今回ご紹介する言葉は、ことわざの「河童(かっぱ)の川流れ」です。
言葉の意味や使い方・由来・類義語・対義語・英語訳について分かりやすく解説します。
☆「河童の川流れ」をざっくり言うと……
読み方 | 河童(かっぱ)の川流れ |
---|---|
意味 | 名人や達人でも時として失敗をするということ、名人や達人でも油断をして簡単な失敗をするということ |
由来 | 泳ぎが得意な妖怪である河童も、川の流れに押し流されることがあるということから |
類義語 | 弘法も筆の誤り、猿も木から落ちる、過ちは好む所にありなど |
対義語 | 愚者も一得、千慮の一得、愚者にも千慮に一得ありなど |
英語訳 | The best horse stumbles.(足の速い優れた馬もつまずく) |
このページの目次
「河童の川流れ」の意味をスッキリ理解!
「河童の川流れ」の意味を詳しく
「河童の川流れ」には、主に2つの意味があることわざです。
- 名人や達人でも、時として失敗をするということ
- 名人や達人でも、油断をして簡単な失敗をするということ
➀の意味も➁の意味も共通するところはありますが、ニュアンスが少しずつ異なります。
まず、➀の意味について解説します。
名人や達人と呼ばれるようになった人は失敗をしないものと考えられがちです。「河童の川流れ」は、その考えを否定することわざです。
名人や達人のような道を極めた人は、ミスの回数としては決して多くはないものの、ゼロと言い切ることはできません。人である以上、時としてミスはするものなのです。
どんなに道を極めた人でも失敗することはあるという事実を表すのが、➀の意味です。
次に、➁の意味について解説します。
「道を極めた人が失敗をすることもある」という点については➀の意味と共通しています。➀の意味と異なるのは、「油断をして簡単な失敗をすることもある」という点です。
言い換えると、どんなに得意であっても、油断をすれば普通では失敗しないようなことでも失敗をしてしまうものだということです。
➁の意味における「河童の川流れ」は、油断することを戒める「教訓」のニュアンスを含んで使うことがほとんどです。
例えば、「たとえ得意なものであっても油断をせずに取り組め」「その道を極めた人でも失敗するものだから油断するな」などです。
「河童の川流れ」の注意すべき誤用
河童が流れるように上手に川を泳ぐと解釈し、「上手」「滑らか」「スムーズ」といった意味合いで使うのは誤用です。
確かに、河童は川や沼に生息する妖怪(ようかい)であり、泳ぎは非常に得意です。しかし、「河童の川流れ」ということわざにおける「川流れ」は、川に(河童が)流されるということです。
誤用が非常に目立つため、注意が必要です。
「河童の川流れ」の使い方
- 世界最高と言われるサッカー選手がPK失敗したとは、まさに河童の川流れだ。
- 自動車学校の教官が事故を起こすなんて、河童の川流れとはこのことだ。
- 河童の川流れと言うように、どんなに簡単な作業でも気を抜かずに取り組むべきだ。
➀と➁の例文では、道を極めた人でも失敗をするという意味で「河童の川流れ」が使われています。
➂の例文では、油断することを戒める「教訓」の意味合いを含んで「河童の川流れ」が使われています。
「河童の川流れ」の由来
「河童の川流れ」は、河童が泳ぎが得意な妖怪であるということに由来しています。
河童は、日本において伝説上存在する妖怪です。川や沼に生息し、泳ぎも非常に得意であるとされています。
しかし、そんな泳ぎが得意な河童も、時に川の流れに押し流されてしまうということから、「得意な人でも失敗する」という意味合いを持つ「河童の川流れ」ということわざができました。
「河童の川流れ」の類義語
河童の川流れには以下のような類義語があります。
- 弘法(こうぼう)も筆の誤り
- 猿も木から落ちる
- 麒麟(きりん)の躓(つまず)き
- 竜馬(りゅうめ)の躓き
- 上手(じょうず)の手から水が漏る
- 上手の猿が手を焼く
- 釈迦(しゃか)にも経(きょう)の読み違い
- 千里の馬も蹴躓(けつまず)く
- 百足(むかで)のあだ転び
- 過ちは好む所にあり:失敗は、好きなことや得意なことを行っている時にこそ起こりやすいということ
- 得手(えて)に鼻つく:得意なことだと、気が緩んでしまいがちで失敗するということ
- 孔子(くじ)の倒れ:孔子のような聖人でも、時には失敗することがあるということ
- 権者(ごんじゃ)にも失念:どんなに偉い人にも失敗はあるということ
- 文殊(もんじゅ)の知恵のこぼれ:どんなに偉い人でも失敗することがあるということ
- 千慮(せんりょ)の一失(いっしつ):どんなに知恵のある人でも、多くの考えの中で一つぐらいの失敗はあるということ
- 知者(ちしゃ)の一失:どんなに知恵のある人でも、多くの考えの中で一つぐらいの失敗はあるということ
- 知者も千慮(せんりょ)に一失(いっしつ)あり:どんな賢者にも、失敗や間違いが一つはあるということ
「河童の川流れ」には、このように多くの類義語があります。
「河童の川流れ」の対義語
河童の川流れには以下のような対義語があります。
- 愚者一得(ぐしゃいっとく):どんなに愚かな者でも時には優れたことをするということ
- 千慮の一得:どんなに愚かな者でも、多くの考えの中には一つぐらい良いものがあるということ
- 愚者にも千慮に一得あり:どんなに愚かな者でも、多くの考えの中には一つぐらい良いものがあるということ
「河童の川流れ」の英語訳
河童の川流れを英語に訳すと、次のような表現になります。
- The best horse stumbles.
(足の速い優れた馬もつまずく) - The best swimmers are oftenest drowned.
(泳ぎが上手い人でも溺れることがよくある) - Even Homer sometimes nods.
(ホメロスでさえ居眠りをする)
“Even Homer sometimes nods.” について解説を加えます。
ホメロスとは、紀元前8世紀末のギリシャの詩人です。非常に多くの詩を残したことで知られています。
しかし、ホメロスが書く詩において、すべての部分が素晴らしいわけではなく、退屈と言わざるを得ない部分もありました。「ホメロスでも居眠りをしながら書いた詩がある」と人々が冗談交じりに言ったことが、 “Even Homer sometimes nods.” の語源です。
まとめ
以上、この記事では「河童の川流れ」について解説しました。
読み方 | 河童(かっぱ)の川流れ |
---|---|
意味 | 名人や達人でも時として失敗をするということ、名人や達人でも油断をして簡単な失敗をするということ |
由来 | 泳ぎが得意な妖怪である河童も、川の流れに押し流されることがあるということから |
類義語 | 弘法も筆の誤り、猿も木から落ちる、過ちは好む所にありなど |
対義語 | 愚者も一得、千慮の一得、愚者にも千慮に一得ありなど |
英語訳 | The best horse stumbles.(足の速い優れた馬もつまずく) |
「河童の川流れ」は、2つの意味があることわざです。どちらもあくまでも、「道を極めた人でも失敗をすることがある」という部分は共通しています。
類義語が非常に多くあるという点からも、名人や達人でも案外失敗はするものだということは容易に想像できます。
油断を戒める教訓的な意味合いを含む使い方もあるので、「どんなに優れた人でも油断をすれば失敗をするものだ」ということを心に留めておきたいところです。