今回ご紹介する言葉は、熟語の「惰性(だせい)」です。
言葉の意味・使い方・類義語・対義語・英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「惰性」をざっくり言うと……
読み方 | 惰性(だせい) |
---|---|
意味 | これまで続けている習慣。慣性。 |
類義語 | 慣性、習慣、慣例など |
対義語 | 積極、意欲、進取の気性など |
英語訳 | from force of habit(習慣から), inertia(慣性)など |
「惰性」の意味をスッキリ理解!
「惰性」の意味を詳しく
「惰性」とは、これまで続けている習慣のことです。
「惰性」を構成する漢字にはそれぞれ以下のような意味があります。
- 惰:今までの状態を変えないこと
- 性:傾向
そして、「惰性」は「何の意味も考えずに同じ行動を続けている」というネガティブなニュアンスで用いられることが多いです。
物理的な性質としての「惰性」
「惰性」には、物体の性質を表す用法もあります。
物理における「惰性」は、ある物体が外から力を受けない時、その物体は同じ運動を続けるという性質を意味します。
「慣性(かんせい)」と同じ意味です。
たとえば、道を歩いていて小石につまずいたとします。
この場合、小石からは進行方向と逆向きの力を受けますが、身体は止まることなく前によろけますよね。
これは、歩いている状態を維持して前に進もうとする「惰性(慣性)」を身体が持っているためです。
ちなみに、「これまで続いている習慣」という意味の場合、「惰性」を「慣性」と言い換えることは出来ません。
「惰性」の使い方
「惰性」は以下のような言い回しでよく使われます。
- 惰性で~する
- 惰性で付き合う
- 惰性で生きる
- 惰性で続ける
- 惰性的
- 惰性の流れで
それぞれの言い回しについて、例文とともに詳しく見ていきましょう。
「惰性で~する」の使い方
「惰性で~する」はダラダラとなにかをする様子を表します。
ただ、たまに物理的な性質を表す時に用いられることもあります。
- 惰性で発言するのはあまり望ましいことではない。
- 電車が急停止し、惰性で転びそうになった。
「惰性で付き合う」の使い方
「惰性で付き合う」はなんとなく交際を続けることを意味します。
長い間付き合っていて、なおかつお互いのことをあまり好きだと感じられてない状態のことを表すことが多いです。
「惰性で生きる」の使い方
「惰性で生きる」とは、何の目的もなく、なんとなく生きている状態のことです。
「惰性で続ける」の使い方
「惰性で続ける」とは、これまで続けてきたことをなんとなく継続している状態のことです。
ネガティブな意味で使われることが多いです。
しかし、まれに「困難で面倒なことを続けることができている」というポジティブな意味で用いられることもあります。
「惰性的」の使い方
「惰性的」とは、今までの習慣やくせだけでものごとに取り組むことを表します。
ネガティブな意味で用いられることが非常に多い表現です。
「惰性の流れで」の使い方
「惰性の流れで」とは、ダラダラした状況に沿って何かをする時に使われる表現です。
「惰性」の類義語
惰性には以下のような類義語があります。
- 慣性(かんせい):物体が外から力を受けなければ、その運動状態を維持するという性質
- 習慣(しゅうかん):日常で繰り返される行いのこと
- 慣例(かんれい):繰り返し行われているやり方
- 旧習(きゅうしゅう):昔からの習わし
- 因習(いんしゅう):昔から続いているよくないしきたり
- 慣習(かんしゅう)::ある社会で決まりごとになっているならわしのこと
- 怠惰(たいだ):すべきことをせずになまけている様子
- 流儀(りゅうぎ):その人・流派などの独特のやり方
- 通例(つうれい):その社会での一般的なならわし
- 漠然(ばくぜん):これといった目的がなくとりとめがないこと
- 癖(くせ):習慣になった偏った傾向
- ならわし:習慣になっていること
- しきたり:昔からの習慣
「惰性」と「慣性」の違い
「慣性」とは、物体が外から力を受けない限り、その運動を続けるという性質のことです。
「惰性」と「慣性」には以下のような違いがあります。
- 惰性:物体の運動を表す時も、人の心理や行動を表す時にも使う
- 慣性:物体の運動を表す時にのみ使う
「惰性」のほうが広い意味を持っているのです。
ちなみに、物体の運動を表す時には、「惰性」と「慣性」はまったく同じ意味を表します。
「惰性」と「習慣」の違い
「習慣」とは、日常で繰り返される行動のことです。
「惰性」と「習慣」には以下のような違いがあります。
- 惰性:「ダラダラ続けている」というネガティブなニュアンスがある
- 習慣:ポジティブな意味でもネガティブな意味でも用いる
「惰性」は「習慣」と違って、ほとんどネガティブな意味でしか使えないのです。
「惰性」と「慣例」「旧習」の違い
「慣例」とは、これまで繰り返し行われてきたやり方のことです。
「旧習」とは、昔からのやり方のことです。
「惰性」と「慣例」「旧習」には以下のような違いがあります。
- 惰性:「ダラダラ続ける」というネガティブなニュアンスで用いる
- 慣例・旧習:「これまで続けられてきた」というニュアンスが強く、ポジティブにもネガティブにも使われる
「慣例」「旧習」は「惰性」と違って、ネガティブなニュアンスとは限らないのです。
ちなみに、「慣例」「旧習」はどちらも「これまで長い間続けられてきた」というニュアンスが強いです。
特に「旧習」は「何世代も前から同じやり方でやってきた」というニュアンスになります。
「惰性」の対義語
名詞としての「惰性」には厳密には対義語はありません。
しかし、「ダラダラ」というネガティブなニュアンスで用いられた時には、以下のような言葉が対義語になります。
- 積極(せっきょく):物事に進んで働きかけること
- 意欲(いよく):進んで何かをしようと思うこと
- 進取の気性(しんしゅのきしょう):積極的に新しい物事に取り組んでいこうという性質
「惰性」の英語訳
惰性を英語に訳すと、次のような表現になります。
- by force of habit
(習慣から) - out of habit
(習慣から) - inertia
(慣性) - coasting
(惰性で進む) - aimless
(目的のない)
「これまでの習慣」という意味では “by force of habit”、“out of habit” などを、物理的な性質を表す場合は “inertia” を用いましょう。
ちなみに、「惰性」はもともと “inertia” の訳語として用いられていました。
それぞれを用いた例文は以下の通りです。
- This mistake was caused by force of habit.
(この度の失敗は、私の惰性によるものです) - Though I have kept on committing excesses out of habit, I will stop it soon.
(惰性で不摂生を続けてきたが、そろそろやめるつもりだ) - In short, inertia is the property that an object tries to keep the same condition.
(簡単に言うと、慣性とは、物体が同じ状態を保とうとする性質のことだ)
まとめ
以上、この記事では「惰性」について解説しました。
読み方 | 惰性(だせい) |
---|---|
意味 | これまで続けている習慣。慣性。 |
類義語 | 慣性、習慣、慣例など |
対義語 | 積極、意欲、進取の気性など |
英語訳 | from force of habit(習慣から), inertia(慣性)など |
「惰性」は文脈によってニュアンスが変わります。
習慣を肯定しているのか、それとも問題視しているのかという点を意識しながら、上手に使いましょう。