日本語にはまぎらわしい同音異義語がたくさんありますが、「配付」と「配布」はそのうちのひとつです。
そして、普段話している時にはこの2つの言葉の違いを意識しなくても大丈夫ですが、書面で書く時にはそうもいきません。どちらを使うべきか、悩まれたことのある方は多いのではないでしょうか。
そこで、今回は「配付」と「配布」の違いについて解説していきます。
このページの目次
結論:特定の人に「配付」し、不特定多数の人に「配布」する
一方、「配布」とは、不特定多数の人に対象を行き渡らせることです。
「配付」をもっと詳しく
「配付」とは確実に渡したい相手に手渡しで配ることです。渡す相手の範囲は特定できており、その中の1人1人に伝えたい情報がある場合に「配付」を用います。往々にして、渡される相手は関係者となります。
配付の「付」には「手渡す」、「そこまで持っていく」という意味があります。そのため、「配付」は、特定の人に間違いなく対象を行き渡らせるというニュアンスになるのです。
たとえば、会議の資料を配る時や、テストの模範解答を配る時には「配付」を使います。
「配付」の使い方
- 受験生に問題用紙を配付する。
- 各社員に、IDカードを配付する。
- 居残り組に、課題プリントが配付された。
②のIDカードも、特定の人たちに配るべきものですよね。
③では、「居残り組」という特別なグループが設定されており、その人たち向けの課題プリントを配っているため、「配付」を用います。
「配布」をもっと詳しく
「配布」とは広くいきわたらせるように配ることです。
「配布」の「布」には「広くいきわたらせる」という意味があります。たとえば、「布教」とは教えを広くいきわたらせることですよね。そのため、「配布」は、範囲に制限を設けず、可能な限り広く行き渡らせようとする行為を指すのです。
「配布」の対象は不特定多数です。特段「どの人に配ったか」という認識はなされず、配る物の内容をなるべく多くの人に認知してもらうことが「配布」の目的です。配る対象の性別や世代が決まっている場合もありますが、それでも特定の個人を対象に配っているわけではないため、「配布」です。
たとえば、新築のマンションの宣伝のためにティッシュを配る場合には、「配布」を使います。
「配布」の使い方
- あの人は、駅前で一生懸命チラシを配布している。
- 商店街で、道行く人にアンケート用紙を配布する。
- 試合結果の号外を配布する。
②の「アンケート用紙」は、調査結果の質を高めるべく、できるだけ多くの人に配りたいものです。そのため、「配布」を用います。
③の「号外」とは、重要なニュースを即座に伝えるために、臨時に発行する印刷物のことです。号外も、多くの人に早く情報を戸溶けたくて配る物であるため、「配布」を用いるのが正しいです。
公文書では原則「配布」を用いる
これまで、目的に応じた「配付」と「配布」の使い分けについて解説してきましたが、公文書の場合は事情が異なります。公文書とは、国や自治体などの公的機関が、職務上作成する文書のことを指します。法令などが端的な例です。
公文書では、原則として「配布」を使用することが定められています。昭和29年11月以降に制定された法令では、「配付」ではなく「配布」に表記が統一されています。また、テレビや新聞業界でも、「配布」を統一した表記としています。
ただ、例外として、交付税及び譲与税配付金特別会計に関しては、「配付」を用いる法令用語としています。
「配賦(はいふ)」について
「配付」や「配布」と同音の言葉として、「配賦」も存在します。
「配賦」は、何かを人に配るのではなく、何かを個々人に割り当てることを指します。そのため、「配分」と意味が近い言葉です。
「配賦」は、費用を割り振るという意味の会計用語として主に使われます。
まとめ
以上、この記事では、「配付」と「配布」の違いについて解説しました。
- 配付:届けたい特定の人に対象を渡すこと
- 配布:不特定多数の人に対象を行き渡らせること
「配付」と「配布」は、言ってしまえば配る相手の範囲に限りがあるかないかが決定的な違いです。特定の人に確実に渡したいのか、不特定多数の人に情報伝えたいのかをきちんと踏まえて、上手に使い分けましょう。