今回ご紹介する言葉は、故事成語の「三顧の礼(さんこのれい)」です。
言葉の意味・由来・例文・類義語・「カノッサの屈辱」は類義語?・対義語・英語訳について、わかりやすく解説します。
☆「三顧の礼」をざっくり言うと……
読み方 | 三顧の礼(さんこのれい) |
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意味 | 目上の人が目下の人に対し、礼を尽くしてお願いをすること |
由来 | 劉備が諸葛亮の元を三度訪れて、自軍に勧誘したこと |
類義語 | 三徴七辟、草廬三顧、三顧の知遇など |
対義語 | 左遷、冷遇など |
英訳 | To repeat requests with all eagernessなど |
このページの目次
「三顧の礼」の意味
「三顧の礼」の意味を詳しく
「三顧の礼」とは、立場のある人が目下の立場の人相手に、とても丁寧に礼を尽くして頼みごとをすることです。
何かを頼むときや、その相手を勧誘して迎え入れるときに使われます。
もともとは相手のもとに何度も訪問してお願いすることを指しましたが、現在では訪問しなくても、目下の人を好条件で優遇することを指します。
「三顧」とは、三度訪れるという意味です。「三個」と書かないように注意しましょう。
「三顧の礼」の由来
「三顧の礼」の由来は「出師表(すいしのひょう)」という文章に書かれた中国の三国時代の以下のような逸話です。
三国時代の中国は、魏(ぎ)・呉(ご)・蜀(しょく)という三国に分かれて、勢力を争っていました。
劉備(りゅうび)は、そのうちのひとつである、蜀の将軍でした。
蜀には当時、作戦を立てる専門家がおらず、他の国と比べると、いまひとつ力を出し切れずにいました。
そんな時、劉備は当時あまり有名ではなかった諸葛亮(しょかつりょう)の存在をうわさに聞き、自分の軍の作戦担当として迎え入れたいと考えました。
当時劉備は 40 代で、諸葛亮は 20 代でした。年齢も立場も、劉備の方がはるかに上でした。
普通は諸葛亮を劉備のところまで呼んで作戦担当になるよう要請するところですが、劉備は諸葛亮を高く評価して自ら出向くことにしました。
一回目と二回目に訪ねた時、諸葛亮は外出しており、会うことができませんでした。
しかし劉備はあきらめず、三度目に訪れた時に、やっと会うことができました。諸葛亮に、自分の味方として働くよう頼みました。
諸葛亮は、何度も訪ねてきてくれた劉備の丁寧な態度に感激し、劉備の軍に参加しました。
諸葛亮は無名でしたが、非常に頭がよく、彼のおかげもあって、蜀は力をつけていきました。
このエピソードから、「立場が上の人が、下の人に対して礼を尽くして頼みごとをすること」を「三顧の礼」と言うようになりました。
「三顧の礼」の例文
「三顧の礼」は、文章中では次のように使われます。
- 三顧の礼を尽くしてお願いをする。
- 三顧の礼のようなことをされたら、引き受けないわけにはいかない。
- 彼は、社長が三顧の礼を尽くして迎えたほどの優秀な人材だ。
上記の例文のように、「三顧の礼」は「三顧の礼を尽くす」「三顧の礼を尽くして迎える」という言い回しで用いられることが多いです。
「三顧の礼」は本来は、「目上の人が目下の人に頼む」際に使われる言葉です。
しかし、立場の部分はあまり気にせず、「丁寧にお願いする」という意味で使われることが多くあるようです。
「三顧の礼」の類義語
「三顧の礼」には以下のような類義語があります。
- 三徴七辟(さんちょうしちへき):礼儀を尽くして優秀な人材を招くこと
- 草廬三顧(そうろさんこ):目上の人が礼儀を尽くして優秀な人を招くこと
- 三顧(さんこ)の知遇(ちぐう):目上の人が礼儀を尽くして優秀な人を招くこと
- 三顧(さんこ):目上の人が優秀な人を礼儀を尽くして招くこと
- 招聘(しょうへい):人を丁重に招くこと
- 厚遇(こうぐう):手厚くもてなすこと
「三顧の礼」と「カノッサの屈辱」は類義語?
「カノッサの屈辱」は「三顧の礼」と似た部分があるため、類義語だと勘違いされやすいですが、実際は全然違う意味の言葉です。
「カノッサの屈辱」は「許しを得るために目上の人の権威に屈服して礼を尽くす」という内容の故事で、以下のようなエピソードが由来になっています。
11世紀、神聖ローマ帝国の皇帝ハインリヒ4世は「聖職叙任権」をめぐってローマ教皇のグレゴリウス1世と対立していました。
聖職叙任権とは、キリスト教の協会における司祭などを任命できる権限のことです。
これまで領内の聖職叙任権は神聖ローマ帝国の皇帝が持っていましたが、ローマ教皇グレゴリウス1世は「聖職叙任権はローマ教会にある」と宣言します。
皇帝ハインリヒ4世はこれに激怒し、教皇の廃位を宣言します。しかし、教皇グレゴリウス1世は反撃としてハインリヒ4世の破門を言い渡します。
これに国内の諸侯たちが同調し、「破門を解かれなければハインリヒ4世を皇帝とは認めない」と迫ります。
ハインリヒ4世は教皇グレゴリウス1世から赦しを得るために、雪の中、3日間に渡って立ちつくし、破門を解いてもらったのでした。
「カノッサの屈辱」は確かに「礼を尽くす」という点は「三顧の礼」と似ているのですが、それ以外は全然違うことがわかります。
「三顧の礼」の対義語
「三顧の礼」には以下のような対義語があります。
- 左遷(させん):高い地位から低い地位に落とすこと
- 冷遇(れいぐう):不当に低い待遇のこと
「三顧の礼」の英訳
「三顧の礼」は、英語では以下のように表されます。
- To repeat requests with all eagerness.
(熱心にお願いを繰り返す) - show(ing) special courtesy
(特別な礼儀を示す) - with all eagerness
(熱心に)
まとめ
以上、この記事では「三顧の礼」の意味や由来について解説しました。
読み方 | 三顧の礼(さんこのれい) |
---|---|
意味 | 目上の人が目下の人に対し、礼を尽くしてお願いをすること |
由来 | 劉備が諸葛亮の元を三度訪れて、自軍に勧誘したこと |
類義語 | 三徴七辟、草廬三顧、三顧の知遇など |
対義語 | 左遷、冷遇など |
英訳 | To repeat requests with all eagernessなど |
漫画や本で三国志を読み、その中でこの「三顧の礼」のエピソードを目にしたことがある人も多いと思います。
そのため、比較的日常の中でも使いやすい故事成語です。
ぜひ使ってみてください。