今回ご紹介する言葉は、カタカナ語の「ジレンマ」です。
言葉の意味・使い方・語源・類義語についてわかりやすく解説します。
☆「ジレンマ」をざっくり言うと……
英語表記 | ジレンマ(dilemma) |
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意味 | 2つある選択肢のどちらを取っても、苦しい状況になること |
語源 | 英語で「板挟み」を意味する “dilemma” から |
類義語 | 板挟み、葛藤 |
「ジレンマ」とは?
「ジレンマ」の意味を詳しく
「ジレンマ」とは、2つある選択肢のどちらを取っても、苦しい状況になることです。
つまり、互いに反対の関係にあるどちらの選択肢を選んでも、デメリットが発生するという事態を指しています。
この代表的な例として、「恋のジレンマ」があります。
男の子のAくんが、女の子Bちゃんのことを好きであったとします。2人は2人だけで遊びに行くほどに仲のいい関係です。しかし、具体的に恋愛関係に進んでいるわけではありません。
AくんはBちゃんに告白しようか迷います。「思いを伝えてしまうと、今の関係が壊れてしまうかもしれない」と恐くなりますが、「いつまでたってもただの友人関係でいるのは嫌だ」とも思っています。
この状況は、どちらを取っても「気まずい関係になる」か「ずっと友人関係のまま」かというリスクがありますよね。この状況のことを「ジレンマ」というのです。
「ジレンマ」という言葉は、様々な分野において専門用語として使われています。以下、代表的なものを紹介していきます。
「囚人のジレンマ」とは?
「囚人のジレンマ」は、ゲーム理論における1つの概念です。ゲーム理論は、利害が異なる人々の意思決定の仕組みを説明するために用いられています。
仮に、犯罪の疑いのある2人が警察に捕まり、別々の部屋に連れて行かれたとします。警察が「もしも、どちらも黙った場合は懲役(ちょうえき)『1年』に、自白したら『5年』に、一方が自白してもう一方が黙っていた場合、自白した人は『無罪』、黙っていた人は『10年』に処する」と言いました。
自分が自白して、もう1人が黙っていた場合は無罪になります。しかし、相手も同じ状況のため自白する可能性が高いですよね。「自分だけの利益を追求する」か「相手を信頼する」かの難しい選択ですね。
「安全保障のジレンマ」とは?
「安全保障のジレンマ」とは、国際政治における用語で、「自国の安全を高めるために行った行動が、逆に自国の安全を脅かしてしまう状況」のことです。
例えば、A国が自国を守るために軍備の増強を行ったとします。すると、他の国は「A国が軍備が拡張されている。わが国も軍備を増強しなくてはならない」といい、軍拡を進めます。その結果、A国が軍備増強を高めましたが、周囲の国も軍拡をしたことで危険も高まってしまったのです。
このような、「自国の安全を高めたい」「しかし、周囲の国々を刺激したくない」という状況を「安全保障のジレンマ」というのです。
「ジレンマ」の使い方
- 商品の技術を高めると、価格が高くなってしまうというジレンマを抱えている。
- 「仕事と家事のどちらに時間を割くべきか」は、多くの人が陥(おちい)るジレンマだ。
- おいしいものを食べたいが、やせたいというジレンマを解消するのが、この新商品だ。
上記の例文にもあるように、「ジレンマ」は「抱える」「陥る」「解消する」などの動詞と共に用いられることが多いです。
「ジレンマ」の語源
日本語の「ジレンマ」の語源は英語の “dilemma” です。さらに元をたどると、ギリシャ語の “dilemma” が語源となっています。英語の “dilemma” は、地域によって「ダイレンマ」と発音されることもあるので注意しましょう。
“di” には「2つ」という意味があり、「課題」や「問題」という意味の “lemma” と合わせて「ジレンマ」の意味を形作っています。
ちなみに、「3つ」を意味する “tri” を用いた “trilemma” (トリレンマ)には「3つの好ましくない状況」という意味があります。
「ジレンマ」の類義語
「ジレンマ」には以下のような類義語があります。
- 板挟(いたばさ)み:対立する二者の間に立って、どちらに付くこともできずに苦しむこと
- 葛藤(かっとう):心の中に相反(あいはん)する動機・欲求・感情などが存在し、そのいずれをとるか迷うこと
「板挟み」は「板挟みの状態」と言えば、「ジレンマ」と同じように用いることができます。しかし、「ジレンマ」と「葛藤」はそれぞれのニュアンスが少し異なっています。
「ジレンマ」が「どちらを取っても苦しい」という「状況」自体のことを意味しているのに対し、「葛藤」は「思い悩む心理状態」のことを指しているのです。
それぞれの違いに注意して、類義語を使いこなせるようになりましょう。
まとめ
以上、この記事では「ジレンマ」について解説しました。
英語表記 | ジレンマ(dilemma) |
---|---|
意味 | 2つある選択肢のどちらを取っても、苦しい状況になること |
語源 | 英語で「板挟み」を意味する “dilemma” から |
類義語 | 板挟み、葛藤 |
人間は大人になるにつれて、抱える責任も増えていきます。何かを犠牲にしなければ、他の大事なものが守れないというジレンマに陥ることがあるでしょう。
そういう時には、なるべくジレンマを解消するために尽くし、いざとなったら犠牲もいとわないような強い心を持つことが重要となってくるでしょう。
いざ「ジレンマ」という言葉を使う場面が来た時のために、しっかりと意味と使い方を理解しておきましょう。