今回ご紹介する言葉は、熟語の「走馬灯」です。
言葉の意味・使い方・類義語・英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「走馬灯」をざっくり言うと……
読み方 | 走馬灯(そうまとう) |
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意味 | 影絵が回転しながら写るように細工された灯ろうの一種 |
慣用句としての意味 | 「感情が高ぶったときに、記憶が次々と蘇る様子」を表す慣用句 |
語源 | 馬の影絵が回転する様子から |
英語訳 | Flashback(走馬灯)など |
「走馬灯」の意味をスッキリ理解!
「走馬灯」の意味を詳しく
「走馬灯」には以下の2つの意味があります。
- 影絵が回転しながら写るように細工された灯ろうの一種
- 感情が高ぶった状態で昔の記憶が蘇ること
それぞれの意味について詳しく見ていきましょう。
意味①:影絵が回転しながら写るように細工された灯ろうの一種
「走馬灯」は「影絵が回転しながら写るように細工された灯ろうの一種」のことを指します。
もともとはこの意味で使われることがほとんどでした。
「走馬灯」はもともと中国で照明として用いられていました。
中国の「走馬灯」は以下の画像のような仕組みになっています。
[出典:People’s China]
ろうそくをつけると、中央の馬の切り絵が上昇気流により回転し、それが影絵として写し出されるのです。
これが江戸時代初期に日本に伝来し、夏の夜の娯楽として定着しました。
日本でも、もともとはろうそくを灯すタイプの「走馬灯」が主流でしたが、現在では電気式の「走馬灯」が主流です。
[出典:livedoor Blog]
現在では「走馬灯」を照明器具として用いることはまれです。
そのため、現代人にとって「走馬灯」は馴染みの薄いものになりつつあります。
ただ、「走馬灯」は現在でも寺院などには設置されています。
意味②:感情が高ぶった状態で昔の記憶が蘇ること
「走馬灯」は「感情が高ぶった状態で昔の記憶が蘇ること」を指すこともあります。
過去の記憶が次々に頭の中に写し出される様子を、「走馬灯」の影絵が回転しながら写る様子にたとえているのです。
人間が「走馬灯」を見ると言われているのは、具体的には以下のような状況の時です。
- 車に轢(ひ)かれそうな時
- 高い場所から転落した時
- 暴漢に襲われている時 など
以上のような、突然命の危険が差し迫っている状況に置かれた時には、「走馬灯」のように自分の人生を振り返るような記憶が映像のように流れると言われています。
また、思い出深い場所を訪れた時に、その場所に関する記憶が一斉にあふれることもあります。
意図的に思い出すのではなく、自然に思い出が頭の中に浮かんでくるのが特徴です。
たとえなので、この意味の時は「走馬灯のように過ぎる」などの慣用句の形で用いられることが多いです。
本来は誤用ですが、現在では「走馬灯を見る」などの表現で「走馬灯」自体を「感情が高ぶった状態で昔の記憶が蘇ること」という意味で用いることもあります。
ちなみに、一説によると、死ぬ間際に記憶があふれ出すのは、「自分の人生経験の中から、近づいている死を回避する方法を探しているため」とも言われています。
「走馬灯」の読み方
「走馬灯」は「そうまとう」と読みます。
「そうばとう」と読むのは間違いなので注意が必要です。
「走馬灯」の表記
「走馬灯」は「走馬燈」と表記されることもあります。
「燈」は「灯」の異体字です。
「走馬灯」は季語
「走馬灯」は夏の季語として用いられます。
これは、「走馬灯」がもともと夏の夜の娯楽として生まれたことが由来です。
「走馬灯」の使い方
「走馬灯」は以下のような言い回しで用いられることが多いです。
- 走馬灯のように
- 走馬灯の如し
- 走馬灯がよぎる
- 走馬灯を見る
- 走馬灯現象
それぞれの言い回しの意味について、例文と一緒に見ていきましょう。
使い方①:走馬灯のように
「走馬灯のように」は「走馬灯のように過去の記憶が頭の中に写し出される状態」のことを指します。
現在では「走馬灯」の実物を見る機会がほとんどないことから、「走馬灯のように」の形でたとえとして用いられることが多いです。
特に「走馬灯のように過ぎる」という形はよく用いられます。
- 母校の正門に立ったとき、3年間の記憶が走馬灯のようにあふれだした。
- 車にはねられて宙に浮いている間、過去の記憶が走馬灯のように駆け巡った。
- 過去の記憶が走馬灯のように過ぎていった時は死を覚悟した。
使い方②:走馬灯の如し
「走馬灯の如し」は「走馬灯のように過去の記憶が頭の中に写し出される状態」のことを指します。
「走馬灯のように」と比べるとやや古めかしい表現です。
- その時、走馬灯の如き映像が頭の中を駆け巡った。
- この歳になるまであっという間だった。まさに「人生は走馬灯の如し」だ。
使い方③:走馬灯がよぎる
「走馬灯がよぎる」は「感情が高ぶった状況でこれまでの記憶が映像として流れること」という意味です。
- 試合中に後頭部を強打した時は走馬灯がよぎった。
- 走馬灯がよぎった瞬間、思わぬ所から救いの手が差し伸べられた。
使い方④:走馬灯を見る
「走馬灯を見る」は「感情が高ぶった状態でこれまでの記憶が映像として流れること」という意味です。
また、まれではありますが、「走馬灯という灯籠の一種を見る」という意味で用いられることもあります。
- 絶体絶命のピンチで走馬灯を見た。
- 私は、幼いころに走馬灯を見たことがあります。
❷の例文はどちらの意味で取ることもできます。
使い方⑤:走馬灯現象
「走馬灯現象」は「感情が高ぶった時に過去の記憶がよみがえる現象」のことです。
- 話には聞いてたが、実際に走馬灯現象を見たのはその時が始めてだった。
- 走馬灯現象は多くの人が体験するものらしい。
「走馬灯」の類義語
「走馬灯」には以下のような類義語があります。
- 回り灯籠(まわりどうろう):中に火を入れるといろいろな影絵が見れる灯籠
- 影灯籠(かげどうろう):中に火を入れるといろいろな影絵が見れる灯籠
- 舞灯籠(まいどうろう):中に火を入れるといろいろな影絵が見れる灯籠
- スモークジャック:火による上昇気流で羽根車を回転させて動力として使う装置
- フラッシュバック:過去のトラウマを突然非常に鮮明に思い出す現象
「走馬灯」の英語訳
「走馬灯」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- Flashback
(走馬灯) - kaleidoscopic
(万華鏡のような) - a revolving lantern
(回転灯籠)
まとめ
以上、この記事では「走馬灯」について解説しました。
読み方 | 走馬灯(そうまとう) |
---|---|
意味 | 影絵が回転しながら写るように細工された灯ろうの一種 |
慣用句としての意味 | 「感情が高ぶったときに、記憶が次々と蘇る様子」を表す慣用句 |
語源 | 馬の影絵が回転する様子から |
英語訳 | Flashback(走馬灯)など |
「走馬灯」はよく使われる言葉ですが、その本来の意味や正しい使い方は知らなかった人もいると思います。
この機会に、しっかりと覚えておきましょう。