今回ご紹介する言葉は、四字熟語の「一張一弛(いっちょういっし)」です。
言葉の意味・使い方・由来・類義語・英語訳について分かりやすく解説します。
☆「一張一弛」をざっくり言うと……
読み方 | 一張一弛(いっちょういっし) |
---|---|
意味 | 適度に張りつめたり緩めたりすること |
由来 | 『礼記』「雑記下」の一節より |
類義語 | 緩急自在、緩急剛柔、一弛一張など |
英語訳 | tension and relaxation(一張一弛) |
「一張一弛」の意味をスッキリ理解!
「四字熟語」の意味を詳しく
「一張一弛」とは、「適度に張りつめたり緩めたりすること」を意味する四字熟語です。
時には働かせ時には休止したり、優しくしたり厳しくしたりして、ほどよく取り扱うことを意味します。
相場などが小さな変動を繰り返すことにも使います。
弓や琴(こと)の弦(げん)を張ったり緩(ゆる)めたりすることが本来の意味です。
「張」は弓の弦を張ることで、「弛」は弓の弦を緩めることを意味します。
「一張一弛」の使い方
- 集中し、ときに休憩をはさむことで一張一弛し、うまくメリハリをつける。
- 一張一弛の繰り返しで、なかなか物事が進まない。
- 株の相場が一張一弛する。
そして③では、「小さな変動を繰り返す」という意味で「一張一弛」が使われています。
「一張一弛」の由来
「一張一弛」の由来は、中国の前漢(ぜんかん)時代(紀元前202-後8年)に書かれた『礼記(らいき)』の「雑記(ざっき)下」です。
『礼記』とは、中国古来の政治や道徳の学問である儒学(じゅがく)の経書(けいしょ)のことです。
周(紀元前1046-256年)の時代の文王(ぶんおう)や武王(ぶおう)という人物が、弓を張ったり緩めたりするような、人民に対してほどよい加減の政治を行ったという故事(こじ)に由来します。
つまり、文王と武王は、人民に対して時には厳しく、時には楽しみを与えて心を穏やかにさせるような政治を行いました。
文王と武王がそのような政治を行った後の時代のお話です。
ある時、孔子(こうし)の弟子(でし)の子貢(しこう)という人物が、あるお祭りを見ていました。孔子は、春秋時代(紀元前770-5年)の学者・思想家です。
孔子は子貢に「お祭りは楽しかったか?」と聞きました。これに対して子貢は「自分には面白さが分かりませんでした」と答えます。
すると孔子は、「100日働いた後の、たった1日のお祭りだから、お前には分からないだろう」と言います。
そして、「人民の心を緊張させてばかりでは、文武二王(文王と武王のこと)も政治はできないだろう。また、人民の心を緩めてばかりで緊張感がないのも、文武二王は通用しない。要するに、ある時は張り、ある時は緩めるのが、文武二王の政道なのだ」と言いました。
この言葉が「一張一弛」の由来となりました。
「一張一弛」の類義語
「一張一弛」には以下のような類義語があります。
- 緩急自在(かんきゅうじざい):緩めたり引き締めたり、思いのままに操(あやつ)ること
- 緩急剛柔(かんきゅうごうじゅう):時には頑固(がんこ)に、時には柔和(にゅうわ)にしたりし、状況に応じて適切に対処すること
- 一弛一張(いっしいっちょう):厳しくしたり優しくしたりして、ほどよく取り扱うこと
「一張一弛」の英語訳
「一張一弛」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- tension and relaxation
(一張一弛)
まとめ
以上、この記事では「一張一弛」について解説しました。
読み方 | 一張一弛(いっちょういっし) |
---|---|
意味 | 適度に張りつめたり緩めたりすること |
由来 | 『礼記』「雑記下」の一節より |
類義語 | 緩急自在、緩急剛柔、一弛一張など |
英語訳 | tension and relaxation(一張一弛) |
何事も、メリハリをつけることは大切です。自分が上司の立場だったら、部下に対して時には厳しく、時には優しくするとメリハリがついてよいでしょう。
仕事や勉強も、ずっと集中することは困難です。適度に休憩をはさんで、リフレッシュすることで、集中力が持続するでしょう。
ストレスを溜めないには、「一張一弛」を上手にすることが大切です。