「明けない夜はない」とは「悪い状況はずっと続くわけではなく、耐えれば必ず良いことがある」という意味です。
ニュースなどで「明けない夜はない」と聞いて、どんな意味なのか気になった人も多いのではないでしょうか。
辛いことがあると、まるで出口が見えない迷路に入ってしまったかのように「いつまでもこんなことが続くのだろうか」と不安になりますよね。
「明けない夜はない」は、そんな状況にある人に知っておいてほしい言葉です。
この記事では「明けない夜はない」の意味や使い方を詳しく解説していきます。
☆「明けない夜はない」をざっくり言うと…
意味 | 悪い状況はずっと続くわけではなく、耐えれば必ず良いことがある |
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由来 | ①シェイクスピア作『マクベス』におけるマルカムの台詞 ②トーマス・フラー作『パレスチナのピスガの光景とその境界』の一文 |
類義語 | 夜の明けない朝はない 朝の来ない夜はない 止まない雨はない など |
英語訳 | For every dark night, there’s a brighter day. (毎晩暗い夜があるから、輝く日があるんだよ。) After the dark night, the sun shines. (暗い夜の後は、太陽が輝きます。) など |
このページの目次
「明けない夜はない」の意味
悪い状況はずっと続くわけではなく、耐えれば必ず良いことがある
「明けない夜はない」は、「悪い状況が永遠に続くことはなく、いつかは必ず良いことがある」という意味です。
「ない」が2つで二重否定になり、「どんな夜も必ず明ける」という意味になっています。
夜がどんなに暗く長くても、朝が来ない夜はないように、人生においてもずっと悪い状況ばかりが続くわけではないことを表しています。
「明けない夜はない」の使い方
「明けない夜はない」は、ポジティブな意味を持つ言葉であるため、自分を元気づけたり人を励ましたりするときに使うことが多いです。
「明けない夜はない」には、以下のような例文があります。
- 新型コロナウィルス感染拡大の影響はどんどん広がっているが、明けない夜はないと信じて耐え忍ぼう。
- 明けない夜はないのだから、いつかは状況が良くなると信じて、今できることを精一杯取り組んだ方がよい。
- 辛いことばかり続いて落ち込んでいる部下に、「明けない夜はないよ」と声をかけて励ました。
「明けない夜はない」の由来
「明けない夜はない」の由来には、以下の2つの説があります。
- 戯曲『マクベス』の台詞
シェイクスピア作 - 書籍『パレスチナのピスガの光景とその境界』の一文
トーマス・フラー作
どちらの説が正しいかは定かではありません。
しかし、戯曲『マクベス』が書かれたのが1606年頃、書籍『パレスチナのピスガの光景とその境界』が書かれたのが1650年です。
そのため、「明けない夜はない」の由来は『マクベス』の台詞であるという説が有力です。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
由来の説①戯曲『マクベス』の台詞
シェイクスピアの戯曲『マクベス』におけるマルカムの台詞は、「明けない夜はない」の由来として有名です。
『マクベス』は、将軍マクベスが妻とともに主君を暗殺して王位につくものの、暴君となり果て殺される話です。
マクベスに対抗する軍の長・マルカムの台詞に、以下のようなものがあります。
The night is long that never finds the day.
[出典:William Shakespeare『Macbeth』]
“the night” を「マクベスの悪政」と訳すと、 “the day” は「マクベスを暗殺できる者」という意味でとれます。
この台詞は2通りに訳すことができます。
- マクベスを暗殺できる者を見出さない限り、マクベスの悪政は続く
(明けない夜は長い夜だ) - マクベスを暗殺できる者を見出せば、マクベスの悪政は終わる
(明けない夜はない)
マルカムの意気込みから、②「明けない夜はない」という意味合いで訳すこともできます。
これは、あえて台詞に2通りの意味をもたせたとされています。
この日本語訳が「人生において、悪い状況ばかりがずっと続くわけではない」という意味の「明けない夜はない」になったとされます。
由来の説②書籍『パレスチナのピスガの光景とその境界』の一文
トーマス・フラーはイギリスの神学者・歴史家です。
彼の著書『パレスチナのピスガの光景とその境界』に、以下のような一文があります。
It’s always darkest before the dawn.
(夜明けの直前は常に最も暗い。)
[出典:Thomas Fuller『A Pisgah-Sight of Palestine and the Confines Thereof』]
この日本語訳が「人生において、悪い状況ばかりがずっと続くわけではない」という意味の「明けない夜はない」になったとされます。
「明けない夜はない」の類義語
「明けない夜はない」には以下のような類義語があります。
- 夜の明けない朝はない
物事はいつか必ずよい方へ変わる - 朝の来ない夜はない
物事はいつか必ずよい方へ変わる - 止(や)まない雨はない
いくら長い雨が続いたとしても、いつかは雨雲も去り、太陽が見えるように苦労が消えていく - 春の来ない冬はない
たとえ今が不幸であっても、じっと耐えていればいつかは幸せが訪れる - 冬来たりなば春遠からじ
たとえ今が不幸であっても、じっと耐えていればいつかは幸せが訪れる - 永遠に続く冬はなく、春が来ない年もない。
どんな冬もいつか終わる。そして、春は必ずやってくる - 待てば海路の日和あり
海が荒れていても待っていれば、出航にふさわしい良い日が訪れる - 待てば甘露の日和あり
焦らず根気よく待っていれば、そのうち良いこともある - 日はまた昇る
物事が上手くいくときもあれば、そうでないときもある
「朝の来ない夜はない」の意味
「朝の来ない夜はない」は、小説家の吉川英治が残した言葉です。
吉川の座右の銘だったという説と、色紙にサインを頼まれたときに書いたという説がありますが、どちらが正しいかは定かではありません。
吉川は父が家業に失敗したため小学校を11歳で中退して働き、苦労の多い青年時代をおくりました。
小説家として成功した後も、若いころの苦心を忘れないために「朝の来ない夜はない」を胸に刻んでいたとされます。
「朝の来ない夜はない」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- We can wait for the morning after a long night as we are sure that it will come at the time appointed.
(私たちは長い夜の後、朝を待つことができます。それは約束された時間に現れることが確かだからです。) - Astronaut says, “Every day, half of the Earth is darkness (evening), and the other half is in daylight (Morning) and God made the firmament.”
(宇宙飛行士は言っています。「毎日、地球の半分は暗闇(夜)ですが、もう半分は昼間(朝)です。そしてこの宇宙を神が創造しました」)
「春の来ない冬はない」の意味
「春の来ない冬はない」は、イギリスの詩人であるパーシー・シェリーの詩の一節です。
If winter comes, can spring be far behind?
(冬が来たら、春が来ないなんてことはあるだろうか、いやそんなことはない)
[出典:パーシー・シェリー『西風に寄せる歌』]
この文章は日本語で以下の2通りに訳されます。
- 春の来ない冬はない
- 冬来たりなば春遠からじ
「日はまた昇る」の意味
「日はまた昇る」は、アメリカの小説家であるアーネスト・ヘミングウェイの小説のタイトルです。
1926年に発表した長編小説で、原題は『The sun also rises(日はまた昇る)』です。
この英文が日本語に訳されて、「物事が上手くいくときもあれば、そうでないときもある」というポジティブな意味をもつようになりました。
英文では「日はまた昇る」だけで、ポジティブな意味はありません。
「明けない夜はない」の英語訳
「明けない夜はない」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- For every dark night, there’s a brighter day.
(毎晩暗い夜があるから、輝く日があるんだよ。) - After the dark night, the sun shines.
(暗い夜の後は、太陽が輝きます。) - Even when full darkness falls the world the sun is always shinning on the back side of the earth.
(世界が真っ暗になった時でさえ、太陽は地球の裏側でいつも輝いています。) - The people who walk in darkness will see a great light.
(暗闇の中を歩く人々は偉大な光を見るでしょう。) - I have come into the world as a light, so that no one who believes in me should stay in darkness.
(私は光としてこの世に来たので、私を信じている人は誰も暗闇にとどまるべきではありません。)
「明けない夜はない」のまとめ
以上、この記事では「明けない夜はない」について解説しました。
読み方 | 明(あ)けない夜(よる)はない |
---|---|
意味 | 悪い状況はずっと続くわけではなく、耐えれば必ず良いことがある |
由来 | ①シェイクスピア作『マクベス』におけるマルカムの台詞 ②トーマス・フラー作『パレスチナのピスガの光景とその境界』の一文 |
類義語 | 夜の明けない朝はない、朝の来ない夜はない、止まない雨はないなど |
英語訳 | For every dark night, there’s a brighter day.(毎晩暗い夜があるから、輝く日があるんだよ。)、After the dark night, the sun shines.(暗い夜の後は、太陽が輝きます。)など |
みなさんの人生を思い出してほしいのですが、どれだけ寝付けない夜でも、気が付いたらいつの間にか朝が来ていた経験はありませんか?
それと同じように、辛いことがあっても、案外気が付いたらいつの間にか過ぎ去っていたということもあります。
「明けない夜はない」は、座右の銘にされることも多い言葉ですので、今辛い状態にいる人にはぜひ胸に留めておいてほしい言葉です。