今回ご紹介する言葉は、熟語の「何卒(なにとぞ)」です。
言葉の意味・使い方・類義語・注意点・語源・英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「何卒」をざっくり言うと……
読み方 | 何卒(なにとぞ) |
---|---|
意味 | 相手に対して強く願い望む気持ち |
語源 | 「何とか」+強調の助詞「ぞ」 |
類義語 | 是非、どうか、どうぞなど |
英語訳 | kind(親切にも)など |
「何卒」の意味をスッキリ理解!
「何卒」の意味を詳しく
「何卒」は「相手に対して強く願い望む気持ち」を表します。
「どうか」や「どうぞ」を堅くした表現で、相手と少し距離が遠い、または目上の人に使います。
他に「どうにかして(自分が)やる」という意味も存在しますが、現代ではほぼ使われていません。
「なにそつ」ではなく「なにとぞ」と読みます。読み方を間違える人が非常に多いため、注意が必要です。
「何卒」の使い方
「何卒」はメールや手紙などの書き言葉として用いられることが多いです。
「何卒」をつけることで相手に丁寧な印象を与えることができます。
「何卒」は以下のような言い回しで用いられることが多いです。
- 以上、何卒~
- 何卒ご容赦~
- 何卒ご理解~
- 何卒(単独)
それぞれの意味について例文と一緒に詳しく見ていきましょう。
以上、何卒~
「以上、何卒~」はメールの結びのあいさつとして用いられることが多い表現です。
具体的には「以上、何卒お願いいたします」などの言い回しで用いられます。
メールで最後まで相手に敬意を払いたい時に用いましょう。
何卒ご容赦~
「何卒ご容赦~」は相手に敬意を表しつつ、許しを請う時に用いられる表現です。
具体的には、「何卒ご容赦ください」などの形で用います。
「ご容赦ください」は目上の相手に許しを請う表現ですが、「何卒」を用いることでより丁寧な表現になります。
何卒ご理解~
「何卒ご理解~」は相手に強く理解を求める時に用いられる表現です。
具体的には、「何卒ご理解ください」「何卒ご理解いただきますようお願い申し上げます」などの言い回しで用います。
何卒(単独)
「何卒」は時代劇、もしくは若者のスラングとして単独で用いられることもあります。
この場合の「何卒」は「何卒よろしくお願い申し上げます」を略した表現です。
時代劇の場合は、目上の人に強く依頼する時に用いられる表現です。
若者言葉の場合は「よろしく!」程度のニュアンスで用いられます。
- 「殿、何卒……!」
- A:「新入生の〇〇です。よろしくお願いします」
B:「何卒~」
「何卒」の注意点
「何卒」には以下のような注意点があります。
- 使いすぎるのはNG
- 「何卒よろしくお願いします」は不自然な表現
- 「どうか」「どうぞ」と一緒に用いない
- 距離が近い相手には用いない
それぞれの注意点について詳しく見ていきましょう。
使いすぎるのはNG
「何卒」はあまり多用するべきではありません。
「何卒」は言葉を強調したい時やお願いする時に便利な言葉ですが、使いすぎると重く堅苦しい文章になってしまいます。
それだけでなく、強調されている場所が多すぎて、本来強調したい部分が薄れてしまいます。
本当に強調したい部分だけ強調できるように、「何卒」を使うのはひとつの文章にひとつだけにしたほうが良いでしょう。
「何卒よろしくお願いします」は不自然な表現
「何卒よろしくお願いします」はよく使われている表現ですが、実は不自然な表現なので注意が必要です。
「何卒」は改まった堅い表現なので、一緒に使う表現も丁寧なものにする必要があります。
具体的には、「お願いいたします」「お願い申し上げます」などの謙譲語と一緒に用いるとよいでしょう。
「どうか」「どうぞ」と一緒に用いない
「何卒」は「どうか」「どうぞ」と一緒に用いないようにしましょう。
「何卒」はそもそも「どうか」「どうぞ」の丁寧さをより強めた表現です。
そのため、「どうぞ何卒」「何卒どうか」などと一緒に用いてしまうと、同じ意味の表現が続くくどい言葉になってしまいます。
距離が近い相手には用いない
「何卒」は距離が近い相手には用いないようにしましょう。
「何卒」は堅い言葉なので、距離が近い相手に使ってしまうと丁寧すぎてしまい、よそよそしいと感じられてしまう場合があります。
特に「何卒よろしくお願いいたします」などの表現はかなり丁寧なので、使うのはかなり目上の人や取引先などだけにしましょう。
「何卒」の語源
「何卒」は日本に古くからある単語です。
「何とか」という、「なんとかして」を意味する単語に、強調の助詞「ぞ」がくっついて誕生しました。「何とかぞ」が縮まり「なにとぞ」へと変化したようです。
そのため、「どうにかして(自分が)やる」という意味も残っています。
漢字は当て字です。
「何卒」の類義語
何卒には以下のような類義語があります。
- 是非(ぜひ)、是非とも(ぜひ-とも):どんなことがあっても
- どうか:人に心から頼む気持ち
- どうぞ:人に勧める気持ち
- 絶対(ぜったい):断じて
- なんとか:あれこれ工夫して努力すること
「何卒」と「是非」の違い
「是非」は「どんなことがあっても」という意味の言葉です。
「何卒」と「是非」には以下のような違いがあります。
- 何卒:距離がある目上の相手に用いる
- 是非:親しい間柄の相手に用いる
「何卒」と「是非」は用いる相手が異なるのです。
意味に大きな違いはありません。
「何卒」と「どうか」の違い
「どうか」は人に心から頼む気持ちを表します。
「何卒」と「どうか」「どうぞ」には以下のような違いがあります。
- 何卒:丁寧で堅い表現
- どうか:フランクな柔らかい表現
「何卒」は「どうか」を丁寧にした表現です。
「何卒」の英語訳
何卒を英語に訳すと、次のような表現になります。
- kind
(親切にも) - Thank you for your help.
(手伝ってくれてありがとう) - I appreciate your kind cooperation.
(あなたの親切な協力に感謝します)
「何卒」を単体で訳すことはあまり多くありませんが、“I ask for your understanding.“(理解してください)などの文章に“kind“を入れ、“I ask for your kind understanding.“とすると「何卒」の持つニュアンスが伝わります。
また、文末に使う「何卒よろしくお願いいたします」と完全に対応する表現は存在しないと言われています。
その代わりに、②や③などのような形であらかじめ感謝を述べることで、「(大変なことをやってくれて)ありがとう」と、丁寧なお願いを表します。
まとめ
以上、この記事では「何卒」について解説しました。
読み方 | 何卒(なにとぞ) |
---|---|
意味 | 相手に対して強く願い望む気持ち |
語源 | 「何とか」+強調の助詞「ぞ」 |
類義語 | 是非、どうか、どうぞなど |
英語訳 | kind(親切にも)など |
「何卒」は、まず読み方を間違える人が多いため、注意しましょう。
また、かしこまった場面では使い所がよくある言葉ですので、ぜひとも意味を覚えてくださいね。