今回ご紹介する言葉は熟語の「吹聴(ふいちょう)」です。
言葉の意味・使い方・語源・類義語・英語訳について解説します。
☆「吹聴」をざっくり言うと……
読み方 | 吹聴(ふいちょう) |
---|---|
意味 | 言いふらすこと。言い回るさま。 |
語源 | 「風潮」の「周囲に言いふらす」という意味から派生 |
類義語 | 喧伝、流布など |
英語訳 | let it be known(知らせる) |
「吹聴」の意味をスッキリ理解!
「吹聴」の意味を詳しく
「吹聴」とは、「噂や自慢話などをまわりに言いふらすこと」を表します。日常会話で使われることは少ないですが、新聞や公的な文書、小説などの書籍で使われることの多い言葉です。
「吹く」という字は、口から息を吐くことの他に「言い回る、大げさに言う」という意味を含みます。そのため、「ホラを吹く」のようにマイナスな使われ方もします。
したがって、「吹く」が含まれる「吹聴」は、ネガティブな意味になります。「吹聴」によい意味合いはなく、皮肉を込めて使われることが多いです。
吹聴する話の内容としては、誰かの悪い噂や、耳に障る自慢話など、聞き手が嫌になる話が挙げられます。
また、「吹聴」に良い意味合いはないため、相手に直接「あなたは吹聴する人だ」というように使うことはありません。人について「吹聴」を用いる時は、噂や自慢話を言いふらす第三者が対象になります。
ちなみに、「吹聴」の読み方は「ふいちょう」です。「すいちょう」ではありません。しかし、「吹」は、訓読みで「ふく」、音読みで「スイ」という読みを持ち、「ふい」という読み方は基本的に使われません。
「ふい」という読み方は、「表外読み」と呼ばれるものです。「表外読み」とは、国が定める「常用漢字表」に載っていない読み方のことです。
日常生活で用いられる漢字は、すべて「常用漢字表」に表記されています。「常用漢字表」に載っていない読み方は、普段文書で用いられることはありません。ただ、「吹聴」のように、表外読みでも日常生活で用いられる例がまれにあります。
「吹聴」の使い方
- 彼は、いつも人の悪口を吹聴する人だ。
- 過去の栄光を吹聴して回る先生には、飽き飽きしている。
- 友人が自分の噂を吹聴したことに、憤りを隠せない。
- 勝手な憶測を吹聴されて、巷で間違った情報が流れてしまった。
「吹聴」は、「吹聴する」や「吹聴して回る」という形で使われることが多いです。
「吹聴」が使われる場面は、上記で解説したように悪口や噂を流された時が挙げられます。また、④のように、根も葉もない情報を漏えいされた時などに、「憶測を吹聴する」という使い方がされることもあります。
「吹聴」は、あくまで悪い話を言い広めることを意味します。単純によい話を言い回るさまを述べるときに「吹聴」を用いるのは不適切です。
「吹聴」の語源
「吹聴」はもともと、「風潮」から派生して生まれた言葉です。
「風潮」は現在、「噂」や「風の便りに聞く」という意味で使われています。しかし、「風潮」には本来、「周囲に言いふらす」という意味がありました。この意味を強調する言葉として、「風」ではなく「吹」を用いるようになり、結果として生まれたのが「吹聴」です。
「吹聴」が作られてからは、「風潮」が「周囲に言いふらす」という意味で使われることがなくなりました。そのため、「風潮」は「吹聴」の類義語には含まれません。
「吹聴」の類義語
吹聴には以下のような類義語があります。
「喧伝」と「吹聴」の少し異なる点は、話が広まる規模の広さです。
「吹聴」は、自分の身の回りなど、狭い世の中に広まる意味合いがあります。対して「喧伝」には、「世間に言い回る」という意味があります。
したがって、広まる範囲は自分の身の回りだけでなく、もっと広範囲にわたることになります。自らの周囲に留まらず、社会的に悪い話が広まっている時には「喧伝」を用いましょう。
「流布」は、「世に広まる」という意味がありますが、情報の発信源が特定されていない時に用いられます。誰が話を広めたか定かではないけれど、すでに世に広まっているさまを述べる時に用います。
上記 2つの言葉以外にも、「吹聴」と意味が似ている言い回しがあります。以下の通りです。
- しゃべり散らす
- 暴露する
- 噂する
「吹聴」の英語訳
吹聴を英語に訳すと、次のような表現になります。
- let it be known
(知らせる) - make something public
(世間に吹聴する) - speak a lot of oneself
(自分のことを吹聴する) - retail gossip
(詳しく話す) - brag
(噂する)
まとめ
以上、この記事では「吹聴」について解説しました。
読み方 | 吹聴(ふいちょう) |
---|---|
意味 | 言いふらすこと。言い回るさま。 |
語源 | 「風潮」の「周囲に言いふらす」という意味から派生 |
類義語 | 喧伝、流布など |
英語訳 | let it be known(知らせる) |
あまりよい意味を持たない「吹聴」ですが、小説の中でよく登場する言葉です。芥川龍之介や太宰治など、有名な作家たちも作品の中で「吹聴する」という表現を多く使っています。
会話の中では使いにくいですが、知っておくと便利な言葉です。また、「吹聴」と合わせて似たような言い回しを覚えておくと、さまざまな場面で用いることができます。「吹聴」について正しい知識を持ち、日常生活に活かしましょう。