今回ご紹介する言葉は、熟語の「是非(ぜひ)」です。
言葉の意味・「是非」と「ぜひ」の違い・敬語として使えるか・使い方・類義語・対義語・英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「是非」をざっくり言うと……
読み方 | 是非(ぜひ) |
---|---|
意味 | 正しいかどうか。また、願いの強さを示す語。 |
類義語 | 可否、適否、当否、など |
対義語 | なるべく、なるたけ、できたら、など |
英語訳 | right and wrong(善悪)、at any cost(何が何でも) など |
このページの目次
「是非」の意味をスッキリ理解!
「是非」の意味を詳しく
「是非」には、以下のような2つの意味があります。
- 【名詞】正しいかどうか
- 【副詞】心を込めて強く願うさま
それぞれの意味について、「是非」の漢字の成り立ちとともに詳しく見ていきましょう。
意味①:【名詞】正しいかどうか
名詞の「是非」は「正しいかどうか」という意味です。
このような意味があるのは、「是非」の漢字が以下のような意味だからです。
- 是:正しいこと
- 非:間違っていること
漢字の意味がそのまま言葉の意味になっていることがわかります。
また、文脈によっては、「物事が正しいかどうかを議論し判断すること」というニュアンスを持つこともあります。
意味②:【副詞】心を込めて強く願うさま
副詞の「是非」は「心を込めて強く願うさま」という強調の意味です。
気持ちの強さを強調したい時に使われます。
この意味の「是非」は「是が非でも」という表現を短くしたものです。
漢字の意味からして「正しくても間違っていても」という意味になるので、かなり強めのお願いというニュアンスを持ちます。
「是非」と「ぜひ」の違い
「是非」は漢字で表記しても、ひらがなで表記しても、特に間違っているわけではありません。
ただ、以下のように使い分けられるのがふつうです。
- 是非:「正しいかどうか」という名詞の意味の時に使われる
- ぜひ:「心を込めて強く願うさま」という副詞の意味の時に使われる
「ぜひ、よろしくお願いします」などのように、副詞として使う時にひらがなにするのです。
ただ、ビジネスなどの改まった場面では、副詞の意味でも「是非ご覧ください」などのように、漢字で用いられることがあります。
迷ったら漢字で表記すると無難でしょう。
「是非」は敬語として使える?
「是非」を敬語として使うことに、大きな問題はありません。
ただ、「心を込めて強く願うさま」という副詞の意味の場合、やや自分の意見を相手に押し付けるようなニュアンスがあります。
一度の使用なら問題ありませんが、何度も連続して使用すると、「押し付けがましくして失礼だ」と感じる人もいます。
目上の人に対して「是非」を使う時には、「何卒」「くれぐれも」など別の表現と一緒に用いると、押し付けがましさを軽減することができます。
また、「正しいかどうか」という名詞の意味の場合は、敬語として使う時に特に注意点はありません。
「是非」の使い方
「是非」の使い方を以下のような表現別に見ていきましょう。
- 是非に及ばず
- 是非も知らず
- 是非とも
- 是非是非
- 是非を問う
- 是非お願いします
「是非に及ばず」の使い方
「是非に及ばず」とは、「当否や善悪をあれこれ論じるまでもなく」という意味です。
「どうしようもない」「仕方がない」といったニュアンスです。
織田信長が戦で口にした言葉として有名です。
他の「是非」を用いた表現である「是非もない」や「是非にかなわず」も同じ意味を持っています。
「是非も知らず」の使い方
「是非も知らず」とは、「我を忘れて夢中になって」という意味です。
「是非とも」の使い方
「是非とも」は誰かに強くお願いする時の表現です。
副詞の「是非」はひらがなで表記するのがふつうですが、「是非とも」の場合は漢字で表記されることのほうが多いです。
「是非是非」の使い方
「是非是非」は「必ず・どうしても」という意味です。
「是非」を2つ並べることで、「是非」を1つだけ用いた時よりも強く強調する表現になっています。
「是非を問う」の使い方
「是非を問う」はある物事について、良いことか悪いことか、賛成か反対かについて問いかける表現です。
「是非お願いします」の使い方
「是非お願いします」は強くお願いする時の表現です。
この時の「是非」は副詞なので、「ぜひお願いします」とひらがなで表記されることも多いです。
「是非」の類義語
「是非」の類義語を意味別にまとめると、以下のようになります。
- 可否(かひ): 良いか良くないか。事の良し悪し(よしあし)
- 適否:適することと適さないこと
- 当否:道理に合うことと合わないこと
- 白黒:正しいか間違っているか
- 良し悪し:良いことか悪いことか
- 正誤:正しいことか誤っていることか
- 何卒(なにとぞ):相手に強く願う気持ちを表す
- 何が何でも:状況や理由に関わらず
- どうぞ:相手に丁寧に勧める気持ちを表す
- 理が非でも:無理にでも
- くれぐれも:何度も心を込めて忠告・お願いをするさま
- 雨が降ろうが槍が降ろうが:どんなことがあっても
「是非」と「可否」の違い
「是非」と「可否」には以下のような違いがあります。
- 是非:「良いことか悪いことか」が強調された表現
- 可否:「できるかできないか」が強調された表現
たとえば、「中絶の是非を問う」という表現の場合、「中絶が倫理的に許されるかどうか」という意味になります。
一方、「中絶の可否を問う」という表現の場合は、「今の状況で中絶ができるかどうか」という意味になります。
「是非」の対義語
「是非」には以下のような対義語があります。
- なるべく:できる限り
- なるたけ:できる限り
- できたら:もし可能なら
これらはどちらも「心を込めて強く願うさま」の意味の対義語です。
「是非」の英語訳
是非を英語に訳すと、意味別に次のような表現になります。
- right and wrong
(善悪) - propriety
(適否)
- at any cost
(何が何でも) - by all means
(ぜひとも) - please do
(ぜひ~してください) - certainly
(絶対に) - absolutely
(絶対に)
英語で「是非」の「正しいかどうか」という意味を表したい場合、right and wrong か propriety を用いましょう。
例えば、「~の是非を論じる」は英語で、 “discuss the rights and wrongs of ~” で表現できます。
「ぜひ」のように、願いの強さを強調したい場合は、at any cost などといえます。
文章の最後に付けることで、「どんなに費用をかけても」という強い意味を表せます。
たとえば、「あなたにはぜひその町を訪れてほしい」は、“I want you to visit the town at any cost.” と英訳できます。
まとめ
以上、この記事では「是非」について解説しました。
読み方 | 是非(ぜひ) |
---|---|
意味 | 正しいかどうか。また、願いの強さを示す語。 |
類義語 | 可否、適否、当否、など |
対義語 | なるべく、なるたけ、できたら、など |
英語訳 | right and wrong(善悪)、at any cost(何が何でも) など |
「是非」には、2つの意味があるので少し紛らしい言葉かもしれません。
「是非」という言葉を使う場面が来た時のために、意味と使い方をぜひ理解しておきましょう。