「万難を排して」とは「どんな困難があっても」という意味です。
日常生活ではあまり使わない言葉であるため、読み方や使い方に迷う人が多いのではないでしょうか。
この記事では、「万難を排して」の読み方や例文、「万難を排してご参加ください」の使い方などについて解説します。
☆「万難を排して」をざっくり言うと……
読み方 | 万難(ばんなん)を排して(はいして) |
---|---|
意味 | どんな困難があっても |
類義語 | 「何が何でも」「是が非でも」など |
対義語 | 「都合がつけば」「気が向いたら」など |
英語訳 | at any cost(どんな犠牲を払っても),at all costs(全ての犠牲を払っても) |
このページの目次
「万難を排して」の意味
どんな困難があっても
「万難を排して」は、「どんな困難があっても」という意味です。
「万難」と「排して」には、それぞれ以下のような意味があります。
- 万難:多くの困難
- 排して:押しのけて、しりぞけて
「万難」と「排して」を組み合わせると、「多くの困難を押しのけて」となります。
この成り立ちから、「万難を排して」は、「何としても」「どんなことがあっても」ということを表しているのです。
「万難を排して」の表記
「万難を排して」の「万難」は、「ばんなん」と読みます。
「まんなん」は誤った読み方ですから、気をつけましょう。
また、「排して」の表記も間違えないようにしましょう。
× 万難を廃して
× 万難を配して
「万難を排して」の使い方
「万難を排して」は、以下のようなかたちで使います。
- 万難を排して 〜 。
- 万難を排してでも 〜 。
「万難を排してでも」は、「万難を排して」をさらに強調した表現です。
「万難を排して」に、「でも」が加わったかたちです。
この場合の「でも」には、「たとえ〜であっても」という意味があります。
「万難を排して」に「でも」をつけることで、「たとえどんな困難があっても」という意味を表すことができるのです。
「万難を排して」の例文
「万難を排して」は、以下のような場面で使います。
- 決意表明をする場面
- 招待をする場面
- 冗談を言う場面
以下、それぞれの場面に分けて、具体的な例文を紹介します。
使い方①決意表明をする場面
「万難を排して」は、「どんな困難も乗り越えて、必ず目標を達成する」という決意表明でよく使われます。
例文を見てみましょう。
- 万難を排してでも、利益を上げたい。
- 万難を排してプロジェクトを遂行(すいこう)する。
- 万難を排してでも、彼との約束を守るつもりだ。
「万難を排して」は、まれに、「万難を排する」というかたちで文末に使われることもあります。
「万難を排する」は、「どんな困難があっても、必ず乗り越える」という意味です。
例:目標達成のために万難を排する。
使い方②招待をする場面
「万難を排して」は、招待をする場面でも使われます。
この場面でよく使う定型文は、「万難を排してご参加ください」というものです。
「万難を排してご参加ください」とは、「どんなことがあっても、必ず参加してください」という意味です。
結婚式に招く際など、相手に参加を強く求めるときに使います。
- このたび、結婚式を挙げることになりました。万難を排してご参加ください。
- 来週の月曜日に、花火大会を実施いたします。地域の皆様、万難を排してご参加ください。
「万難を排してご参加ください」は、相手を強引に誘うようなニュアンスがあるため、多用しすぎないことが大切です。
特に、目上の人に対して使いすぎると、失礼にあたる場合があります。
「万難を排してご参加ください」への対応
「万難を排してご参加ください」と頼まれて、なおかつ参加する意志があるという場合は、以下のように答えましょう。
- 万難を排して馳(は)せ参じます。
- 万難を排してでも馳せ参じます。
- 万難を排して参加いたします。
- 万難を排してでも参加いたします。
- 必ず参加いたします。
上記のように、「万全を排してご参加ください」に答える場合は、返事にも「万難を排して」を使うのが無難です。
なぜなら、相手の熱意に共感していることを表すことができるからです。
「万難を排して馳せ参じます」や「万難を排してでも馳せ参じます」は、やや古風な言い方です。
「馳せ参じる」という言葉が、もともと戦国武将が使っていた言葉だからです。
一方、「万難を排してご参加ください」という誘いを断ることも可能です。
その場合は、以下のような返答をしましょう。
- せっかくのお誘いですが、都合により参加いたしかねます。
- 大変申し訳ありませんが、参加することができません。
「万難を排してご参加ください」という誘いを断る際には、「せっかくのお誘いですが」「大変申し訳ありませんが」というような言葉を冒頭につけて、柔らかい印象にしましょう。
「参加いたしかねます」「参加することができません」とだけ返答すると、直接的で冷たい印象になってしまい、熱意をもって誘ってくれた相手に失礼だからです。
使い方③冗談を言う場面
「万難を排して」は、まれに冗談を言う場面でも使われます。
何気ない出来事を「万難を排して」を使って誇張することで、ユーモアを出すことができるのです。
「万難を排して」の類義語
「万難を排して」には以下のような類義語があります。
- 何(なに)が何(なん)でも
何がどうなっても - 是が非でも(ぜがひでも)
何がどうなっても - 是非とも(ぜひとも)
どうか。ぜひぜひ - 絶対に
どうしても - 必ず
まちがいなく - 何としても
どんなことがあっても - 否でも応でも
どうしても - 艱難辛苦(かんなんしんく)を乗り越えて
大きな困難を乗り越えて - 石にかじりついても
どんな苦労にも我慢して - 死んでも
何が何でも - どんな苦難があろうとも
- いかなる障害があろうとも
- 困難を乗り越えて
- 困難を克服して
- 是非(ぜひ)
「万全を期して」は、「万難を排して」の類義語ではありません。
「万全を期して」は、「手落ちや抜かりがなく、完璧である」という意味の言葉です。
「万難を排して」は「どんなことがあってでも」という意味であるため、両者の意味は異なります。
「万難を排してご参加ください」の類義表現
「万難を排してご参加ください」の類義表現は、「万障(ばんしょう)お繰り合わせのうえご参加ください」です。
「万障お繰り合わせのうえご参加ください」は、「万難を排してご参加ください」と同じく、「ぜひ参加してください」という意味の定型文です。
ちなみに、「万障お繰り合わせのうえ」は、以下のような構造をもつ言葉です。
- 万障
あらゆる障害・不都合 - お繰り合わせのうえ
都合がよくなるように調整いただいたうえで
つまり、「万障お繰り合わせのうえご参加ください」は、「あらゆる不都合を調整したうえで、参加してください」という意味なのです。
「万難を排して」の対義語
「万難を排して」には以下のような対義語があります。
- 都合がつけば
- 気が向いたら
- 気分が乗ったら
- その気になったら
- 行けたら行く
「万難を排して」は、「どんな困難があっても、確実に目的を達成する」という言葉です。
そのため、「万難を排して」の対義語は、「必ずしも目的を達成するとは限らない」という、不確実なニュアンスをもつ言葉になります。
「万難を排して」の英語訳
「万難を排して」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- at any cost
(どんな犠牲を払っても) - at all costs
(全ての犠牲を払っても) - no matter what the cost
(どんな犠牲であったとしても) - whatever the risk
(リスクがどんなものであろうとも)
上記の英語訳のなかで、最も適している表現は “at any cost” です。
“cost” は犠牲を表します。
“at any cost” は、以下のように使うことができます。
- I will go there at any cost.
(万難を排してでも、そこに行きます。) - Go through with it at any cost.
(万難を排してやり抜く。)
補足:「万」を用いた関連語
「万難を排して」のほかにも、「万」という漢字を用いた言葉はたくさんあります。
参考までに覚えおきましょう。
- 万難を冒して(おかして)
あらゆる困難を、あえて引き受けて - 万全(ばんぜん)を期して
手落ちや抜かりがなく、完璧である - 万感(ばんかん)の思い
心に浮かぶ、さまざまな感情 - 一事(いちじ)が万事(ばんじ)
1つのことから、他の全てを推測できること
「万難を排して」のまとめ
以上、この記事では「万難を排して」について解説しました。
読み方 | 万難(ばんなん)を排して(はいして) |
---|---|
意味 | どんな困難があっても |
類義語 | 「何が何でも」「是が非でも」など |
対義語 | 「都合がつけば」「気が向いたら」など |
英語訳 | at any cost(どんな犠牲を払っても),at all costs(全ての犠牲を払っても) |
ここぞという場面で、「万難を排して」を正しく使いこなせるようになりましょう。