は画数が少なくて学習必須の漢字であること、また一方の「充分」は当て字であることから、「十分」を使うことを推奨しています。事実、公用文や文部科学省が発行する刊行物においては、「十分」が用いられています。

ただ、日本国憲法では「充分」が用いられていたりなど、必ず「十分」でなければならないわけではありません。迷った場合には「十分」を用いると決めておけばよいでしょう。

「充分」の使い方

  1. 腹八分目だが、充分食べたと思う。
  2. 充分努力したと思ったが、目標には届かなかった。
  3. 山道では充分注意したつもりだったが、怪我をしてしまった。
①では、「腹八分目」とあるように、量的にはまだ満たされていない部分があります。ただ、感覚としては満足しているため、「充分」を用いています。

②では、自分の中では力を尽くしたつもりだったので、努力は「充分」だったとしています。ただ、目標には届かなかったことから、話し手は「十分」ではなかったと感じているのかもしれません。

③では、自分としては払いうる注意を払ったつもりだったため、「充分」注意をしたと言っています。ただ、②同様に、怪我をしてしまったという事実から、「十分」な注意ではなかったと話し手は思っているのかもしれません。

「十分」と「充分」でニュアンスが変わる場合

「十分」と「充分」の相違点をふまえて、両者の使い分けについて解説します。

「十分」の方が適切な場合

「不足のないように調査する」ということを表現したいとき、「十分に調査する」と「充分に調査する」のどちらが適切でしょうか。

不足のない調査とは、調べなければならないことが100個あるならば、100個全てをチェックしていることを指しますね。つまり、この場合は数値的・客観的な満足を表現する必要があります。

そのため、この場合は、「十分に調査する」という文にするのが適切です。

 

もちろん、「充分に調査する」という文であっても意味は通じます。

しかし、「充分」は数値的・客観的な満足を伝える場合と、精神的・主観的な満足を伝える場合があります。後者の用法で受け取ると、調査をする人物が主観をもとに調べているだけにすぎず、100個ある調査リストを網羅していない可能性があるという意味合いが出てしまうのです。

したがって、「充分に調査する」よりも「十分に調査する」という表現の方が適切です。

「充分」の方が適切な場合

「不足なく眠ることができた」ということを表現したいときは、「十分に寝た」と「充分に寝た」のどちらが適切でしょうか。長時間寝たということですから、数値的に不足がないことを表す「十分」を使っても良さそうですね。

しかし、睡眠時間の長さは人それぞれです。また、たっぷり寝ると翌日は体調や気分が良いですから、精神的に満ち足りているという意味も含まれています。

ですから、この場合は、動作主の主観に基づいた質的・精神的な満足を表現することができる「充分」を使ったほうが、状況をより的確に言うことができるのです。

 

このように、「十分」と「充分」は、基本的にはどちらを使っても問題ないものの、両者の相違点を反映させて使い分けることで、細かいニュアンスを正確に表現することができるのです。

補足:誤解を防ぐために「十分」と「充分」を使い分ける場合

前項で、客観的に不足がないときには「十分」を、主観的に不足がないときには「充分」を使うのが適切であると解説しました。ここでは、別の観点で両者を使い分ける場合について説明します。

「お風呂あがりに髪の毛をしっかりと乾かす」ということを表すために「髪の毛を十分乾かす」という文を作ったとします。「十分に乾かす」というように、 “充分” と “乾かす” の間に “に” が補われていたら、「じゅうぶん」と読むことができます。

しかし、この文では「十分乾かす」となっているので、 “10分間、時間を計って乾かす” という意味にもとれますね。

 

そこで、誤解を避けるために「充分」を使うという方法があります。

水気が一切ない状態になってはじめて「しっかりと乾いた」という状態になるため、客観的な条件で達成する状態です。この意味を考えると、本来は「充分」ではなく「十分」と書くのが適切です。

しかし、「充分」を使うことで、読み手は “10分間乾かす” という意味に間違えることはありませんね。このように、「十分(じゅうぶん)」と「十分(じゅっぷん)」の混同を防ぎ、わかりやすい文にするために「充分」を使うこともあるのです。

まとめ

以上、この記事では、「十分」と「充分」の意味の違いと使い方について解説しました。あらためて、両者の違いについておさらいしましょう。

  • 十分:数値的・客観的に不足がない状態
  • 充分:数値的・客観的に不足がない状態、または精神的・客観的に不足がない状態/li>

以下のような覚え方で、両者の違いをマスターしましょう。

  • 「十」は数字だから、「十分」は数値的・客観的な満足を表す
  • 「充」は満たされるという意味だから、精神的・主観的な満足も表せる

「十分」と「充分」のうち、自分が伝えたい “不足のない状態” を表すために適切な方を使うと、わかりやすく表現することができます。また、聞き手・読み手も、両者の区別を知っていれば、相手の言う「満足」がどのような特徴をもっているのか深く理解することができるのです。