今回ご紹介する言葉は、ことわざの「命あっての物種(いのちあってのものだね)」です。
言葉の意味・使い方・由来・類義語・対義語・英語訳について分かりやすく解説します。
☆「命あっての物種」をざっくり言うと……
読み方 | 命あっての物種(いのちあってのものだね) |
---|---|
意味 | 何事も命あってこそだということ。 |
由来 | 「噺本」のひとつから |
類義語 | 命に過ぎたる宝なし、命は宝の宝など |
対義語 | 命は鴻毛より軽し、命より名を惜しむなど |
英語訳 | While there is life, there is hope.(命がある限り、希望はある)など |
このページの目次
「命あっての物種」の意味をスッキリ理解!
「命あっての物種」の意味を詳しく
「命あっての物種」は、「何事も命あってこそだということ」を意味することわざです。これは、「死んでしまっては元も子もない」「命に関わる危険なことは避けろ」という戒めを含んでいます。
「物種」とは、「野菜などの種」や「物事の根源となるもの」を意味します。
稀にある誤用として、この「物種」を「物だね」としてしまうことが挙げられます。「物種」を「物だ(助動詞)」と「ね(助詞)」の組み合わせとしてしまわないように注意しましょう。
「命あっての物種」の使い方
- 命あっての物種なのだから、そう頑張りすぎないようにしなよ。
- ジェットコースターなんてとんでもない!命あっての物種だろ?
- 命あっての物種、畑あっての物種。私にとっては畑も命と同じ位大切なものだ。
日常生活では、❶のように頑張りすぎている人に無理をしすぎないよう促す時に使うことができます。また、危険を避けたいときにも、❷のように使われます。
❸は、「命あっての物種」を「畑あっての物種」と語呂を合わせて使われる例です。
「命あっての物種」の由来
「命あっての物種」は、江戸時代の「噺本(はなしぼん)」のひとつの中に登場します。「噺本」とは、笑い話を集めた短編集のようなものです。
また、それより少し時期を遅くして、狂言の中にも登場します。河竹黙阿弥(かわたけもくあみ)の狂言「武悪(ぶあく)」というものです。
「命あっての物種」の類義語
命あっての物種には以下のような類義語があります。
- 命に過ぎたる宝なし:この世に命よりも大切な宝などない。
- 命は宝の宝:命は何事にも代えられない価値があるものだ。
- 死んで花実が咲くものか:死んでしまえば、何事もおしまいになる。
- 身ありての奉公:何事も健康があってこそのものである。
「身ありての奉公」も、「命あっての物種」の類義語です。「奉公」は、「その身を捧げて身分が上の人に仕えること」を意味します。ですが、その「奉公」でさえ、健康な身体がなくてはできないと言っているのです。
「命あっての物種」の対義語
命あっての物種には以下のような対義語があります。
- 命は鴻毛(こうもう)より軽し:命を捨てることなど、少しも惜しくないという心。
- 命より名を惜しむ:命よりも名誉を重んじて生きるということ。
- 虎穴に入らずんば虎子を得ず:危険を冒さなければ、得るものはないということの例え。
「鴻毛(こうもう)」とは、その字の通り「鴻(おおとり)の毛」を意味し、非常に軽いものの例えとなっています。「鴻(おおとり)」とは、「とても大きな鳥」の意味です。
「命あっての物種」の英語訳
命あっての物種を英語に訳すと、次のような表現になります。
- While there is life, there is hope.
(命がある限り、希望はある) - Without life, there is nothing, don’t waste your life.
(命がなければ、どうにもならない。命を無駄にするな。) - He that fights and runs away may live to fight another day.
(戦って逃げる人は、生き延びて他の日に戦う機会がある) - There is always life for a living man.
(生きている人間には、必ず命がある)
“He that fights and runs away may live to fight another day.” における he と、“There is always life for a living man.” における man は、どちらも性別を問わない「人間」を指します。
he も man も、男性を指すものですが、古い英語ではこのように「人間」を指すこともあるのです。現在では、ジェンダーの観点から、この使い方をされることは少なくなっています。
まとめ
以上、この記事では「命あっての物種」について解説しました。
読み方 | 命あっての物種(いのちあってのものだね) |
---|---|
意味 | 何事も命あってこそだということ。 |
由来 | 「噺本」のひとつから |
類義語 | 命に過ぎたる宝なし、命は宝の宝など |
対義語 | 命は鴻毛より軽し、命より名を惜しむなど |
英語訳 | While there is life, there is hope.(命がある限り、希望はある)など |
日常生活でもよく目にすることわざのひとつが、この「命あっての物種」です。意味だけでなく、類義語や対義語もあわせて理解しておきましょう。