今回ご紹介する言葉は、熟語の「慇懃(いんぎん)」です。
言葉の意味・使い方・語源・類義語・対義語・英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「慇懃」をざっくり言うと……
読み方 | 慇懃(いんぎん) |
---|---|
意味 | 非常に礼儀正しいこと。非常に親しく交わること。特に、男女が親しく付き合うこと |
語源 | 親身さ、丁寧さを表す漢字を組み合わせた表現 |
類義語 | 懇ろ、折り目正しい、親交など |
対義語 | 無礼、粗略、失敬など |
英語訳 | courtesy(丁寧であること) |
「慇懃」の意味をスッキリ理解!
「慇懃」の意味を詳しく
「慇懃」には以下の三つの意味があります。
- 真心がこもっていて、礼儀正しいこと
- 非常に親しく交わること
- 男女の親しい付き合い
➁、➂の意味はあまり用法も多くなく、主に使用されるのは➀の意味です。
まず、➀の意味について解説していきます。「真心がこもっている」とは、正直に熱心に、さらに丁寧に物事にあたる姿勢を指しています。
つまり、➀の意味は、ただ単純に礼儀正しいだけでなく、「非常に丁寧かつ礼儀正しい」という、かなり強調されたものになります。
次に、➁の意味に関して、「慇懃」は「親交」という言葉に置き換えて考えることもできます。ただ、「慇懃」の方が、親しさの度合いがより強調されています。
そして、➂の意味についてですが、これは➁の意味を男女の間柄に限定しているものになります。実際の交際の有無に関しては特に決まりはありません。ただ、場面によっては、男女が肉体関係を持っている場合などにも使われることがあります。
ちなみに、「慇懃」を使った四字熟語に「慇懃無礼(いんぎんぶれい)」というものがあります。この四字熟語は、「言葉や態度が丁寧過ぎて、かえって無礼であるさま」を意味します。
「慇懃無礼」がマイナスなニュアンスを持つ表現ということもあり、「慇懃」に対してもマイナスなイメージが持たれることがあります。しかし、「慇懃」という言葉自体はポジティブな表現として使われるため、注意が必要です。
「慇懃」の使い方
- 彼は年上年下関係なく、誰に対しても慇懃な態度で接する人間だ。
- お客様を慇懃にもてなす。
- 近所の人と慇懃を重ねる。
- 大学時代の友人と慇懃を重ね、ついに結婚することに決めた。
➀と➁の例文では、「真心がこもっていて、礼儀正しい」という意味で「慇懃」が使われています。
➂の例文での「慇懃」は、「非常に親しく交わる」という意味です。この意味では、「慇懃を重ねる」というフレーズがよく使われます。
➃の例文では、「男女間における親しい付き合い」という限定的な意味で「慇懃」が用いられています。
「慇懃」の語源
「慇懃」の語源は、言葉そのものにあります。
「慇」と「懃」はどちらも訓読みすると「ねんごろ」となります。「ねんごろ」は、「懇ろ」とも書き、親身であることや、親しいことを意味します。
したがって、「慇懃」は、同じ意味の漢字を組み合わせ、親身さや親しさを強調した熟語ということになります。
「慇懃」の類義語
「慇懃」には以下のような類義語があります。
- 懇ろ:心がこもっている様子
- 折り目正しい:礼儀作法をよくわきまえていること
- 親交:親しく付き合うこと
- 深交:深く付き合うこと
「慇懃」の対義語
「慇懃」には以下のような対義語があります。
- 無礼:礼儀作法がなっておらず、失礼なこと
- 粗略(そりゃく):礼儀をわきまえず、ぞんざいなこと
- 失敬(しっけい):敬意を欠いていること
- 不躾(ぶしつけ):無作法なさま
「慇懃」の英語訳
「慇懃」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- courtesy
(丁寧であること) - intimacy
(親しい付き合い)
まとめ
以上、この記事では「慇懃」について解説しました。
読み方 | 慇懃(いんぎん) |
---|---|
意味 | 非常に礼儀正しいこと。非常に親しく交わること。特に、男女が親しく付き合うこと |
語源 | 親身さ、丁寧さを表す漢字を組み合わせた表現 |
類義語 | 懇ろ、折り目正しい、親交など |
対義語 | 無礼、粗略、失敬など |
英語訳 | courtesy(丁寧であること) |
「慇懃」の意味や使い方などを理解することはできたでしょうか。
本文でも触れた通り、「慇懃無礼」という四字熟語に惑わされて、「慇懃」は誤用が多い言葉でもあります。
「慇」と「懃」はともに「ねんごろ」と読む漢字であることを押さえておくと、理解を確実なものにできるでしょう。